ユビーAI問診導入の背景
当院では2019年から外来の改革に向けて動いていました。看護師を外来ではなく病棟内の専門性の高い部署に配置し直すことで、人件費が削減できないかと考えていたのですが、その時の改革案が病院幹部職員にとても過激なものに見えたらしくその案は否決されてしまいました。(笑)
原案を改修しながら外来改革を進める中で、ユビーAI問診の話を聞きました。話を聞くうちに、ユビーAI問診を使えば診察医の負担削減と人件費の削減ができると思いました。
診察医の負担削減で重要だったのは、電子カルテの入力業務削減です。
紙の問診を使っていた際には、医師自身で問診内容を電子カルテに打ち込む必要がありました。そのため医師がやる必要のない入力作業に時間を取られていましたし、人によっては転記作業だけで大幅な時間が掛かっていました。患者さん1人あたりの診察時間を5分削減するだけで、診察数を1人増やすことも可能なため、無駄な業務削減は病院全体で急務と考えていました。
次に人件費削減のポイントとして、外来看護師数の効率化を図ることが重要でした。
元々、看護師の採用が難しい中でも人員を確保するために、非常勤の方を多く採用していました。病棟は常勤看護師がほとんどですが、外来では非常勤看護師が多い状態でした。
非常勤の方に入っていただけるのは非常に助かるのですが、シフトを組んでの運用になることや、毎回違うメンバーで業務に当たることになってしまうため、オペレーションが安定しづらい問題がありました。
相対的に見ると他の病院と比べて看護師の総数は多いと感じていたため、ユビーAI問診で業務効率化を進めることで、外来に入ってもらう看護師数を少なく出来るのではないかと考え、導入に向けて検討を開始しました。
外来改革に向けて、状況を把握するために様々な数値を測っていましたが、最も目立っていたのが問診業務でした。
紙で行う場合は記入された問診票を事務・看護師が確認し、再度患者さんに追加問診する流れになっていました。
追加問診では、
・主訴に応じていつからその症状が出ているのか
・具体的に痛む場所はどこなのか
・過去にも同じようなことがあったのか
など、紙では聞ききれない内容をヒアリングしていたのですが、この追加問診で10-15分ほど時間がかかっていました。
医師がその情報を確認して診察を行うのですが、そこでも追加で質問をすることもあり、「ここ」こそユビーAI問診で削減できるポイントだと考えました。
ユビーAI問診導入による効果
実際に導入して使い始めると、問診票から電子カルテに転記する作業がなくなるだけでここまで快適なのかと、本当に驚いています。
時間がかかっていた事務・看護師の追加問診も、負担削減のために完全にやめようと徐々に進めており、診療科によっては既に業務効率化が実現できています。
問診にかかっていた時間が半分に
実際、ユビーAI問診の導入前と導入後で問診に費やしていた時間を比較すると、15-20分ほど掛かっていたものが7-8分で終わるようになっています。
従来であれば
・紙の問診に5分
・事前の追加問診で10分
・診察時の問診に5分
で合計20分程度掛かっていたものがユビーAI問診を使うと、
・AI問診の入力に5分
・診察時の問診に2-3分
・と事前問診の削減だけでなく、診察時の問診時間軽減にも繋がっています。
若い人であればAI問診の入力も2-3分で終わりますし、高齢の方でも一度説明すれば迷わず使っていただけるので、今後は更なる時間削減に繋がると思います。
看護師2人の人件費削減にも効果
また、追加問診が必要なくなったため、各科受付の人員も削減できました。具体的には10人から8人まで削減できているのですが、無理に人を減らしたのではありません。
元々非常勤の方が多かったこともあり、ある程度の出入りは自然と発生していましたので、新規の採用をしなくても回るような仕組みにしていきました。
削減後の看護師の人員配置についても看護部長が積極的に協力してくれており、外来に余剰人員が発生した場合は病棟側に派遣する、というような形で対応しているため、流動性を保ちながら人員を最適に配置出来るよう日々調整しています。
今でも十分な効果は得られていますが、今後は紹介状やお薬手帳のスキャン機能についても活用したいと考えています。
現在は診療科毎に受付場所が異なるため、スキャンする場所の統一や手書きの場合の対応等、運用フローが増えてしまうため、使えておりません。
ここに関してはUbieの開発スピードに期待しており、驚くような機能で問題を解決してくれるのを楽しみに待っています(笑)
病院経営に対する思い
コロナの影響で、それぞれの病院が生きるか死ぬかの瀬戸際です。
経営判断を少し間違えるだけで本当に潰れてしまうような、戦国時代に突入しています。
今までは最先端医療などの、付加価値の高い医療を提供していた病院が黒字を出していました。ただ今回のコロナではそういう病院は軒並み赤字に陥っています。
当院は最先端医療や設備の提供に力をいれるのではなく、地域密着の病院として、救急患者を断らないような風土で運営しています。
より患者に根ざしたコミュニケーションとるために、患者と向き合う時間が必要だと思いました。
だからこそこれまで以上に地域に根ざした病院として、適切な医療を適切な人に届けることで健全な経営につなげていきたいと考えています。
病院経営は、原価の5割以上が人件費です。ですので、常にスキルアップして患者さんの満足度を上げていかなければ地域の住民に選ばれ続けることも出来ません。
そうなるために、病院として一人ひとりの職員がより専門的な業務に当たる体制を作る必要があります。ユビーAI問診などのツールをこれまで以上に活用することで、ITに置き換えられる部分はITで代替し、本当に注力すべき業務に割く時間を増やし、その状態をいち早く整えたいと考えています。
きれいごとのように聞こえるかもしれませんが、地域住民を守るためにもこの病院を潰してはならず、職員にはスキルアップしてもらい、なおかつ気持ちよく働いてもらいたいと思っています。
それが必ず、地域住民の命、医療を守ることに繋がると信じています。
※写真前列右から2人目が藤信明統括副院長、3人目が中川雅夫事務部次長、
後列真ん中が松村優係長、うしろは初診センター「AI問診」
京都済生会病院
〒617-0814
京都府長岡京市下海印寺下内田101番地
https://kyoto.saiseikai.or.jp/