<ユビーAI問診の導入背景>
地域医療でのICTの必要性
当院は病床数111床の二次救急病院です。地域医療の現場では少子高齢化が顕著であり、その状況で高齢者をどのように地域で支えていくのかを日々模索していますが、今後、さらに高齢化が進むなかで、人的なリソースでカバーするだけでは限界があります。
そこで当院では、以前から在宅での電子カルテの利用や遠隔医療など、ICTを活用した医療に取り組んできました。地域の皆さまに満足していただける医療を提供するために今までさまざまな取り組みを行ってきたなかで必然的にICTを活用する風土が形成されています。
以前行った在宅の見守りシステムの開発の際は、患者さんの見守り(転倒など)や検温でAIを活用できないか試みたこともあり、医療現場でのAIの活用に注目していた矢先、ユビーAI問診を知り、非常に興味を持ちました。
<ユビーAI問診の導入目的>
問診を標準化し、病院滞在時間を少しでも短縮したい
診察までの待ち時間に加えて、診察後の血液や画像診断などの検査時間、そして検査後の説明の時間まで含めると、患者さんの病院滞在時間はどうしても長くなることがあります。
検査結果が判明するまでの時間など、短縮できない部分もありますが、ユビーAI問診の導入で診察時の問診をコンパクトにできれば、待ち時間を含め、病院に来てから帰るまでの病院滞在時間を少しでも減らすことができるのではないかと考えていました。
また、問診の標準化にも期待がありました。問診者の職種や経験によって問診内容にはどうしても違いがあり、問診の内容がその後の診察の時間に影響する場合があります。どのような状況でも、情報が標準化されている問診であればその後の診察もスムーズに行うことができます。問診の標準化についてもAI問診ユビ―に期待していました。
<ユビーAI問診の導入効果>
問診の標準化で診察時間の短縮を実現
導入当初より期待していた問診の標準化ですが、問診内容は予想以上に高いクオリティで大満足です。ユビーAI問診は、家族歴・既往歴・生活歴なども含めて、問診の漏れがなく、診察前に電子カルテに反映されているため、診断のための情報として役立つのはもちろん、医師が情報収集に費やす時間やカルテ記載業務の時間も大幅に削減できている印象です。
特にカルテ記載業務については、患者さん1人につき、診察中、診察後、合わせて約3~5分程度短縮できました。また、今までは診察の際に問診内容を電子カルテに打ち込みながら患者さんに接していましたが、情報収集、カルテ記載がほぼ済んでいる状態で診察できるので、患者さんの顔を直接見ながら診察を行う時間が増えています。
看護師の負担を軽減しつつ、問診の教育も可能
経験豊富な看護師でも、他の業務を平行しながら患者さん一人ひとりに向き合って詳細な問診を行うことは大変な労力を伴います。その点、ユビーAI問診を利用することでクオリティの高い問診票を作成することができるので、問診を行う看護師の負担の軽減にも繋がっています。
さらに、ユビーAI問診の問診内容と結果を確認することで、「AI問診ではここまで聞くのか」「この場合はこう聞いた方がいいのか」など、多くの参考情報が得られ自身の問診スキルの向上につながると、教育的な面においても現場スタッフからは非常に好評です。
救急でのユビーAI問診の病名辞書
ユビーAI問診は問診に留まらず、初診患者の診断の際の補助ツールとしても役立っています。診療科ごとにユビーAI問診の利用方法はさまざまですが、とくに救急医療では専門外のさまざまな病気の診療にあたるので大きな助けになっています。
もちろん最終的には医師が診断を下しますが、自分の専門ではない病気の場合に、ユビーAI問診の病名辞書から出てくる参考情報はとても参考になり、「AI問診ユビ―なしでの救急外来は考えられない!」と言う先生もいるくらいです。
ユビーAI問診の可能性は無限大
運用方法についてはさらに効率のよい形を探しているところです。現在はご高齢の方の入力の手間などを考慮し、外来看護師が指定の問診室で、患者さんの代わりにユビーAI問診を入力しています。AI問診の入力は患者さん本人ではなくてもスムーズに効率よく行うことができています。今後もいろいろ試しながら、患者さんにとって最良の形になるように対応していきます。
AI問診ユビ―は当院での活用例だけでも、カルテ業務の効率化や問診者への教育、救急外来での診断補助など場面に応じてさまざまです。当院の活用例だけでなく、医療機関毎の状況に応じた活用法が考えられ、また、全国の医療機関から収集した情報をもとにした各機能のアップデートも非常に早く、日々成長していくAI問診ユビ―の可能性は無限大だと感じています。
<病院として目指している未来>
地域医療の現場では、今後さらに少子高齢化、人口減少・働き手不足などネガティブな問題に直面することは間違いありません。
ただそのなかでこそ、当院が目指すのは「未来の地域医療のモデルを先駆けて実践し、全国、そして世界に提案、発信すること」です。
当院は佐賀県鹿島市で100年以上にわたり地域の皆さまとともに歩んできました。今後も地域の皆さまが住み慣れた地域で最期まで自分らしく過ごせるように、ICT、AIを活用しながら、保健・予防分野も含めた医療機能のさらなる充実を図りたいと思います。