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コロナ禍では発熱外来棟を新設するなど迅速に対応。今後は院内託児所設置や災害医療などにも取り組みたい

神奈川県

湘南藤沢徳洲会病院

髙力 俊策 病院長

関東

一般病床419床(ICU12床)、全職員が約1,200人という規模をもつ湘南藤沢徳洲会病院。大規模院として地域に貢献すると同時に、コロナ禍においては流行初期より新型コロナウイルス患者さんを受け入れ、コロナ対応病床を新設されるなど、迅速に対応されてきました。髙力俊策院長に、病院の特徴や文化、今後の課題と取り組みなどについて伺いました。

●恵まれた環境にあるからこそ、確実に地域の医療ニーズに応えていくことが大事

当院は約400床をもち、地域でも、また徳州会グループの中でも大きな部類に入る病院です。さらに、JR辻堂駅から徒歩5〜10分、隣にテラスモール湘南があり、横浜まで1本で行けるアクセス環境と、非常にご来院していただきやすい良い立地にあります。こうした恵まれた環境にあるからこそ、変わったことをするのではなく、確実に地域の皆様の医療ニーズに応えていくことが重要だと考えています。
最近の具体的な取組み例としては、新型コロナウイルス患者さんの受け入れ体制の整備です。2020年2月コロナ病棟設置、3月発熱外来開始、9月発熱外来棟新設をおこないました。通常の医療とコロナ対応の両立は、地域の皆さまから大きく求められることの1つですので、しっかりと継続していきたいと考えています。
次に病院の文化ですが、これは当院だけでなく、徳洲会グループ全体の気風なのですが、患者さんファーストで「困っているなら、なんとかしよう」とハードに働く人が多いです。もちろん良いことではあるのですが、私はそれが行き過ぎると職員の過度な負担につながるとも感じていました。そのため、院長として一緒に働く職員を大切にできる組織づくりを重視しています。職員が「この病院で働いていて良かった」と言えるような、職員のお子さんが「うちのお父さん、お母さんはここで働いているんだよ」と自慢できるような、そんな病院づくりをおこなっていくことが私の理想です。

●コロナ禍では、毎日変わる状況に対して新しいルールを決めていく必要があった

直近の大きな課題は、やはり新型コロナウイルスへの対応です。流行初期からコロナ患者さんの受け入れをしたり、発熱外来を設置したりと取り組んできた一方で、当院は院内クラスターが2回起きています。クラスターが起きると、来られなくなる職員も多くなり病院機能は一気に落ちてしまいます。しかし、それでも患者さんは診なければいけませんし、手術もしなくてはいけません。
さらに、通常なら普通にできる業務にも、いつも以上の時間や人手をかける必要が出てきます。例えば、コロナ感染患者さんに食事を出す、その食器を下げるという作業も、感染対策が必要ですから当然通常の配膳より時間も手間もかかります。濃厚接触者となった医療従事者は要件を満たせば業務可となりましたが、非感染の職員との接触を最小限にするためには、更衣室や食事の場所をどうするかなどの問題も起こります。こうしたさまざまな課題を、毎日各部署の責任者で集まって対策を練り、どこから人手を回すか決め、さらにそれを院内に一斉配信するなど、毎日新しいルールを決めて対応してきました。
ただ、私は過去に被災地の災害支援医療などに行くことが多く、そこでも毎日変わる状況に対応してきたため、その経験を活かして乗り切ることができました。大変ではありましたが、毎日集まってミーティングして、それをすぐ配信しみんなが共有するという形で、院内のさまざまなルールを決めていくやり方が作れたという意味では良かったと感じています。

●大きな課題は働き方改革への対応。若手医師の経験の機会が失われる懸念も

もう1つ、今後の課題となるのが働き方改革への対応です。まず前提として、特にこれは外科の話なのですが、医師というのは経験が非常に大事な職業です。さまざまな手術をやって、見て、参加して、経験を積めば積むだけ上手くなりますし、9〜17時の仕事以外でどれだけ自己研鑽するかも重要になります。こうした考え方は体育会的だと言われるかもしれませんが、医師の労働時間制限によって、研修医のクオリティが下がるというのは避けられない問題ではないかと私は考えます。
もちろん、今の若い世代に「時間外でもどんどん経験を積め」という感覚を押し付けるべきではないと思います。しかし、私の世代やさらに上の世代には、「働き方改革によって医療のクオリティが下がり、結果的に患者さんが困ることになるのでは?」という懸念をもっている方は多いのではないでしょうか。そう思いながらも、「決まったことだし、確かに職員の負担増もあるから進めなければ」という、ある種、ねじれのような気持ちをもっている方が多いように思います。
当院も、具体的な対策はまだ難しいのが現状です。まずは勤務時間の把握からと考え、タイムカードの管理などから始めていますが、若い研修医や外科系医師の長大な時間超過を実際にどう調整していくかは、今後の大きな課題です。

