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合理的で積極的な働き方改革への取り組み。最新医療を取り入れ成長する「人 中心の医療」

滋賀県

市立長浜病院

髙折 恭一 病院長

近畿

地域住民の健康を守るため、「人中心の医療」を発展させ、地域完結型の医療を目指す市立長浜病院様。市立病院として、社会のセーフティーネットの役割を担い、質の高い医療を提供すると同時に、予防医療、チーム医療の強化推進も行っています。更に働き方改革を積極的に実施し、患者様と職員双方の為になる病院経営を行う髙折恭一院長にお話を伺いました。

人中心の地域完結型医療を目指して

長浜市を中心とする湖北地域では、急性期医療の90%以上が地域内で完結しています。そこで、当院では質の高い地域完結型の医療を目指しており、それぞれの診療科で、大学病院等と比較しても遜色ない高水準の医療を提供できるように努めています。
また、コロナ感染対策の一環として、外来患者様の待ち時間を短くする為に、スマートフォンと連動するITシステムを利用し、可能な限りスムーズな対応をする努力も行っています。当然のことですが、接遇等も一つ一つ気をつける事で、出来るだけ多くの患者様に安心して、質の高い医療を提供できるように尽力しています。

滋賀県の湖北地域は、地域医療構想の重点支援地域に指定されています。地域の長浜赤十字病院、長浜市立湖北病院、セフィロト病院との一体的な連携を推進し、地域医療に尽力しています。急性期は当院と長浜赤十字病院が主に対応しており、それぞれの病院に得意な分野があります。例えば、災害医療や周産期医療は主に長浜赤十字病院が担当されています。一方、当院はがん診療連携拠点病院なので、がん診療や生活習慣病に力を入れています。当院と長浜赤十字病院は、必要に応じて相互に医師を派遣する等、連携を行っています。

このように病院同士が連携している事は、患者様や市民の方にさらに認知して頂く必要があるとも考えています。というのも病院同士で診療部門の棲み分けがなされている為、その病院にしかない専門の診療科が存在します。疾病の内容によっては病院間を移動しないといけない患者様も居ますので、連携している事を認知して頂ければ、安心して医療を受けて貰えると思っています。今後、連携に関する周知を更に加速できればと思っています。

この3年間はコロナ禍において直接顔を合わせる回数が少なかったのですが、当院では診療所、クリニックをはじめとする地域の医療機関・介護施設との連携を積極的に推進しています。医師会の会合には当院の最前線で活躍する医師を派遣し情報交換を行っています。近隣で開業されている先生方には長浜市立病院のOBの方も多いので、風通しも良くお互いの関係は良好だと考えています。連携を行う上で、院内で診療科を移動する際に診療情報が共有されないという事がないように特に注意を払っています。

働き方改革への積極的な取り組み

当院は働き方改革にも積極的に取り組んでいます。病院運営会議にて『B水準』取得という方針を決定し、その水準を満たすための計画を実行しています。当院は令和4年6月1日の時点で、28の診療科目を有しています。さらに、常勤の医師が99名、非常勤82名、歯科医師の常勤が3名、非常勤1名の医師数を抱えています。その中で、時間外・休日勤務時間が年間960時間以上の医師の人数は令和2年の時点で20名で、最長で年間1790時間の医師がいました。令和3年の時点で、見込み人数は20名と変わりませんでしたが、最長時間は年間1583時間まで減らす事ができました。人数が減っていない理由として、特定の診療科が忙しいという事があげられます。

例えば、当院の循環器内科は年間500件以上の心臓カテーテル検査を行っています。近畿地方でもトップクラスの件数をこなしており、循環器内科の医師は全員超勤年間960時間以上になっています。カテーテル検査の件数を減らす事は困難なので、装置の数を増やす等で対応していくのが最適だと考えています。設備投資の他にも、医療機器の保守、点検を行う臨床工学技士(ME)、医師事務作業補助者(DA)や看護師等の人的資源を増やすことも大切だと考えています。

当院は令和2年に、タスクシフティング検討WG、研鑽等時間外対象仕分け等WG、勤務時間検討等WGの3つの医師の働き方改革のワーキンググループを立ち上げました。従来のトップダウン形式の方法を取らずに、WGで医師が自ら、自分たちの働き方について考えて貰う、ボトムアップ形式の方法で活動して貰っています。というのも、超過勤務の削減は給与にも影響するので、現場の職員に考えて貰った方が最善だと考えたからです。一方、医師の働き甲斐にも関わる学会発表等は、病院としてサポートしたいと考えています。

