整形外科を中心に「総合かかりつけ医」を目指す当クリニックでは、専門外の診療を行うこともあり、問診の精度を上げていくことが必要です。また、整形外科疾患は経過が長い患者さんもいるため、非常勤医師との間で情報をスムーズに連携する環境づくりも、当クリニックにおいては必要でした。
ユビーAI問診導入前に抱えていた課題
当クリニックは整形外科ですが、いわゆる「町のかかりつけ医」という側面もあり、患者さんの中には整形外科以外の症状を抱えた方もいらっしゃいます。また、私以外にも非常勤医師が複数名在籍しており、非常勤の先生も、自身の専門領域以外の患者さんを診察することが求められており、非専門医でも質の高い医療を提供できるかどうかが当クリニックでの一つの課題でした。
かかりつけ医として行う「専門外の診療」という大きな課題
たとえば、整形外科の患者さんの「痛み」に対して、湿布剤を処方することはよくあります。しかし湿布剤によるかぶれやかゆみという症状が出ると、「皮膚科領域の軟膏薬」を処方することもあります。この地域にも皮膚科のクリニックはありますが、患者さんからすれば「受診する先はまとめておく」方が良いですから、湿布剤によるかゆみやかぶれが出たからといって、すぐに「近くの皮膚科クリニックに行ってください」というのも難しいのです。
それから、医師としては「なぜ皮膚科の薬剤を処方したのか」という理由などを、カルテに明記しておく必要があります。一般的にこうした情報をカルテに残しておくことは、いわゆる「カルテの監査」への対処法でもあると考えています。
複数の医師による診察をスムーズに行うには、何をするべきなのか
問診から得る情報は診察において重要なものであり、非常勤医師が診察する際にも、しっかりと情報を聴取し記録しておくこと、さらにその情報をスムーズに共有できる仕組みは必要です。ある程度「診察内容をフォーマット化する」というのも、これからの当クリニックには必要だと考えています。
たとえば「頚椎症」が疑われる患者さんに対し、初診のときに何を診てどの検査を行うのか、これは医師の経験値や所属する医局によっても、少しずつ考え方が違います。これはカルテ記入のクセにもつながるため、同じ患者様を複数の医師が診る場合、他の医師が書いたカルテが読みにくいなど、患者さんにとっても医師にとっても非効率なことが発生しやすいのです。こうした問題を無くすためにも、医師による問診や記録もある程度はフォーマット化していきたい。そう考えているときに出会ったのが、AI問診ユビ―だったのです。
ユビーAI問診導入後の効果
AI問診ユビ―を導入して一か月半、利用される患者さまは250名を超えました。ユビーAI問診から出力される問診結果は丁寧すぎるほどよく出来ており、電子カルテに記載する内容は質量ともに圧倒的に良くなりました。また、紙で問診を行っていたときは追加の問診は医師が行っていましたが、この手間は確実に省かれ、医師の「カルテへの転記作業」の時間は、確実に短縮できています。
専門外の疾患に対しての効果は、(2020年度は)従来に比べ内科の患者さまが減っており判断が難しいところではありますが、詳細な問診結果が得られることで、検査の方向性など医師が治療方針を決めるときの役に立っているのは間違いありません。
前述の「皮膚科の疾患」については、主訴や所見を記録するのに助かっています。当院で診断がついて治療が上手くいくのであれば、患者さんにとっても通院するのは1か所で済みますし、広い意味では医療費の抑制にもつながるではないかと思います。
患者さんの「遠慮がなくなる」という副次的な効果も
一方、副次的な効果として、患者さんが「痛み」を訴えることに遠慮が無くなった、というのもあります。紙での問診、あるいは医師や看護師が追加質問を行っていたときは、「今日、一番痛むのはここ」という主訴が多かったのですが、AI問診ユビ―を使って自分で入力するようになると、痛い箇所が増えてくる傾向があります。痛みの治療が主である整形外科としては、「今、どこが一番問題なのか」を知りたいところではありますが、逆に患者さんが遠慮することなく、色々な「不都合」を率直に伝えられるようになったのは、やはり一つの効果だと捉えています。
今後のユビーAI問診に期待すること
整形外科のカルテで大事な部分でもあるのがシェーマ。現状では、電子カルテにシェーマを貼り付ける操作が思うように行かず、この点は今後さらに改良されることを期待しています。
問診票の内容も、整形外科用にカスタマイズされるとさらに便利に利用できると思いますし、当クリニックに限ってなら、再診用の問診票もあると良いと思います。痛い部分、改善具合、痛みの程度、ADLの変化など、問診事項を絞るような工夫ができればと思います。
近隣に整形外科が増えたこともあり、現在は10年前に比べると患者さんは3分の2ほどに減っていますし、ICTによるサポートも増えたことにより、昔に比べると医師の仕事も楽になってきているのかもしれません。
しかし、現在は医師2名体制で診療を行っていますが、1日あたり80人ほどの診察を行っていますので、診療時間後に診療記録を書くなど、21時や22時まで帰れないこともしばしばあります。
こうした状況を打開すべく、週1回勤務の非常勤医師を増員する予定でいます。そこで必要だと考えているのが、カルテの統一化です。診療記録だけを見ても、医師によって書き方が異なりますから、AI問診ユビ―のように予め統一された情報を記録していけば、物の見方もある程度は統一できます。複数の医師がスムーズに業務を行えるような環境づくりにも、AI問診ユビ―は大いに役立ってくれるのではと期待しています。
カルテは誰のためにあるものなのか
AI問診ユビ―の導入を迷っている整形外科の先生方もいらっしゃるかと思いますが、少なくとも当クリニックでは、ユビーAI問診を導入したことで診療が楽になりました。正直、問診は医師にとって非常に重要な部分ではありますが、1日100人近い患者さんに対して、前回受診時からの変化を細かく聴取したり、初診なら現病歴や既往歴、薬やアレルギーに至るまでの詳しい問診を行ったりするのは、なかなか大変です。
しかし診療録の価値や在り方を考えてみると、診療録とは医師のためだけではなく、患者さんのために存在するものという考え方が、近年は一般的になってきました。AI問診ユビ―の力を借りて、患者さんに関するさまざまな情報をもれなく記録していくことが、これからの医療のスタンダードとなることに期待しています。
高円寺整形外科クリニック
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