ポスト・コロナ時代を迎えるにあたって、「医療現場の地図は大きく変わるでしょう」と話すのは、藤枝市立総合病院(静岡県藤枝市)の毛利 博 事業管理者。
これからは「医療とAIが共存するはず」との未来予測を立てる毛利事業管理者は、ユビーAI問診の導入も即決でした。
2020年6月より救急科外来にテスト導入を開始し、現場にどんな変化があったのか、なにが見えてきたのか。
導入して1カ月のタイミングで、毛利事業管理者にお話を伺いました。
無駄を省き、患者さまの目を見て話したい
新型コロナウイルスの影響もあり、「人との接し方」が問題になっています。それは医療現場でも同じこと。ポスト・コロナ時代には、既存の概念を覆すような、新しい形が問われます。そこで重要になるのが、デジタルをいかに活用できるのかということ。当院では入り口に自動検温ができるシステムを設置し、いち早く医療現場とデジタルとの融合を意識しています。
そんな状況で出合ったのがユビーAI問診でした。直感的に「これは面白いし、利便性がある」と思ったのです。
そもそも、従来の待合スペースでの作業を見ていると、無駄が多い。外来で訪れた患者さまは看護師から受け取った問診票に記入し、それを看護師が担当医に渡します。担当医はそれを見ながら、あらためてPCに患者さまの症状を入力していく。
しかも、入力に間違いがあってはならないため、担当医は患者さまの目ではなく、問診票ばかりを見てしまいます。けれど、患者さまからすれば目を見て話を聞いてもらいたいはずですし、私たち医師も、本来は患者さまと向き合って診察したいのです。それがなかなか叶わない状況にもどかしさを覚えていました。
この一連の流れをなんとか省略し、患者さまのためになる医療を実現するためにはどうすればいいのか。そう考えていたときにユビーAI問診を知り、問診という無駄が多い作業をAIに任せられるこのサービスは医療現場の一助になるはずだと感じました。
新型コロナウイルスで膨れ上がる業務量
まずはテスト期間を設けるために、さまざまな患者さまが集まる救急科に導入しました。そこでのテストによって、実際にどの診療科で役立つのかを見極めたいとも思ったのです。
導入にあたって、大きな反対はありませんでした。そこには、働き方改革への意識も関係しています。私が若い頃は、何日も病院に泊まり込んで働く医師が大勢いました。けれど、それでは体がもたない。質の高い医療を提供するためには、医師や看護師に負担が集中しないよう、働き方を改善していかなければいけないのです。けれど、現状、看護師や医師への負担がいまだに大きい。そこに新型コロナウイルスが来てしまった。それでもみな、文句も言わずに働いています。
それはなぜかというと、誰もが患者さまのことを思っているからです。医療現場は想像以上に泥臭い。患者さまが回復すればうれしいですし、亡くなってしまえば落ち込みます。だからこそ、後悔しないように一人ひとりに寄り添いたいと考える看護師、医師が多い。それでも業務量が膨れ上がってしまうと、患者さま一人ひとりに割ける時間も減ってしまいます。
そこでまずは、待合スペースでの無駄を省略できるユビーAI問診に頼ることを決めました。導入すれば看護師や医師の負担軽減につながるのではないか、と思ったのです。大きな結果が出るのはこれからだと思いますが、導入したことで問題が発生することもなく、今後の成果に期待しているところですね。
AIの活用で、より充実した医療を実現
個人的には、これから「医療とAIとが共存する時代」が訪れると確信しています。
AIを活用するメリットはさまざまですが、たとえばそのひとつが、「問診の充実度」です。看護師や医師は医療のプロフェッショナルとはいえ、やはり人間。忙しさや疲労の度合いによっては、どうしても見落としてしまうこともあるでしょう。けれど、AIを活用すれば見落としを防げます。
仮に「肺に問題がある」と言われれば、医師は肺ばかり診てしまう。でも、本当の問題は腎臓や肝臓にあるかもしれない。そんなとき、医師をサポートするAIがあれば、これまで以上に充実した診療ができると考えているのです。
また、AIを活用しながら医師がセルフアセスメントを繰り返していくことで、自ずと技術の向上が図れるというメリットもあるでしょう。
リモート診療により、感染リスクを避けられる
ユビーAI問診に期待するサービスとしては、「導入している病院での問診結果を集約し、データベース化する」ということ。それが実現できれば、膨大なデータベースができます。疾患予測や治療法を共有できますし、各医療現場レベルの平準化にもつながるかもしれません。地域による医療レベルの差を埋めることは、すなわち日本全体の医療技術の底上げにもなるはず。
また、ユビーAI問診にはスマホを使い、自宅でリモート問診できる「来院前問診機能」もあるため、まさにポスト・コロナ時代を担うのではないかと思っています。特に濃厚接触者の来院にはリスクがある。けれど、事前にリモート問診しておけば、病院側としても受け入れ体制を万全に整えられるのです。
新型コロナウイルスは経済に大打撃を与えましたし、医療現場の地図を大きく変えるものでした。いまだ受診抑制がかかっている上、場合によっては倒産の危機に瀕している病院もあります。当院でも患者さまの来院が、一日あたり50~100人ほど減少しました。新型コロナウイルスに感染するかもしれない、と思うと、なかなか病院に足を運べなくなってしまう患者さまの気持ちも充分理解できます。
そんな状況を打破するサービスになるかもしれないのが、ユビーAI問診です。待合スペースのみならず、ときには自宅からAIによる問診を受けられる。それは、看護師や医師の負担軽減、患者さまの待ち時間削減、新型コロナウイルス感染リスクの低下と、さまざまなメリットをもたらすだろうと信じています。
藤枝市立総合病院
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