●看護師が本来の仕事に集中できるよう他職種にタスクシフトしていっている

タスクシフトについてですが、そもそも当院は慢性的に人材不足という問題があり、特に看護師が足りていません。そこで、必ずしも看護師でなくてもよい業務は、他職種に移行してもらうようにしています。代表的なものでは、手術時の器械出しを臨床工学技士(CE/ME)にしてもらったり、事務作業を医師事務作業補助者(ドクターズクラーク)にしてもらったりですね。それから、診療看護師(NP:Nurse Practitioner)にかなりの仕事を担ってもらっています。
タスクシフトの問題点としては、他職種に仕事を渡すことを嫌がる看護師もいることです。「ずっと私の仕事だったのに」と考える人もいるんですね。しかし、やはり看護師が他の人でもできる仕事をしてしまって、本来の看護の仕事で人手が足りていないというのは本末転倒です。タスクシフトを進める際には、急激に導入するのではなく、少しずつ分かってもらえる人から進めてもらったり、間に入ってもらえる人に説得を協力してもらったり、ゆっくりと進めるよう心がけています。そうしないと、やはり反感の方が強くなってしまうので、その辺りも非常に気を遣うポイントですね。

●医師会に加入し地域医療チームの一員になったと実感。今後は逆紹介率を上げたい

当院は長い間、地域医師会に入れていなかったため、過去にはあまり活発な医療連携ができていませんでした。しかし近年、医師会に入ることができ、情報交換の場に呼んでいただいたり、地域のワクチン接種をご依頼いただいたりということが増えてきました。特に、地域のワクチン接種率上昇に貢献できていることは非常に嬉しいですね。医師会に入ったことで、やっと本当に地域医療チームの一員になれたと実感しています。
医療連携に関して、今後力を入れていきたいのが逆紹介です。当院は外来の待ち時間が2時間を超えることもあります。その改善のためにも、ある程度症状の落ち着いた患者さんは、元々の主治医さんのクリニックや、近隣で一番患者さんが行きやすい病院などへの逆紹介を増やしていこう、と医師に働きかけています。紹介状も作り、逆紹介率の目標を達成できるように取り組んでいます。
もちろん、当院でないと治療できない患者さんは継続して診るのですが、だいぶ良くなってきて年2回くらいの通院になった患者さんや、遠い距離を当院まで来ていただいている患者さんは、「どこか行きたい病院や、行きやすい病院はないですか?」と伺うような形で、逆紹介を増やしていっています。また、普段は逆紹介したクリニックや病院に行っていただいて、大きな検査などだけ当院に来ていただくなどの形もあります。

●院内託児所設置、災害医療への注力などに今後は積極的に取り組みたい

病院の将来についてですが、具体的に取り組みたいことが3つあります。
1つは、院内保育園を拡充すること。やはり子持ちの職員が多いですし、安心して子どもを預けて働けるというのは、職員の働きやすい環境づくりのために必須だと思います。患者さんも一時的に預けられるようにすれば、小さいお子さんを連れて病院に来られた方も、安心して治療を受けられます。これはできるだけ早く取り組みたいですね。
2つめは、シミュレーションセンターの設置です。これは、徳洲会グループ全体のさまざまな医師が集まって会議やトレーニングができる施設で、すでに小さなものはあるのですが、より大きなセンターにしたいですね。センターの存在によって医療のレベルを向上させていきたいです。
3つめは、災害医療への注力です。当地域の災害指定病院は藤沢市民病院で、当院は協力病院という立場なのですが、私自身の経験も活かし、災害時の対応や医療について住民の皆さんに積極的にお伝えしていきたいと考えています。院内の備蓄を強化したり、オンライン公開講座を開いたりと、取り組みを進めています。今後は、当院前にある大きな公園を使った災害訓練、避難訓練なども実施できないか検討中です。
これらの取り組みを通して、職員が働きやすく、同時に地域住民の皆さんにも頼りにしていただける病院になっていきたいです。

※2022年1月時点のインタビューをもとに構成されています。

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