〈ユビーAI問診の導入背景〉
●早期発見・早期治療によって地域の皆さんに健康に生活してほしい
当院が大切にしているのは、地域の皆さんに必要なときに必要な医療を提供することです。具体的には、早期発見・早期治療によって地域の皆さんが健康に長く生活するためのお手伝いができればと考えています。
病気は気を付けていても、なる時はなってしまうものでもありますし、治せない疾患もいまだに多く存在しますが、早めに異変を発見し、適切な治療をおこなうことで、治せるもの、コントロール可能な疾患もまた多く存在します。疾患や検査の啓蒙から早期発見治療までを適切に提供することで、地域の皆さんが少しでも安心して生活できる地域にしたいと思っています。
適切な医療を提供するための取り組みとして、各診療科の垣根を低くして情報共有をしっかりおこない、抜けがないようにすることを医師や看護師たちにお願いしています。例えば、専門領域だけの診療を続けていると、別の異変を見落とすことがあります。そうしたことが無いよう、その患者さんがこれまでどんな検診を受けてきて、どのような病歴があるのかなどを丁寧に伺っています。必要な場合は、検査や人間ドックなどをお勧めすることもあります。
さらなる早期発見・早期治療に取り組み、適切な医療を提供したいという思いから、『ユビーAI問診』を導入しました。
〈ユビーAI問診の導入目的〉
●病態を正確に把握するため『ユビーAI問診』を導入
診察前の問診の取り方には看護師個人で少しずつ違いがありますし、混雑時にはどうしても疎かになる部分もでてきてしまいます。そういった差をできるだけ無くし、最初から病態をしっかり把握することが導入の目的です。
当院は、地域のかかりつけ医としての役割も担っているため、最初に詳しく病態を伺い、それから継続的にご来院いただくことが重要になります。1度しっかりとカルテを作れば、同じ話を何度も聞くこともなく時間の短縮になりますし、それによりその患者さんにより適切な診察を行うことで必要な検査が適切なタイミングで提供できます。
例えば「おなかが痛い」という症状でも、それがいつからなのか、どんなきっかけだったか、患者さんの年齢、病歴などによって、その後の検査や治療方法は変わってきます。問診が標準化されることで、そうした検査や治療の精度が上がるのではないかと期待しています。
●「はい」「いいえ」で進められるシンプルな操作性
初めに『ユビーAI問診』を知った時は、問診20問だけでどこまで病態を絞れるのかな、患者さんが使えるかな、と思っていました。しかし担当者の方から説明を受けたところ、症状の記入をせずに「はい」「いいえ」だけで進められ、それを繰り返すことで病態を絞り込める操作性だったので、これなら高齢の患者さんでも使えそうだ、と感じました。
早速院内で導入を提案したところ、スタッフからもポジティブな意見が多くスムーズに進んでいきました。ネガティブな意見で主だったものは、やはり「高齢の患者さんが使えるのか」というものでしたが、そこに関しては、使えない人は使えなくても問題ないのではないか、というところで話がまとまりました。仮に使えない人が1~2割いても、8~9割が使えるなら大幅に時間は短縮できますし、使えない人は紙で運用すればいいだけの話ですから。100%デジタル化しないといけないわけではなかったので、それなら問題ないだろうということで、導入へ進んでいきました。
〈ユビーAI問診の導入効果〉
●運用開始後、高齢の患者さんも含め全体の8~9割にご利用いただけている
導入後も医師や看護師から不満などはなく、スムーズに運用開始できました。導入前にスタッフに「しっかり既往歴含め伺っておくことで、後々の検査や治療が漏れなく実施できる」というメリットを説明し、納得してもらえていたことも大きいと思います。
高齢の患者さんが使えるのか、という懸念については、まだ詳細な数字は取れていませんが、現場を見る限り全体の8~9割の方はご利用いただけている印象です。実際に80代以上などかなり高齢の方ですと難しい場合がありますが、そうした患者さんはお子さんが付き添われていることが多いので、お子さんが一緒に入力してくれるケースもあります。
●診察時間の3~5分短縮を実現。予約外の新患を診る余裕も増えた
医師や看護師からの反応で最も多いのは、「時間が短縮できている」というものです。1度聞いたことを再度聞くようなことがなくなり、カルテに記載する時間も減っているので、1回の診察で3~5分短縮されているという報告もあります。
