ユビーAI問診導入前の課題感は?
看護師が少ない中でスムーズに問診を回す必要があった
元々AI問診Ubieの話は僕自身が聞いたのがきっかけです。それを看護部で紹介して、看護部の方から「是非AI問診を使いたい。」という声があがり、導入に向けて検討がスタートしました。
導入前の状況だと、来院された患者さんに問診票を渡す→問診室に案内→問診を実施→診察に案内という流れで回していたのですが、そもそも問診室でヒアリングするのに非常に時間がかかっていました。
紙の問診票では患者さんが書いた内容にずいぶん差があります。詳しく書く方もいれば、1文字も書かない人もいます。こうした中でバイタルを取り、薬を確認し、経過をゼロから聞き直していると、診察開始が遅くなってしまいます。
導入前の状況だと、問診室に複数の看護師を配置する必要があったのですが、AI問診Ubieを導入することでこの部分を改善することが出来るのではないかと期待していました。
規定人数に満たない中で、看護師の業務効率を改善する必要があった
そもそも、当院の看護師数は規定配置数を満たせていません。そこに育休や産休などが発生すると少しどころか全然足りなくなる状況がずっと続いています。
ユビーAI問診を導入すればすべてが解決されるわけではなく、少しでも看護師を増やしたいとも考えています。
しかしながら募集を掛けても中々集められないのが現状であり、今いる人数で少しでも業務負担を削減したいというのが導入前の重要な要素でした。
ユビーAI問診導入後の効果は?
看護師の業務負荷が大きく軽減
AI問診を導入して、一番時間的な負荷が掛かっていたつきっきりの問診聴取の大部分をタブレットにお任せすることが出来るようになりました。
看護師の業務は、AIが患者さんに応じて取得した情報を確認し、必要であれば多少の追加問診を行う程度まで削減できています。
元々問診室に看護師2-3名は常時いて貰う必要があったが、導入後は1名でもなんとか回るように
問診室には2-3名の看護師配置が必要でした。しかし、電話対応や急患対応などで問診聴取作業が中断されたり、複数の患者がいても対応できる看護師が一人しかいなくなったりして、問診に長時間かかる場合がしばしばありました。
補助員さんがよく手伝ってくれていたものの、結局看護師の判断を要する場面も多く、看護師の手を空けることがなかなか実現できていませんでした。
ユビーAI問診を導入してからは問診の多くをタブレットに任せられ、看護師は内容の確認やバイタルの測定を行えば次の患者さんを呼ぶことが出来るので、今まで2-3人は必要だった部分が、1人いればギリギリなんとかなる程度に改善されています(笑)
問診業務が50%程度削減
電話対応や外来後の説明、紹介状対応なども含めて、問診室での看護師の業務を100とすると、そのうち問診業務は50程度でした。
まず看護師から問診外の業務を減らそうと考え、上述したような補助員さんに入ってもらったりしたのですが中々思うようにいきませんでした。
たまたま紹介を受けたというのもありますが、ユビーAI問診を入れることで、問診に要する時間そのものを削減できるのではないかと思い、導入に至りました。
看護師に聞くと、問診に関する業務負荷が半分以下になったとの実感があります。
問診内容の聞き漏らしが減り、安心感の向上にも
その他、問診の質の部分でも効果が得られています。
以前の問診ではどうしても症状にフォーカスした質問になりがちでした。紙の問診票にもアレルギー歴や既往歴などに関する項目があるのですが、時間が無い中で網羅的に聴取することは正直難しかったです。
しかしユビーAI問診では聴取すべき項目を聞き漏らすことがほとんどなく、安心感を持って診察に回せます。
病院経営についての考え方
人員を増やせばよいというものではない
単純に医師数を見ると、当院は50名程度なのですが、都会の病床数が近い病院だと80-100名程度いるんです。
下手すると倍近い医師がいるのですが、これだけ数が違うと例えば手術の負担に差が生まれます。当院だとほぼ毎日手術をしているのですが都会の病院だと外科医がチームを作り、1チームあたり週2-3回程度の手術を行っているところが多いと思います。
予定手術だけなら毎日でもこなせますが、夜中の緊急手術が入ったりするとやっぱり体力的にハードなので辛くなってしまう場面もあります。
ただ、単純に医師数を増やせば良いのかというとそうではない。
同じ病名でも患者さんの年齢によってできる治療が変わってきます。患者さんが若ければ積極的な医療、収益性が高い治療ができますが、高齢になるほど治療の選択肢は限られてきます。収益性が高い治療を数多く実施する病院では多くの医師が必要ですし、雇用することもできます。
病院収支には地域の年齢構成が大きく影響します。患者さんの数によって必要な医師数がきまるといった単純な話ではありません。
優先順位をつけて業務の取捨選択をする
現場からは増員の要望がよく出てくるのですが、仮に人を1-2人増やすことが出来たとしても、数ヶ月するとその人数での業務に慣れてしまい、さらに増員要望が起こります。
人的資源が少ない病院では、現状の人数で業務をこなすにはどうすればよいのか、人が減ったときには業務をどのように調整するのか、が増員より優先度が高い対策です。この対策ができていれば、増員がより効果的になり、その効果も持続します。
業務の見直しや調整は現場でなければ実践できませんが、見直しをする方針を打ち出すのはトップの責任です。
例えば、新型コロナで患者数は減少していますが、この減少が今後も続くと予測したときは病棟を削減する判断が必要になります。
業務の見直し、病棟削減などの方針を出すだけでなく、要員配置や業務内容自体の変更、業務分担も考慮しなければなりません。こうした診療体制の変更では、病院や地域全体を見ながら優先順位を付け、業務の取捨選択を決断していくのが病院長の役割と感じています。
佐渡ではたらく意義を魅せる
先述したように、地方での医療従事者確保では困難さが増すばかりです。都市部と比べた欠点ばかりを見ている限り、解決策は作れません。
奨学金やI・Uターン支援を行っている病院や地域は多いですが、どの地域でも実施されているので単純な競争に陥ります。その地域、その病院だから得られるもの、を明示しなければ人材は得られないと考えています。
当院では事務職を含むすべての職種に対して研修プログラムを策定し、人材育成に取り組んでいます。
佐渡は有数の高齢化地域です。行政・医療・介護・福祉を含めて超高齢社会における社会保障体制を構築しようとしています。当院だけでなく、佐渡全体で高齢社会に活躍できる人材を育成する取り組みも始めました。これこそが佐渡ではたらく意義です。
佐渡の未来を見据えて
佐渡は超高齢者社会です。高齢者が多い地域では、生活支援をどのようにやっていくのか、もとの生活にどうやって復帰してもらうのかという点を考えることが重要になってきます。本当は医師・看護師の業務時間の多くをそちらに割いてほしいと考えているのですが、事務的作業に時間をとられることが多く、医療従事者の力を活かせていません。
そのような点を少しずつでも改善していき、人でないとやれない仕事に注力してもらう。そういう環境を作りたいと思っています。
JA新潟県厚生連 佐渡総合病院
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