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福山市民病院(広島県)

広島県

福山市民病院

中国・四国

病院経営として重要なポイントは?強みはどうやって作るのか。

病院として絶対考える必要があるのは、収支の部分です。人の命を扱ってると言っても、やはりお金がないと人も雇えないし、新しい治療の導入もできないので、そこをないがしろにしている病院はむしろ健全でないと思います。当院も強みをどう活かすかということを考えて経営しています。

広島と言っても福山市は県東部に位置し、医師や看護師が潤沢に集まる訳ではありませんので、当院だけで全てを担うのは無理があります。地域全体でどうやって助け合っていくのかと言うことを考えていきたいと思っています。全ての病院が急性医療を行なってwinner takes allの世界になるのか。それとも各病院ごとに役割がある関係を築けるのか。

病院だけの関係性ではなく、大学とのコミュニケーションも重要になってきていますので、人のリクルーティングの面でも地域連携は重要です。

総合病院としての役割をどうやって果たしていくのかということも日々考えております。来院患者数などのデータから、医療需要をマーケティングに活かしていくのも重要ですし、地域全体に活かしていく。とはいえブランディングに繋がる必要がありますので、強い部分は投資を続けていき、弱い部分は他の病院に任せるような構築が重要と考えています。ただ考えているものの、中々弱いところも自分たちでやろうとしてしまうのが公的総合病院の悩みでもあります。

ワンフロアの重要性と、コミュニケーションと情報共有の違い

当院の魅力は、医者同士の垣根が低い点だと思っています。百人以上が一つの医局におり、ワンフロアで顔が見えるのはかなりコミュニケーションに影響していると考えております。

最近はセクショナリズムが流行っているように見受けられますが、人を細かく分けてしまうと交流は生まれません。手術にしても、患者さんの症状によっては複数の科が協力して治療を進めることもあります。

狙ってワンフロアにしていた訳ではありませんが、いつの間にか根付いた文化でもありますので、よりコミュニケーションが生まれるような病院作りは積極的に行いたいと考えております。

もちろんコミュニケーションだけでなく働きやすさと言う点にも目を向けていかなければなりません。患者満足度の高さは医療の質に比例してきます。ただ、患者の満足度=働く人の満足度とはなりません。「働く人の満足度、離職率、笑顔で働けるかどうか。」と言う点は意識して見ておりますし、働く人の満足度が上がることで、全体の集客能力向上や真のチーム医療にも繋がると考えています。

ここまでコミュニケーションの重要性を語らせていただきましたが、このコミュニケーションというのは、情報共有ではありません。IT化が進んで誰もがスマホを持つ世の中なので、チャットでの連絡は簡単に行えます。

ただITを活用した共有というのは、本当の共有にはなっていないと私は考えており、少なくとも週に1回はチームで顔を合わせて話す場を設けていきたいと思っています。

もちろんITツールは便利ですし効率化になる部分もありますので、一概に全てダメとは思っていません。

働き方改革と救急医療のバランスの難しさ

前述しましたが、ITツールを無視した働き方改革というのはできないと思っています。

しかし、画面のみを見て動いてしまうとAさんもBさんも同じ内容を確認していたりだとか、蓋を開けてみると業務が増えている場合もあると思っています。スマートな業務改善を上から声を上げて行うのが重要ですし、日々動くような細かいポイントでないと本当の業務改善には繋がらない、PDCAも回せないはずです。

とはいえ、まだ当院も実施できている訳ではないので、本当に言うは易く行うは難しですね。

また、働き方改革と救急医療の兼ね合いには常に頭を悩ませています。湯水のように人も財源もあるのであれば実現可能な部分もありますが、もちろんそんなことはありません。ただ、救急医療は病院の収入源としては非常に重要なので、どの病院でも簡単に切り離すことはできないと思います。医療のあり方としても、救急を受け入れるのは使命ですしね。

国が見据えているのはもちろん短期的な部分だけでなく、日本の人口が1億人をきった先を見据えての施策を打ち出しているのだとは思います。ただ、高齢者の人口が数十年でそこまで大幅に減る訳でもないため、しばらくは医療需要は今と変わらないか今以上増えている可能性の方が高いです。

そうなったときに生産年齢人口が減っていくと、働き手が不足していくので、今と同じ医療のあり方では破綻する可能性が高いと思います。

日本全体としての医療の方向性

国が実施する施策は、浸透すれば医療全体が変わるものも多いです。5年以上前から始まっている電子処方箋やマイナンバーもそうですね。しかし、個人情報の問題をあまりにも厳しく見すぎてしまうと中々重要なデータを手元に置いておくというのはハードルが上がってしまいます。

データに関しても、「責任を民間が持つ。」ということになってしまうとやはり病院側でも導入が遅れてしまいますので、ある程度のセキュリティなどが担保されていれば、「国が責任を持つ。」くらいで推進した方が一気に普及すると思います。

また、マイナンバーなどは日常でまだまだ使う場面もありませんし、その場面をどれだけ作り出せるのかが普及の大きなポイントですし、前述した電子処方箋なども普及すれば薬剤師の無駄な業務も大幅に減り、これこそ働き方改革にも繋がるはずです。

このように、根本として働き方改革に繋がる部分を国と協力しながら進めていく体制を作っていきたいと考えています。新しいものを導入する際は費用もかかりますし、それを国に支えてもらいたいと思っています。

データに関しても、最近は個人情報を気にしすぎて集まりにくいと言われていますが、日本人の根は勤勉です。ちゃんと社会の制度などとして導入すれば想像以上のペースでデータも集まると思います。

必要な点には新しいツールを活用することが重要ですし、費用もかけるべきだと思います。ただしそれだけでは医療費の問題など解決できません。そこは日本全体で医療のあり方が大きく変わる点だと考えており、これまでは治す医療に力をいれてきましたが、予防とコントロールの医療に変わっていかなければなりません。

他にも電話ではなくネットで予約できるようにするなど、簡単にできるところから進めていきつつ、医療のあり方を地域、ひいては国で見直すことができれば、この国の医療もよくなっていくと考えています。

人が、本当に人でないと出来ない仕事をする。そんな世界に近づけるよう、日々努力を惜しまずやっていきたいです。