<ユビーAI問診導入の背景と課題>
平均15分ほど要していた問診時間を軽減したい
問診の時間を軽減したいというのがユビーAI問診を導入した大きな理由です。もともと問診のフローは、受付窓口で簡単な主訴を記入いただき、それをもとに看護師が問診するというスタイルで、一人当たり平均15分ほどの時間を要していました。新規の外来が7~8人も重なってしまうと、看護師の人員不足も相まって、診察までかなりお待ちいただくことになります。そうなると、患者さんの満足度低下は免れません。
問診のスキルアップは経験が必要
問診スキルに看護師個々の差があることも課題でした。主訴と照らし合わせながら、患者さんに寄り添い観察して問診を行うわけですが、やはり経験の差が生じてしまいます。例えば、腹痛の患者さんが来院されたとして、ある程度の確定診断に至る質問の流れを形成できるようになるまでには、かなりの経験を要します。もし、看護師の問診が不十分だった場合、診察時にドクターが同じような質問を繰り返してしまうこともあるため、患者さんは不信感を募らせてしまうかもしれません。
もちろん、当院では腹痛、頭痛、発熱、食欲不振、便秘、骨折など、さまざまな症状を幅広く理解し適切な問診ができるように集合研修や勉強会、自己学習などの機会を設けて看護師のスキルアップに努めています。しかし、現場での問診経験に勝る学習はありません。結局は経験を重ねることが最善のスキルアップなのですが、看護師が不足し慌ただしいなか、スキルアップを優先させることは難しいのが現状です。
<ユビーAI問診の導入ポイント>
患者さんが入力できるか不安があったものの、問診業務の軽減に期待
看護師の問診時間を軽減する手立てはないかと思案していたところ、ある学会でUbieの講演を拝聴する機会がありました。AIによる事前問診で効率化が図れるユビーAI問診の存在を知り、これなら上手くいくかもしれないと思いました。早速Ubieにアポイントを取り当院でプレゼンを行っていただきました。
ただ、当院の患者さんの9割が60歳以上ということもあって、看護師は患者さん自身で入力できるか不安があったようです。入力のサポートする必要があるとなると、もともとの目的から本末転倒になってしまいます。とはいえ、看護師の業務が少しでも軽減されるのであればという期待感はありました。
患者さんの入力には不安があったものの、当院スタッフの反応は総じて良い感触だったこと、Ubieのサポートがあることなどを鑑みて、2020年5月にユビーAI問診を導入しました。
<ユビーAI問診の活用方法>
待合フロアでのタブレット入力とWebサイトの来院前問診で活用
受付窓口で主訴だけをお聞きし、あとはユビーAI問診の画面が表示されたタブレットをお渡しして入力いただくというフローで行っています。当初は高齢者が迷うことなく入力できるか不安があり、看護師の目の前で入力いただいていましたが、9割の方は問題なく入力できることが分かって、今では待合フロアが入力場所です。結局、看護師の仕事が増えることはなく、非常に助かっています。
来院される前にお電話でお問い合わせいただいた方には、病院のホームページに掲載している来院前問診をおすすめしています。患者さんにとっても我々にとっても大きな時間短縮になりますし、新型コロナウイルスの問題もありますから、発熱されている場合にはトリアージに基づいた事前対応も可能になります。
<ユビーAI問診の導入効果>
問診業務はトータル1/30の時間に軽減
15分ほどかかっていた看護師が対応する問診が1分ぐらいで済んでいますから、時間は1/10以下に短縮されていると思います。もちろん、看護師はそれぞれの患者さんをしっかり観察していますが、特に異常がなければ看護師が追加の問診をすることはありません。5台のタブレットをフル稼働させるだけで問診は終わります。
また、電子カルテに1クリックでコピーができますから、看護師が夕方から夜にかけて電子カルテに問診内容を入力していた時間もなくなりました。時間短縮という意味でいうと1/10どころか1/20、1/30になっていると考えられます。
時間を有効利用できる
問診に関わる時間が大きく短縮されたことで、看護師が病院のなかで過ごす時間が少なくなりました。余計な付帯業務の残業がなくなったので、フィジカル的にもメンタル的にも疲労は軽減されていると思います。
新型コロナウイルス感染リスクを軽減
感染予防の観点から見ると、患者さんも看護師も院内にいる時間が短くなるのは非常に良いことです。来院された患者さんに簡単な説明をしてタブレットを渡すだけですから、接触も少なく保つことができます。患者さんと看護師が間近で対面しない点で、新型コロナウイルスの感染リスクは大きく軽減されているはずです。
もちろん、タブレットはその都度、消毒を行って感染リスクを軽減しています。コロナ禍という状況を踏まえると、本当に良いタイミングでAI問診ユビーを導入したと実感しています。
デリケートな質問もユビーAI問診には回答できる
対面の問診では排泄や生理など、デリケートな質問しなければならないときがあります。看護師は周囲に伝わらないように小声で話すなどの気を使っていましたが、患者は恥ずかしく思っていたかもしれません。そうしたデリケートな質問でもユビーAI問診なら、患者さんは臆することなく入力することができます。患者さんのプライバシーを守れるという点でも、AI問診ユビーは優れているツールだと思います。
<ユビーAI問診への評価>
外来業務の改善には確実に役に立つという意味で100%おすすめ
満足度は10点満点を付けてもいいと思っています。もちろん、問診や病名辞書など、もう少しブラッシュアップが必要だと感じる部分はありますが、AIで問診を行い、なおかつ電子カルテに連携できるシステムは、ユビーAI問診の右に出るものはないと思っています。他の病院にもすすめられるという点では、外来業務の改善には確実に役に立ちますから100%おすすめできます。
ただし、看護師の立場からすると手放しで喜べない面もあるようです。便利なのは間違いないのですが、対面の問診を行うことで培われる観察力が低下するのではという懸念があります。問診による経験がベースとなる観察力は、さまざまな症状を訴える患者さんに対する適切な処置へとつながりますから、時間短縮や業務の効率化とトレードオフになってしまうのは痛手です。今後、そうした状況が顕著化するようであれば、Ubieと相談しながら解決策を模索していきたいと思ってます。
<病院としての今後の取り組み>
DXを推進しつつ、救急には経験を、介護には真心を大事にしていきたい
今後、医療界はDXが進み、ITやAIが担う領域が増えてくると思います。当院もDXは必須だと思っていますから、効率化できるところには導入していきたいと考えています。今回のユビーAI問診も、その一環といえるでしょう。その一方で、人間の判断が必要な場面も数残っています。特に一時一秒を争う救急は、AIの診断を仰ぐ時間はありません。知識に加えて経験とノウハウが求められる救急の現場では、ドクターの力が何より大事ですから、ITやAIはドクターの力を最大限に発揮させるためのバックアップという位置付けが適しているのではないでしょうか。
AIが手を出せない領域としては、人の感情をくみ取って心と心で接する介護が挙げられます。もちろん、話し相手になる人型ロボットや心を和ませてくれる犬型ロボットなどである程度のケアはできたとしても、真心や人の手の温もりは機械では再現できません。当院としては、そうした介護の部分を大事にする病院でありたいと考えています。
何もかもがIT、AIではなく、まずは医療の道を見失ってしまうことがないように「地域のため、地域とともに」の理念を忘れないことが大事だと考えます。それを踏まえ、当院はこれからも「医療と介護・福祉の総合的なサービス」を提供していきます。
田主丸中央病院
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