令和3年には、医師が中心で行う診療局運営会議で、3つのWGにおける意見を元に話し合いが行われました。そして、同年に「医師労働時間短縮計画」が作成されました。現在はその計画実現に向けて行動している最中です。また医師以外の職種の職員には、安全衛生委員会に参加して貰い、その結果として、平成29年度に「医療従事者の負担の軽減及び処遇の改善に資する計画」を作成し、毎年見直しも行っています。診療局運営会議と安全衛生委員会は互いに情報を交換して連携を取っています。

医師のWGの具体的な活動をいくつかあげると、先ずはフレックスタイム制を導入しました。
医師に複数の勤務パターンから自分に合った勤務時間を選択いただいています。その他には『医師リフレッシュ宿泊助成事業』という制度を実施しています。帰宅時間が遅くなったり、出勤が早い医師に利用してもらっている制度で、市内の提携ホテルを病院の費用で宿泊できるようにしています。
よく言われるように測定出来ないものは改善できないという事があるので、出退勤の正確な測定も行うようにしました。その結果、打刻忘れの件数が多くあることが分かりました。打刻忘れの時間を申告制にしてしまうと、気を遣ってサービス残業をしてしまう医師も多いのではと考え、しっかりと打刻して貰うように周知しました。

また、時間外勤務の中にも項目をつけて入力いただく事で、その内容を把握し、改善に利用する為のデータとして情報を集めています。以前と比べると改善が進み、医師も積極的にWGに参加してくれていますが、代休をもっと取得してもらうことなど、課題はまだ存在しています。年毎に計画を細かく立てているのですが、一人一人が自分自身を見つめて、PDCAサイクルをしっかりと回していく事が大切だと考えています。

ERAS®導入と予防医療。病院のこれから

当院は令和4年から、術後早期回復プログラム(ERAS®)を導入する事を予定しています。ERAS®とは、慣習的な方法で術前・術後の管理をするのではなく、医療技術や知識をエビデンス(科学的根拠)に基づいて活用することで、患者の術後回復力を強化し、患者の術後経過を改善する方法として、スウェーデンをはじめヨーロッパ諸国で提唱されてきました。現在、スウェーデンにあるERAS®協会と協議を進めている最中です。ERAS®では、医師だけでなく、看護師やあらゆるヘルスケアの専門家がチームとなって一緒に患者様の管理を行います。その為、日本で古くから行われていた専ら医師が主導するような方法を改め、チームで物事を考える癖をつけないといけないと考えています。会議等でも、多職種の人の意見に出来るだけ耳を傾けるように心掛けています。

また当院では人間ドックや検診などの予防医療にも力を入れています。公的な病院で検診に力を入れている病院は少ないため、特徴の一つになっていると思います。地域医療という観点からも、市民のお役に立てていると考えています。先制医療の研究にも協力しています。
その例として、京都大学のゲノム医学センターの松田文彦教授が立案した、長浜市と京都大学の共同研究「ながはま0次コホート」では、市民の方、1万人に検診を受けて頂き、世界最大規模のとなる7000 人の客観的な睡眠時間、睡眠呼吸障害 ( 睡眠時無呼吸 ) と肥満の相互関連と高血圧・糖尿病の関連を調べた研究を行っています。当院では、検診業務の受託などを通じて、「ながはま0次コホート」にさらに積極的に協力できるようにして行きたいと考えています。また、当院は生活習慣病にかかわる専門医が多いので、ヘルスケア研究センターではその特性を活用しています。単に検診をしているだけではなく、そこで得られたデータを研究材料として、皆様にフィードバック出来るように努めてもいます。収益も大切ですが、それだけではなく患者様に質の高い医療を受けて頂ける為にも職員一同、邁進しています。

当院は「人中心の医療」を理念としており、職員と患者様がそれぞれリスペクトして、双方の満足度を向上できるようにしていきたいと考えています。最新鋭の医療機器導入を進めることに加えて、さまざまなチーム医療の仕組みを取り入れる事で、医療レベルの向上と同時に医師の働く意欲を向上させ、患者様にも最新の医療を提供する事が出来ると考えています。コロナ禍もあり、あまり顔を合わす事が少ない職員もいるので、チームカンファレンス等を行い、もっと職員が交流できる機会も作っていけたらと考えています。併せて、パワハラやセクハラを予防する取り組みにも力を入れています。お互いの事を思いやる意識を持つ事が大切で、こちらはチーム医療において大変重要な部分でもあります。今後さらに、職種間での業務の範囲を超える仕事を積極的に増やして、職種間での連携を深め、チーム医療を強化していきたいと思っています。