<ユビーAI問診の導入背景>
ユビーAI問診を導入した背景としては、主に外来で勤務する看護師の負担軽減のためでした。済生会グループ内の他院にてユビーAI問診を導入していたということから関心をもち、実際に話を聞いた結果、看護師の負担軽減のために導入を検討しました。
特に看護師の負担が多かった業務は、問診の取得でした。問診の取得にかかる時間は看護師の負担になると共に患者さんの診察までの待ち時間にも繋がっていました。これらの時間を短縮することで、患者さんが来院してから帰宅されるまでの時間をも短縮することが可能になり、患者さんの満足度も向上することができるのではないかと考えておりました。
導入の検討を行なっている際に、新型コロナウイルスの感染拡大が発生しました。以前まで当院の外来においては、看護師が個室内で患者さんに問診を取るという運用を行なっていたのですが、個室で問診をとる行為はやはり感染の可能性があります。
ユビーAI問診を導入することによって、個室での問診が不要になり、感染拡大の危険性を低下することもできるのではと考え導入を決定しました。
<ユビーAI問診の導入目的>
ユビーAI問診を利用した問診は内科から導入を行いました。内科では問診が非常に重要であるため、看護師は患者さんに細かく問診をとることを医師から徹底されておりました。また、内科はいくつもの科へ紹介することがあるため、問診では適切な科へご案内するためにも、幅広く症状等を確認する必要があるとともに、問診を行うことができる看護師も経験を積んだ人材に限られるということもあり、結果的に問診にかかる平均的な時間は20分と長くなってしまっておりました。内科における問診をユビーAI問診に置き換えることによって、こちらの業務を効率化できることを期待しておりました。
<ユビーAI問診の導入効果>
高齢の患者さんが多いという理由から、導入前は院内にて『利用が浸透しないのではないか?』という声があり、期待値はそこまで高くありませんでした。まずはテスト運用のため1ヶ月ほどの利用を行い患者さんからの反応を伺ったところ、高齢の患者さんを含めて『使いやすかった』という声が多く、問診時間の短縮が図れ、職員の満足度も高かったので本格的な導入を決定しました。
ユビーAI問診の導入は内科における初診の患者さんに限定して行いました。
導入前は、診療科に案内した後の問診取得を一人づつ看護師が行なっているという形だったのですが、この業務を初診の患者さんに関しては完全に置き換えることができました。また、発熱外来において行なっていた、対面での問診取得もユビーAI問診を導入したことによって感染対策につながりました。
看護師の満足度は高い一方で、医師からの評判はまだまだ高いとは言えません。導入前から医師の印象としては問診の内容が物足りないというネガティブなものでした。『タバコは一日何本吸いますか?』などの細かい質問を一から聞くよりは業務が効率化できる一方で、『AI』という単語に対する期待値から問診内容の精緻さやわかりやすさなどへの不満がありました。導入直後は医師からのネガティブな意見もありましたが、導入後時間が経つにつれて利用にも慣れて現在は受け入れて上手に利用できているかと感じます。
<導入によるメリットと課題>
ユビーAI問診に置き換わったことにより、看護師の業務負担を削減することができております。以前は20分必要としていた看護師の業務時間を削減することができました。
さらに新型コロナウィルスの感染拡大によって、看護師には普段行なっていた業務に加え感染症に対応するための業務が発生していますが、削減された時間を利用してこのような業務を行うことができております。また、外来における看護師の人数を削減し別の業務や病棟にリソースを配置することができており、結果として少ない人数で多くの業務を回せるようになりました。
高齢の方ですと、お話しが重複してしまい問診の時間が長くなってしまうこともありますが、AI問診ですとそのような方でも端的に症例を問診票に記入いただくことができます。また、個人のリテラシーにもよるとは思いますが、どの年齢層の患者さんにも問題なく利用いただけており、正確な時間はまだ計測できていないのですが、患者さんの診察までの待ち時間をも減らすことができるようになったかと考えております。お薬手帳のスキャナ機能もよく利用させていただいております。当院の運用と、御社の精度が高まればさらに重宝されるのではないかと思っております。
一方で、現在では全ての紙での業務を置き換えることができているわけではなく、ユビーAI問診と紙の問診を併用しており、業務が効率化できていない部分があります。今後は、その辺りを改善していかなければいけないと思っております。
また紙の問診と比べると、回答しないと次に進めないという意味で記載の漏れが少なくなったという意見もありますが、一方で内容的には少し希薄になってしまっているという声もあり、医師の所感として以前の運用の問診内容と比べると、ユビーAI問診が満たせているのは5割ほどかとも思っております。
<今後、ユビーAI問診に期待すること>
今後は希望する診療科を募って院内でのユビーAI問診の運用を展開していきたいと思っております。内科と救急から導入を始めたのですが、現在は脳神経外科、婦人科も利用を希望しておりますので導入を進めております。新たな科での運用も軌道に乗れば、さらに多くの科に広げていきたいと思っております。
今後のユビーAI問診に関して期待することとしては、カスタマイズ性と機能改善です。医師としては電子カルテへの反映時に、より修正が少ない形で反映ができるようになっていただきたいと思っております。
現在はユビーAI問診の情報を電子カルテに貼り付け、文章として整合性が取れるように修正し、必要であれば追記を行なっていく形で運用しております。しかし、ユビーAI問診からカルテに反映される情報は、少々散文的に文字が羅列されているように感じます。
簡潔で読みやすいということもありますが、紙でおこなっていた問診ですと前後関係など物語形式で書かれていることが多く、それらに慣れ親しんでいる身としては少し見辛さを感じてしまいます。主訴が一つの場合は、簡潔でシンプルなのですが、複数の症状がある場合はなおさら見辛いなと感じております。これらの文章化の技術がさらに向上していただければと思っております。また、音声入力などの機能があれば便利かと思います。
個人的には、リファレンスの病名はほとんど参照せずに利用しております。ただ開業医の医師や内科以外の医師ですと、症状に関する病名に馴染みがない場合もあるため専門外の症状を見る必要がある際には役立つかと思います。地域の開業医の方々にユビーAI問診が普及すれば、現在は手書きで行なっている紹介状でのやり取りを、ユビーAI問診内で互いに連携をとることが可能になり、互いの負担が軽減するかと思います。地域医療連携という意味においても、今後ユビーAI問診がより多くの病院へ普及していくことを期待しております。