外来診療における課題は「看護師の問診にかかる所要時間」
当クリニックは、名称は「クリニック」ですが、健生病院隣接の診療所(外来専門施設)であり、来院される患者さんは一般的な「クリニック」とは少し違います。いわゆる病院の外来機能ですから、診察室の数も多いですし、患者さんの数も多い。その中で、「問診」は看護師の業務となっており、ここに「業務改善」という大きな課題がありました。
看護師が患者様に付きっきりで問診することは重要だが非効率
当クリニックでの外来業務は、本来は午前中までとなっています。しかし、1日平均200人ほどの患者さんが受診され、5つの診察室で診療を行っていますので、平均すると医師1人で40人ほどの外来患者さんの診療を行っていることになります。その中で、新患の患者さんは、多ければ10名以上が来院されます。
看護師は基本2名体制で、新患に1名、再来に1名、それでも追いつかない時は手の空いている看護師がヘルプで入ります。門前クリニックという性質上、一般的なクリニックよりも複雑な症状・病気を抱えて来院される患者様が多く、医師の診察だけでなく “事前の問診” が診断のためには非常に重要になってきます。そのため、患者さんに記入してもらった紙の問診票を見ながら、看護師が患者さんと1対1でお話をうかがって、症状や生活歴等の診断に必要な情報をさらに深掘りして聞いていくというのをすべての患者様に必ず行っているため、問診だけで1人の患者さんに15分から20分くらいかかってしまっていました。これを電子カルテに入力するのにさらに5分から10分ほどかかっているので、看護師がと患者さん1人にかかる時間は、合計すると30分程度とかなりの負担になっていました。
また、患者さんが一気に来院されたときなどは、せっかく早い時間に来院していただいても、看護師による問診までかなりお待たせしてしまうことも多く、患者様の満足度という観点でも課題を感じていました。
「問診時間の短縮」がもたらした効果とは
看護師による問診時間を、およそ半分に削減
結論から申し上げると、ユビーAI問診を導入したことで、看護師による問診からカルテへの登録にかかる時間は、平均30分程度から平均15分程度、およそ半分になりました。
タブレット端末は5台ありますので、同時に5人の患者さんに入力していただくことができます。その隙間で、看護師はお薬手帳をコピーし、紹介状を確認して処理するなど、ほかの業務も同時に行うことができます。今までは一人の患者様に付きっきりで、患者様に問診している時間は他のことが一切できませんでしたが、ユビーAI問診によって “隙間時間の活用” をする余裕が生まれ、結果1人の患者さんの「問診」を全部まとめて行う過程が、15分程度で完了できるようになりました。看護師の中でも、新患担当と再来担当に業務を分けていますが、新患担当の手が空いたら再来担当の業務を手伝うことができますし、看護師の業務が滞ることが減りました。これも一つの効果かもしれません。
AI問診の利用を開始してからちょうど2か月が経ち、現在のところ、10代から80代後半まで、およそ400名新患に利用していただきました。患者様に使っていただく中で、最初の「主訴」を入力するところがつまづきやすいということがわかってきたので、主の入力までは看護師が行うという運用に変更したところ、高齢者の方でも迷わず最後までご回答いただけるようになりました。。所用時間は、若い方なら3分程度、高齢の方でも10分以内くらいで入力できています。導入前は高齢者の方にタブレット問診が使っていただけるのか不安もありましたが、実際はそんなことはなかったです。どちからというと、これまでは、とりとめのないお話しをされる患者さんも多く、途中で話を打ち切るわけにもいきませんから、「話を聞く」だけでも時間がかかっていましたが、AI問診が丁寧にあらゆる質問をしてくれることで、患者様の安心にもつながり、医療従事者も接客サービスではなく、医療に必要な情報を患者様から適切にヒアリングすることに成功しています。
AI問診はコロナウイルス感染に対するストレスも軽減してくれた
AI問診を導入する前までは、玄関先で入念に聞き取りをし、患者さんをクリニック内に通しており感染対策にはとても気を遣っていました。しかし、私達看護師は、換気が不十分である個室で問診をとっており、日々コロナウイルス感染のリスクに晒され、知らないうちにそれが大きなストレスとなっていました。
しかし、AI問診を導入したことで、看護師が密室で患者さんの問診を取る必要がなくなり、それ自体が感染防止対策となりました。期せずして感染リスクに晒される時間が大幅に減ったことで、自然と看護師の精神的ストレスをグッと減らすことができました。これは当初想定していなかった効果でした。日々業務をしている看護師の私たちも、出来るだけ密や密室を避ける中、AI間診の導入により患者さんだけでなく働く私たちも安心を得ることができました。
外来診療の「流れが良くなりすぎた」ことによる新たな課題
ユビーAI問診の導入で、たしかに「問診に係る時間」は短縮でき、外来看護師の業務の流れはよくなりました。しかしその一方で、「流れが良くなりすぎたこと」により、当クリニックの役割でもある「患者さんと1対1でじっくり話をうかがう」という点で、新たな課題も見えてきました。
より深く患者さんを理解するために、さらに踏み込んだ機能が必要
当クリニックでは、診断のために「何か困っていることはありますか?」という何気ない会話から得る情報も大事にしています。さらに治療となると、もう少し踏み込んだお話しもうかがう必要性が出てきます。患者さんの身なりやちょっとした発言から「生活環境が悪いのかな」と予測することもあり、支援が必要な患者さんには介入に繋げることもあります。医療機関の機能として、患者さんの今の病状、患者さんがもつ背景、家族歴、経済環境、こうしたことも含めての問診が必要なのです。
実は、ユビーAI問診を利用することで、逆に「患者さんと接する時間が減った」という面もあります。可能であれば、「ほかに困っていることは無いか」「医療費の支払いで困っていることは無いか」など、カスタム問診のような形で導入できれば良いと考えています。
当クリニックでは現在、紙の問診票も平行して利用することがあります。それは、こうしたカスタム問診のような情報を、患者さんと1対1で会話する中で得ているためです。ユビーAI問診を導入したことで、外来での患者さんの情報の流れは非常に良くなりましたが、逆に良くなりすぎてしまった。これを補っていける機能が、オプションでも良いので付加されると、満足度はさらに上がっていくのではないでしょうか。
健生クリニック
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