ユビーAI問診導入の背景は?
業務効率化の観点から、紙の問診票をアップデートしたく、2019年末頃よりwebで使える問診サービス導入の検討をスタートしました。ユビーAI問診のことを以前から知っていましたが、その頃は紙の問診をwebに置き換えるようなサービスは複数あったものの、イベントで話を聞いた程度でありどのサービスが本当に良いのかなど把握できておりませんでした。
元々、今回の紙からユビーAI問診への切替に至った理由は、医師事務作業補助者(以下MA)が行っている診察前問診の効率化です。またPC操作に不慣れな医師の場合、問診内容を電子カルテに入力するのに時間がかかっており、診療時間の制限がありました。この状態では患者さんの話に十分耳を傾けることが出来ず、看護師やMA等の関連職種と、来院した理由や状態・緊急性など、診察までに共有すべき臨床情報の伝達が遅れてしまう課題解決の糸口になるのではないかと思い、前向きに導入の検討をはじめました。
また、紙ベースでは問診内容の電子カルテへの転記作業が必要となりますが、あらかじめカルテ記載にふさわしい文章でテキスト化されていれば、入力作業はさらに効率化できます。
通常、医師が行う病歴聴取では、患者さんの訴える症状から想定される鑑別疾患に応じて、質問を追加、変更していきますが、既に印刷された紙の固定質問では、得たい情報を取得できるとは限らず、再度診察室で追加問診が必要となります。患者さんの訴える症状に応じた質問内容の追加、変更機能は、まさに問診サービスに求められるところでした。
ユビーAI問診の説明を受けたとき、詳しい説明がなくとも患者が一人で操作しやすく問診作業の効率化につながること、問診内容がテキスト化されること、カルテ転記・記載作業の効率化がはかれること、症状に応じた質問内容の追加、変更機能があることなど、我々のニーズに合致するシステムであることがわかりました。
とはいえ、問診結果に紐づく参考情報や、本当に主訴に応じた内容を網羅できているのかという点については評価が難しかったため、最後はAIとしての今後の成長に期待して導入を決めました。
今となっては、導入のメリットを実感しておりますが、正直に申し上げますと100人くらい実際のAI問診をトライしたあとで導入を判断したい気持ちがありました(笑)。
ユビーAI問診導入による効果とは?
当院では、2020年1月31日に内科(病院とクリニック)、整形外科、救急外来においてユビーAI問診を導入し、運用開始しました。使用している問診用タブレットは10台です。
操作性や参考病名の表示に関しては当初不安がありましたが、実際使ってみると大きな問題なく機能しています。
元々当院(病院とクリニック)には、診療支援部所属のMAが計50人ほど在籍しており、診察前の初診患者の問診(紙、ユビーAI問診)は主としてMAが担当しています。外来におけるMA業務は、患者の案内、各部署との連絡、予約の取得・調整、代行入力、処方箋の処理、診療記録のスキャン保存など、機械に置き換えることが難しい作業が数多く存在しています。
問診時間の短縮で、医師や関連するスタッフには、余裕が生まれ患者さんと密なコミュニケーションがはかれるようになりました。それだけでなく、労働時間の削減にも繋がることから、外来以外の業務、すなわち医師においては入院患者の診療、MAにおいては外来における患者さんの案内、診察の補助、代行入力作業などに注力することが出来ています。
今までは回収した問診票をスキャンして保存していたのですが、ユビーAI問診を使用すればスキャン保存する必要はなく、どこからでもアクセスが可能で、テキストベースのため再利用や繰り返し参照することができます。
また、紙問診と比べてユビーAI問診は、情報量が圧倒的に多いです。紙問診では、医師がカルテ入力するのに時間がかかっていた点についても、追記する量が少なく済むため、何にも寄与していなかったキーボード入力作業自体を減らせたこと、患者さんと診察室で向き合う時間を増やすことが出来た点は、非常にメリットが大きいと考えています。
さらに、患者さんにとっても診察に要する時間は、1人数分程度削減出来ているようです。来院から帰宅までの時間が短縮し、患者サービスや満足度の向上に繋がっていると感じています。
今後の医療についての考え方
非接触医療を踏まえた新しいやり方の環境づくり
新型コロナウイルス感染症の流行によって、外来診察においては、発熱患者を診察する際の、接触の低減が求められるようになりました。
2020年4月になって、ユビーAI問診に事前問診機能を実装する計画を聞きました。当院からは、来院前の自宅等におけるAI問診の他に、来院後の診察前問診を、駐車場にとめた自家用車内で患者さん自身のスマホを用いて待機中に行ってもらう機能(QRコードの活用)をリクエストし、5月8日からスマホを使った問診も開始しています。
発熱や呼吸器症状があり新型コロナウウルス感染症の疑いがある方については、受付の段階でトリアージして車内で待機してもらい、iPadでの問診あるいはスマホ問診を行っていただき、接触機会の低減を図っております。AI問診でCOVIDアラートが示された場合には、その後の医師の診察(追加問診)は、Facetimeを利用して行うといった非接触の工夫も取り入れています。
また、面会が禁止されている状況下での、家族との面会・面談については、FacetimeまたはWeb会議システムを利用したオンラインシステムを提供しており、患者さんの療養をサポートできる体制づくりを意識しています。
今後は、同様の仕組みでオンライン診療も導入する予定です。アプリを含めたシステムを構築中であり、初診だけでなく、オンライン再診患者の問診や経過報告にも、ユビーAI問診が対応してもらえることを期待しております。
見えている課題に対して自分から手を上げて解決する姿勢
私は、当院に2019年4月に赴任しております。約30年ほど、前任地で勤務しておりましたが、新たな病院での職をいただき、これまでの経験とは異なる素晴らしさを実感する一方で、「もっと良い方法があるのではないか」「この運用は望ましくない」といった、いくつかの疑問課題にも気がつきました。
長く勤務しているとこれが普通だと感じることも多くありますが、新たな視点から指摘した課題に対する解決策を模索する中で、2020年8月、新たにイノベーション推進本部(MiP)が15名で設立されました。MiPでは、基本コンセプトとして、働きかた改革と業務の効率化、コミュニケーションの改善、適正で過不足のない診療記録管理、患者サービスの向上、経営改善を掲げました。
新型コロナの流行も一例ですが、医療を取り巻く環境の変化に対応するため、問題点や課題にまず気づくことが重要です。その不適合を修正するべく、業務フローの見直しやICTの活用によって解決策を考え、スピードを重視し多職種で取り組み、行動をおこし、現状を変えることを目指しています。
こうした取り組みは、優秀なメンバーを集めればよいというわけではなく、トップの理解があって初めて実現できることだと実体験からも認識しています。
良い変化、イノベーションがおこれば、我々医療従事者だけでなく、患者さんにもメリットはもたらされるはずなので、患者や地域から選ばれる日本一の民間病院を目指して、取り組みを継続したいと考えております。
ユビーAI問診導入、ICTの活用も、ツールを導入することが目的ではなく、どのように活用するのか、どんなメリットが得られるのか、今後の発展はあるのかが重要だと考えています。
導入して終わりではなく、中長期的な視点から、効果を検証するとともに、より良い病院づくりに取り組みたいと思います。
松波総合病院
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