地域住民の方がいざという時に安心して通院・入院いただくことができる身近な病院でいられるように地域内完結型の医療提供を目指す小山記念病院様。ハード面の設備の充実やソフト面での人材の充実を両面で行いながら患者様の満足度向上を目指す池田 和穂院長に病院経営についてお伺いしました。
良質な医療の提供は当然のこと、地域に存在する一企業として雇用を維持し地域経済に貢献する
当院では<私は、心から患者様の身になって医療行為をいたします。>を理念にしております。民間病院は独立採算制ですので、社会インフラとして恒久的な医療提供を行うためにも健全な経営を目指して持続的な事業経営をしていく必要があると思っております。
当院は常勤、非常勤を合わせて600名以上の職員が在籍しておりますので、地元の企業の中では大きな企業に入ります。医療で貢献することはもちろんのこと、一企業として雇用を維持することと地域経済への貢献を目指して病院経営を行なっております。
職員を大切にしながら幅広い疾患に対応できる地域密着型の病院
当院が位置する地域では特に慢性的な医師不足が課題となっており、地域住民が実際に病気になった際に受診できる病院が限られている現状です。その中で、特定の病気のみ対応可能な病院ではいけませんので、診療科の幅が非常に広く多様な専門領域の外来を提供し、まず困ったときに相談することができる窓口としての役割を持つことで地域密着型の病院を目指しております。
私が当院に赴任した平成15年当時は診療科はそこまで多くなく、頭部疾患や急性心筋梗塞などは止むを得ず他の病院にお願いするという形になっておりました。その後人材の獲得に尽力し、現在は脳神経外科と循環器内科の常勤医師を確保することができたため、、急性期の患者様を転院搬送することなく対応できております。
医師不足の中で診療科の拡大に成功した要因としては、特定の大学などに限定するわけではなく少しでも協力していただけそうな箇所へ足を運び当院の魅力を伝えながら人脈を広げました。また民間の紹介会社も積極的に利用して、良い人材がいれば手段を特に問わずに確保する努力を行なったことだと思います。
人材獲得のため、当院の魅力である医師の働きやすさを伝えておりました。当院では各職種がどの程度満足しているかを職員満足度アンケートという形で定点観測しているのですが、特に医師の満足度が非常に高いという特徴があります。当院では医師事務作業補助者を積極的に活用し、医師でなければできない専門的な作業に注力できるように事務作業などは基本的に分担を行なっております。また、患者様とのコミュニケーションなどでトラブルなどがあった際には設置している医療相談室や医療安全推進室が代わりに対応するなど、病院全体でバックアップする体制を整えておりますので、医師だけが矢面に立つことなく働くことができる体制があります。これらの取り組みによって、何かしらのトラブルがあった場合には早めに報告いただくような文化があります。
競合は都市病院、人材獲得における課題と打ち手
高齢者の人口急増の中で、職員を適切に確保し育成することができるかが課題です。慢性的な医療従事者不足が地域課題としてあるため、即戦力だけを採用し続けるということは現実的ではありません。そのため採用だけではなく、入職いただいた後の教育も非常に重要です。
当院は高速道路を利用すれば東京駅まで1時間15分ほどでアクセス可能であるため、人材獲得の競合は東京の病院であるとも言えます。ですので、都心の病院と比較しても魅力がある病院でないと人材の獲得は困難であるといえます。そのため、待遇や福利厚生などの基準を都心の水準にあわせ、外国人の採用を積極的にするなどを行なっております。また、海が近く、釣りを始めとしたマリンレジャーが楽しめるなど、自然豊かな立地にあることも魅力のひとつです。
さらに人材獲得における施策としては、多様な勤務体制を容認しております。看護師を例にとると、全ての方がフルタイムで夜勤なども可能だというわけではありません。職員のライフステージなどを考慮にいれ、夜勤専門や時短勤務などを許容することによって、昼間働くことができる職員の確保を行なっております。
職員の確保を積極的に行い、層を厚くすることによって有給休暇の取得や長期休暇の取得も積極的に推進できるようになりました。
また、看護師に限った話ではありませんが、専門職の集団である医療従事者は休みが取りにくいというイメージがあります。だからこそ当院では、入職したばかりの職員も含め、分け隔てなく有給休暇の取得を推奨しており、長期休暇を推進するためのリフレッシュ休暇といった制度も整えました。さらに、体調不良の際にはすぐに申請し、休みが取れる空気を作っています。
なお、託児所や社宅を整備しているため、設備面においても多様な働き方を支援していければと考えています。
限られた医療資源を最大限に活用するために、持ちつ持たれつの地域医療連携を行う
当院では、幅広い分野での医療サービスを提供していますが、救急医療のクオリティをさらに高めていきたいと考えております。現在、年間約3000台の救急車を受け入れていますが、ここ鹿行保健医療圏においては年間約1万台の搬送件数があり、そのうちの35%は域外に搬送されてしまっていることが現状です。
当院の医療圏は南北に長いことが特徴で、平均搬送時間が長くかかってしまうのですが、域外に搬送すると約1時間ほどの搬送時間がかかってしまっています。救急において1時間という時間は非常に危険を伴いますので、医療圏外への救急搬送を少しでも減らしていきたいと思っております。
