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『受診のしやすい病院』であることの長所と短所。幅広い患者様の受け入れと業務負担のバランスを取るための方法とは

千葉県

医療法人社団 誠馨会 千葉メディカルセンター

景山 雄介 院長

関東

『安全かつ質の高い医療を提供し、患者さんに信頼される病院を目指す』事を理念とする千葉メディカルセンター様。理念である『医療の原点』を忘れず、急性期病院でありながら紹介状を問わず患者様を受け入れる敷居の低さを特徴に持つ病院ですが、より幅広い患者様の受け入れを行うためには課題があるようです。課題解決の方針や経営に関するお考えを景山雄介院長にお聞きしました。

医療の原点に立ち返り、本質的な医療の向上を目指す

病院運営の責任者として大切にしていることは、『医療の原点』です。医療の原点の定義は人によって異なるとは思いますが、私は当院を頼っていただいた患者様に質の高い医療を提供し、回復をサポートすることだと考えています。
 
医療の原点を忘れぬよう職員には常々周知しております。提供する医療レベルが低いことで、患者様を受けられないということがあってはいけません。そのため、医療レベルの向上や、救急患者様を受け入れるための体制を整えています。

『受診のしやすい病院』であることの長所と短所

当院はJRの駅から徒歩五分の場所に位置しており、比較的大きな駐車場を設置しているということもあり、非常にアクセスの良い病院となっております。公立の急性期病院では、紹介状ありきで患者様の受け入れをしている医療機関も多々あるとは思いますが、当院はフリーアクセスにしており紹介状を問わず患者様を受け入れつつ、急性期病院としての役割を果たしています。
 
外来患者様は1日に約1000人ほど来院いただいており、新患者数は月に約2000人、このうち紹介状を持たず来院される患者様がほぼ半数です。急性期病院としては、患者様にとって受診のしやすさが特徴かと思っています。
 
一方で、患者様にとっての受診のしやすさは、医療スタッフにとっての負担にもなり得ます。今後の急性期病院の在り方として、入院患者様を中心とした経営体制にする必要を感じており、受け入れと業務負担のバランスを取るための方法を模索しております。
 
当院に長く在籍している職員の中には、外来患者様を診続けることが当たり前だと考えている方も多いのですが、それを続けているとどうしても職員のリソースは逼迫してしまいます。そのため、入院患者様を中心とする今後の急性期病院の在り方を職員にも説明し、急性期の治療が終了したタイミングで患者様を地域の開業病院などへ逆紹介をすることに理解を持っていただくように努めています。
 
地域の患者様の中には長年通院いただいている方もいらっしゃいますので、急に全ての患者様を逆紹介することは当然難しいのですが、継続的に意識づけを行なっていくつもりです。
 
より具体的な職員の業務負担軽減としては、医療補助スタッフを積極的に導入して、外来での補助を行い業務負担を削減しております。
 
業務負担を削減し、働きやすい職場環境の提供を心掛けていますが、やはり有能な職員の採用と定着が課題だと考えています。新型コロナウィルスの感染拡大という時期的な要因もあったかとは思いますが、本年は看護師の採用が例年のように上手く進まず、看護師の数が不足している状況です。
 
有能な職員の確保、定着は新型コロナウィルスの感染が収束した後の病院経営を見据えても非常に重要な課題です。
 
長年働いていただいている職員に、さらに長く働いていただくためには、業務負担の軽減のみならず働きがいのある職場環境を提供する必要があります。患者様や地域に貢献しているという実感をより強く職員に持っていただけるように、医療の質や教育を含めて体制の改善に励んでいます。
 

理念を実現するため、進める体制の構築

現在、当院では提供する医療サービスの専門性が高くなっている一方で、細分化している傾向があります。医療計画制度でのいわゆる5疾病のうち、がん、脳卒中、急性心疾患、糖尿病などに関しては、さらに専門性を伸ばしていきたいと考えています。一方で、明確に症状がわからない患者様を受け入れることの敷居が高くなってしまうことは避けたいと思っています。
 
高齢化社会において高齢の患者様が増加していく中で、さまざまな疾患をお持ちになって来院される患者様が今後さらに増えていくことが予想されます。新型コロナウィルスを発症している患者様が腕を骨折しているというようなケースも当然あります。その中で専門分野だけでは患者様の求める医療を提供しきれない可能性があります。
 
より患者様や地域に貢献し、働きがいのある職場を提供するためにも、今後は専門領域を突き詰めていくだけではなく、専門領域の手前にいる複数の疾患をもつ患者様にも適切に対応できる体制を作りたいと思っております。というのも、当院では急性期病院として多くの患者様を受け入れていますが、現状として総合診療科や救急科を設置しておらず各専門の科が総合診療を行いながら専門医療を行なう体制となっております。
 
そのため、救急車の受け入れ段階にて、専門外の疾患である場合に、医師が受け入れを断ることが稀にあります。現在でも月に400件ほどの救急車の受け入れを行なっていますが、地域により貢献するためには、救急車の患者様もなるべく断ることなく受け入れたいと思っています。
 
細分化された専門的な科も大切ですが、広く患者様の症状を診ることができる体制が必要であるため、今後は救急科を新たに立ち上げる予定です。救急科があれば、複数の疾患を持つような患者様が来院されても、疾患の判断から専門科への引き継ぎをスムーズにすることができると考えています。
 
より幅広い患者様の受け入れを行うために、受け入れの判断をする医師に対する意識づけも同時に行なっています。意識づけによって受け入れが増加している面もあるのですが、医師の入れ替えなどは毎年のように発生しますし、医師ごとに救急の受け入れに関するモチベーションの源泉は異なります。当院ではそれらを踏まえながら、病院としての方針を明確にした上で、継続的な意識づけを行なっています。

ポストコロナを見据えた病院像

2024年に適用となる「時間外労働の上限規制」を中心とした医師の働き方改革が2年後に迫っているため、それらの対応に対しての関心を強めています。
 
当院スタッフの残業時間は、平均すると労働時間の上限規制である年間960時間内に収まっているのですが、急性期病院ということもあり残業時間には個人に偏りがあります。医師の技能はどうしても属人化する傾向がありますので、専門領域の治療において特定の医師の業務時間が増えてしまうため、残業時間を均一化することの難易度は高いと感じています。
 
事務的な業務や外来患者への診察などに関して医療補助スタッフの導入をしておりますが、医師の中には業務を任せることに不安を感じる方もいるため、科によって業務補助内容に違いがあり、業務の均一化はまだ実現できておりません。業務の均一化は医療補助スタッフのやりがいにも繋がりますので、実現に向けて尽力していきます。
 
また、ポストコロナ時代の経営を見据えて逆紹介の推進と、救急医療にさらに注力していきたいと思っています。そのためには地域医療連携をさらに強めていくことが必要です。地域医療連携を進め、逆紹介を推進することによって、院内のリソースを最適化し救急医療の領域にリソースを投下できる体制構築を目指していきます。