特に初診は、検査結果の記入なども含めるとカルテ作業で15分ほどかかります。例えば外来が50人来られる日だと、その中の5~7人くらいは新患の方なので、詳しく話を聞いてカルテをとるのが時間的に難しい場合もあり、限定的に主症状だけを聞くようなことも少なくありませんでした。そうしたことが減り、その後の検査の計画などを立てやすくなったと聞いています。
また、時間が短縮されたことによって、予約患者さんの間に新患の方を診やすくなったことも大きなメリットです。これまでも予約通りに患者さんを診ていくことは大事にやってきたのですが、それにプラスして新患の方を診る余裕ができました。
実際の時間的な余裕だけでなく、スタッフの心理的な余裕も生まれたと思います。混雑していると、予約外の患者さんはどうしてもお待たせすることになってしまうのですが、待ち時間も以前より短縮できていると思います。
●来院前問診やアレルギー・お薬情報の記入などの作業でも負担軽減
他には、来院前問診や、アレルギー・お薬などに関する記入業務に関しても作業負担軽減の効果が見られました。来院前問診は、これまでも予約電話の際に症状を伺うことがあったのですが、メモしたものを電子カルテに打ち込むなど、業務的に二度手間や余計な負担が発生していました。導入後は、若い患者さんを中心にホームページ上でユビーの来院前問診を済ませてご来院いただく方が増え、作業負担の軽減に役立っています。
アレルギーやお薬の情報については、紙の問診表の時は聞いたことを医師が文字起こししていく手間があったり、患者さんが間違えて書かれていることがあったり、なかなか面倒な作業でした。こちらも基本情報を先に読み込んでおけるので、かなり手間が減ったと思います。もちろんその情報を元にさらに詳しく聞く必要があるのですが、最初の手間が減るだけでも大きいですね。
●20年後を見据えてさらなるデジタルツールにも期待
今後『ユビーAI問診』に期待したい部分ですが、問診内容から検査をサジェストしてくれる機能などがあると、より役立つと思います。他には、血圧手帳など他のデータと紐づいて吸い上げてもらえるとありがたいです。一括で見られると便利ですし、世の中の状況的にできるだけ非接触の方が良いと思うので、あまり患者さんの持ち物にさわらずに済むという面でも効果的だと思います。
それと20年後くらいの話をすると、65歳以上の患者さんの数はおそらく減りませんが、働く世代の数は30~40%ほど減ってきます。そうなるとデジタルツールを活用しないと、適切に医療を提供すること自体が難しくなりますし、機械化を進めないといけない業務も増えてくるでしょう。そうした未来を考えると、『ユビーAI問診』のサービスはもちろん、さらに発展した技術がより役立っていくと思います。さらなる機能やサービスで医療をサポートいただけるよう期待しています。
〈病院として目指している未来〉
●患者さんのメディカルレコードをより正確に把握し適切な医療を提供していきたい
わたしたちの法人の強みは、病院から老健、特養、訪問看護・診療、各種リハビリテーションまで各種施設があり、地域内で早期発見から治療、終末期に至るまで一連の医療介護を完結できることです。もちろん全疾患の数%程度を占める稀少な疾患や、大学病院を始めとした近隣都市の高次医療機関での集学的治療が必要な疾患もありますが、早期発見可能な生活習慣病との関連性の高い疾患や、急な怪我、病気など、地域の方の急性期の対応をしっかりおこなうことがわたしたちの役割だと思っています。
これまで実際に、長年検査を受けていなくて病気の発見が遅れた方や、1つの疾患は治療できても他の疾患によって急性期の治療が必要になってしまった方などを見てきました。そうした経験から、患者さんのメディカルレコードをより正確に把握することと、正確な病態を測ることが重要だと考えています。『ユビーAI問診』を使えば、メディカルレコードの把握も、1回1回の診察で適切に病態を測ることも、より正確に行うことが可能ですし、その頻度を増やすこともできます。その結果を参考に、定期健診や必要な検査などを適切なタイミングで提案し、患者さんの健康を守っていければと考えています。
患者さんからすると「この病院は検査ばかりすすめてくる」と思われるかもしれませんが、それでも早期発見して何事もないのが一番だと思いますので、そうした形で今後も地域の皆様の生活に貢献したいと思います。