そのため、当院では救急外来を改装して、同時に受け入れることができる救急車の台数を増やせるようにしました。特に、脳神経外科、循環器内科、整形外科においてはホットラインを導入し、救急隊や近隣の医師から当該科の医師への直接連絡を可能にしております。これにより、病院の窓口を介さずに直接やり取りをすることで情報伝達をスムーズにして救急の受け入れ数を増やしていこうと思っております。
また、当院では『Join』を利用し、遠隔画像診断治療補助システムとして活用しております。院内でCTを撮影し、夜間の当直医師が専門医師の意見が欲しい際に院内の専門科の医師に個人情報を保護した上でタブレット上で画像を共有が可能です。これにより夜間の当直医が専門ではない患者様をも受け入れることが可能になっております。現状では近隣の急性期医療を提供している病院間でシステムを利用し、転院相談などもスムーズに行なっております。
近隣の開業医やクリニックとは、『地域医療連携の会』を開き当院のPRを行う機会を設けております。そのような機会で当院の対応可能領域と難しい領域を正しく伝えるようにしております。地域医療連携では信頼関係が非常に重要だと思っており、返書管理と内容にこだわっております。
クリニックから紹介いただいた場合には、患者様をお戻しする際に入院理由と処置内容、処置結果などを丁寧にご報告させていただいております。このような細かい施策によってクリニックとの信頼関係を醸成しながら、とにかく断らないことを目指し地域医療との連携を進めています。
また、近隣医療機関に実際に足を運び要望をヒアリングし、可能な限り要望を実現しております。紹介患者様の満足度を高めるため、紹介状をお持ちの患者様を優先的に診察するなどということを実施しております。
人材教育を徹底し、適切な評価を。離職率を10%以下に抑えた取り組みとは?
前述のように人材獲得が困難であるという状況が当院にはありました。人が少ないと病院運営を行うことは困難になるため、採用だけではなく離職率を抑えるために教育を徹底する環境を整備しました。患者様の満足度はもちろんですが、職員の満足度が低ければ良い病院にはなれません。職場環境の向上に取り組んだ結果、現在離職率は10%以下に抑えることができております。
職場環境の向上のため、当院では看護師の人材育成に関して『キャリアラダー』という制度を採用しております。こちらは職員の経験年数に応じた習熟度の目安を設定したものです。『キャリアラダー』を採用したことによって、職員の目指すべき目標が明確になり人材の質の向上につながりました。このことから別の職種にも横展開を考えております。
職員が努力した分を適切に評価することによって職員のモチベーション向上に繋がり、病院全体を活性化することも可能です。今後は『キャリアラダー』での達成度をうまく給与体系に組み込んでいきたいと考えております。
また部署間の連携をスムーズにするために各部署で全体が集まり、年に一度、目標発表会を実施しております。こちらは昨年度の課題と今年度の目標と方針を発表する機会で、他部署の目標を理解し部署間の連携を円滑にすることを目的としております。
コロナ禍において当院ではワクチン接種に協力しておりました。平日では数百人の対応を行なっていたのですが、毎週日曜日には約700名の患者様に対応いたしました。休日であるにも関わらず病院をあげて各部署が連携して取り組めたことはこのような施策の結果かと思っております。当時ワクチン接種が受けにくい状況でもあったため、こちらの取り組みに関して患者様から喜びの声を多くいただくこともできました。
人材教育によるソフト面での充実とあわせてITツールなどの利用によるハード面充実をはかる
当院では人材育成によるソフト面の充実にあわせて、ITツールを利用するなどハード面での充実化を図っております。その一環として、ユビーのAI問診を導入しております。こちらを利用することによって、初診患者様のカルテの充実度は非常に高くなりました。
薬剤アレルギーなどの情報は本来聞かなければいけないところですが、忘れてしまいがちなところでもありますので、こちらをきちんとヒアリングできているということはとてもありがたいと考えております。新型コロナウイルスの感染拡大後は、感染予防という点においてタッチペンとタブレットの消毒のしやすさには安心感がありました。
問診の繁忙時間帯に関してはタブレットの貸し出しが足りなくなることもありますので、今後はスマートフォンによる入力を患者様に推奨していく体制を整えていこうと考えております。
地域住民の信頼に応え続けることのできる密着型の病院であり続けるため、一歩先を読んだ病院経営を
今後は当院の魅力をよりPRをしていかなければと考えており、病院機能評価(Ver1.1)の認定更新を継続するなど第三者機関からの評価を獲得することに注力しております。また、基幹型臨床研修病院の指定を受けることによって若手人材の採用・育成を強化し、停滞することのない医療提供を行なっていくことを目指しております。
今後も、地域のニーズを取りこぼさないよう幅広い領域の医療提供を行なってまいります。決めたことを着実に実現するため、向上心を忘れず一歩先を読んだ病院経営を行なっていきます。
ユビーメディカルナビについて
ユビーメディカルナビとは、ユビーAI問診など複数のソリューションを総称する医療機関様向けパッケージです。
診察や受付業務の効率化や、患者さんからの認知向上など、さまざまな角度から診療の質向上を支援します。
ユビーAI問診について
ユビーAI問診は、患者様ごとにAIが最適な質問を自動生成・聴取し、
医師は問診結果を電子カルテに1クリックで転記することで業務効率化を実現するAI搭載のWEB問診システムです。