〈ユビーAI問診の導入背景〉
「紙問診の廃止」「中央化に伴う問診の統一化」の2つの課題があった
ユビーAI問診の導入に至る背景としては2つありまして、1つは看護部から紙問診を廃止しようという意見が出ていたことが挙げられます。患者さんの元に行って長時間お話をしながら聴き取りをおこなうという従来の問診の方法が、コロナ禍においては適さないのではないかということで、そのような意見が出ていました。
もう1つは、外来の中央化に伴い、問診の統一化を図ろうとしていたことが挙げられます。当院ではユビーAI問診を導入する約1年前から、患者さんの待ち時間を減らしたいなどの理由から、外来の中央化を取り入れていました。各科の窓口をなくし、診療の受付を1ヶ所に集約しました。
それ以前は各診療科に合わせた別々の問診表を使っていましたが、中央化でどの診療科の患者さんも1ヶ所で受付することになったため、併せて問診表も院内で統一のものにしたほうがいい、と意見が出ていました。そして、せっかく変えるのであれば紙の問診ではなく、昨今さまざまな病院で導入されているWebシステムの問診に変えようということで、ユビーAI問診導入の検討が始まりました。
上記の検討を経て、2021年4月頃から共通のブロック受付の内科や外科を中心に利用が開始となりました。諸々の運用課題もありましたが徐々に定着してきたこともあり、2021年11月頃から他診療科での導入検討がはじまり、同様のタイミングにて小児科でも利用することになりました。
〈ユビーAI問診の導入目的〉
問診の業務フローを改善し、看護師の業務負担軽減と業務効率化を目指す
小児科での導入を決定した最大の目的は、看護師の業務負担の軽減でした。導入以前は、一旦発熱外来受付で患者さんに受付をしてもらった後車内で待機していただき、看護師が一人ひとりの患者さんにお電話をして聴き取りをおこなっていました。患者さんから伺った内容を紙に書き取り、医師が確認するパソコン上の問診テンプレートに転記するまでが看護師の業務です。その後、医師にパソコン上の問診を確認してもらい、順番に患者さんをお呼びするというのが、問診から診察までの基本的な流れでした。
問題だったのは、看護師が電話で問診をとっている間、他の業務が何もできないということです。小児科では現在、看護師1~2名で対応していまして、看護師が1人しかいない場合は問診を優先すると、診察や処置の介助に回れなくなっていました。そのため、診察の合間になんとか問診を進めていくような状態でした。処置が立て込んでくると当然、問診が間に合わず、診察に至るまで医師や患者さんをお待たせしてしまうことも多々ありました。
電話問診にかかっていた時間は、1件あたり平均5、6分程度。1日あたり30-40人程度(多い日は最大80人)ほどご来院がありますので、これを看護師1名で対応しなければならないとなると、そもそも問診だけでも相当な時間がかかるのです。コロナ禍以前は1日当たり100名ほどのご来院に対して看護師5名で対応していたので、1人1人の患者さんの元にお話を聞きに行くにしても、1件1件お電話で問診をおこなうにしても、問題なく対応できていました。しかし、来院数が減っている中で看護師の採用を増やすというのも難しいようで、現状でいかに業務を効率化していくかが大きな課題となっていました。
〈ユビーAI問診の導入効果〉
看護師の人数は少ないままでも、多くの患者さんに対応できるように
当院には小児科の他に内科にも発熱外来がありまして、そちらではまだ1件1件お電話で問診をおこなっています。ですので、対応する看護師数も小児科よりもはるかに多いのですが、それでも問診が間に合わず、1日当たりに受け入れる患者さんの数を制限している状況です。
一方で、ユビーAI問診を導入している小児科の発熱外来では、保護者が待機時間の間または、自宅でスマホ問診を進めてくれるので、私たち看護師は問診に時間や手間を取られることがほとんどありません。スタッフ数は最大でも2名と限られていますが、来院数が多い日でも患者さんの受け入れを制限することなく、対応ができています。
医師とコミュニケーションをとりながら、丁寧に診察ができるようになった
看護師が問診に手を取られなくなったので、医師としっかりとコミュニケーションをとりながら、看護師が診察や処置の介助に専念できるようになったことも、導入の効果として非常に大きいと思います。
看護師が問診のためにずっと電話をしている状態では、何か指示を出したくても、医師は問診の電話が終わるのを待っていなければなりません。その時間はわずか1~2分のことかもしれませんが、それが積み上がっていくと、結局患者さんをお待たせしてしまうことにもなります。必要なときに看護師に依頼ができない、最悪の場合は診察が止まってしまうという状況だったので、医師にとっても大きなストレスだっただろうと思います。しかし、ユビーAI問診の導入後は、看護師は診療介助を主な業務とすることができており、医師と一緒に患者さんのお車まで診察に回れるようなゆとりが生まれています。
〈導入によるメリットと今後の課題〉
自由記載欄に保護者の方による詳細な記述もあり、より聞くべきことが聞けるようになった
ユビーAI問診の導入による最大のメリットは、何といっても看護師の業務負担が減ったことです。また機能面で言うと、自由記載の項目は診察の際にすごく役立っていますね。この項目に保護者が症状の内容や経過、診察時に一番診てほしいことなどをかなり詳しく書いてくれるので、ここを見れば、来院理由が一目でわかると医師も言っていました。
2021年10月からQRコードを読み取ってもらうかたちでスマホ問診の利用を開始しました。最初は来院された際に紙を渡して対応していました。
一度紙を渡して次回からはご自宅などから来院前に事前に問診をうけていただく、来院前のスマホ問診に切り替えていきました。
小児科は患者さんの年齢層が比較的若いこともあって、スムーズに導入が進みました。夜間に入力してくれている方も多く、朝の立ち上げ時に確認すると、10件くらいの問診が入っていることもあります。事前に来院前スマホ問診をしていただける場合は、ご入力いただいた患者さんの情報を元に診察前に来院時間のご案内等のお電話をさせていただいているので、問診の入力があったにもかかわらずご来院されないといったことも、かなり少なくなりました。
小児に適した質問・回答ではない場合もあり、発熱症状ありの患者さん以外への活用には課題も
ただ、小児科に限って言えばですが、発熱症状のある患者さん以外でユビーAI問診を活用するのは、現時点では課題もあるのではと感じています。例えば、小児科では女児によくみられる症状として「股がかゆい」というものがありますが、回答を進めていくと、きちんとお子さんの年齢を入力してもらっているはずなのに、婦人科の症状のような深掘りをされてしまうことがあります。実際に入力してくださっていたお母さんから、「よくわからなくなって、回答を途中でやめました」といったお声もありました。また、最近では頭痛を主訴にご来院される方も多くなっています。頭痛の場合、AI問診ユビーでは脳神経外科系の難しい病気と結び付けられることが多く、やはり小児科には適していないと感じます。
実は、導入以前に医師と看護師2名ずつでテストをおこなったときも、場合によってどんどん難しい病名のほうへ誘導されていくことがあり、小児科では活用しにくいかもしれないという懸念がありました。主訴がハッキリしていることが多いからか、発熱症状ありの患者様には問題なく使えていますが、現状のままでは今後小児科全体に活用を広げるには課題が残されていると思います。今後、質問の精度が上がっていくことを期待したいです。