患者さんに最適な医療を届けるために取り組んでいること
病院経営の基本として4:3:2:1というのがあります。支出内訳を表すものですが、4割は人件費、3割は医薬品等の医療材料費、2割は水道光熱費等の管理販売費、そして1割は収益です。当院もこの法則に従って10%の収益を確保できるように頑張っています。
職員の福利厚生を充実させることも大事ですが、10%の収益を確保する最大の目的は、病院を清潔にきれいに保ち、最新の診断機器、治療機器を積極的に導入していくためです。地域のトップランナーとして新しい治療法を取り入れていく必要もあります。これまでもガンマーナイフ、ペット検査を他に先駆けて導入しましたし、MRI, CT機器も最新・最良のものを常に導入してきました。優れた医師を高報酬で迎える必要もあります。繰り返しますが、これらを実行するためには10%の収益を確保する必要があるのです。患者さんファーストの観点からは至極当然のことです。
医師をはじめとして医療従事者は利益の面だけを強調しても誰も付いてきてくれません。患者さんのために、どう有益なのかという、医療の原点に立ち、職員に訴えていくことで職員全体が一つとなってより良い病院を目指すことができるのです。
とはいえ、新しい機器や治療法を導入すると、高価な医療機器を導入するよりも職員の給料や福利厚生を考えるべきといった意見もでてきます。新しい技術の導入にはそれなりのリスクもあります。ここはバランスだと考えております。現場の意見も取り入れつつ、最大限患者さんのためになる選択ができるよう日々努力しています。
信頼される地域支援病院として
当院の特徴として、24時間365日、断らない医療を続けています。先に述べたように、最新鋭の機器治療法を取り入れ続けることで周辺の医療機関からの信頼も得、紹介も増えています。紹介しやすい環境作りというのも重要だと考えています。周辺クリニックとの関係を親密にするため、年に数回学術集会を企画し、現場の若い医師を連れて各クリニックに挨拶に行くように主任部長にお願いしています。
また、DPCの係数を意識しているわけではないのですが、結果的に特定病院(DPC2群)に入った理由としては、とにかく良い医療を目指し続けたことが大きいと思います。クリニカルパスも利用できるものは利用し、適切なかつ効率的な医療を意識しております。患者さんの早期退院を実現するためには後方病院の役割も重要ですので、地域病院との連携を強固に築けていたのは良かったと思います。
このような活動を行えるのも、十分な数の医師、看護師、スタッフがいてくたからです。やはり人材が一番重要です。大学医局との関係を有効に保ち、リクルート会社を利用して優秀な医師を集め、患者さんには絶対迷惑をかけないように努力しています。
救急に力を入れる創業者の想いとは
当院は、創業者の想いが強く反映されている病院だと思います。数十年前、夜間の救急患者さんは、受け入れてくれる病院を探し回ることも起こっていました。創業者が『このような状況はいかん、これでは助かる命も助からない』といい始めたのがこの病院の原点になります。ですので、夜間の患者をたらいまわしにしないような医療を続けるのが我々の義務だと考えており、今でもその想いは病院の文化としてスタッフの間に強く残っています。夜間救急以外にもCTやMRIの当日対応―その日の内に撮影、読影することも意識しており、何度も検査のために外来受診するようなことがないようにしています。このような患者ファースト的な考え方と最新医療に常に取り込む病院の方針が広まってか、今では遠方から来院していただく患者さんも増えてきています。
医療現場の働き方改革を実現するため
働き方改革の目的は、医療者の過労死を防止することと、長時間労働による注意力の低下による医療過誤の発生を抑止することです。職員、特に医師の働き方改革を成功させるためには、医師数を増やすことですが、これには当然限度があります。むしろオンとオフがはっきりした働き方に変えることが重要と考えます。タイムカードによる勤怠管理システムの導入、医師も労働者でありシフトワーカーであるということを自覚させる、勤務時間中は集中する、時間が来れば帰宅する、といった労働者として当たり前のことを認知させねばなりません。急性期病院の当直は勤務と同等ですので、当直明けの勤務は原則禁止です。当院では勤怠管理もスタートしており、院長以下、全員タイムカードで勤務時間をチェックするようにしています。労働時間に関しては、毎週データを集め各診療部長からメンバーの管理を徹底させ、働きすぎという状況は起こらないように注意しています。
また、タスクシフティングにも積極的に取り組んでいます。外来の各医師、各病棟にメディカルクラークをつけ事務作業の効率化を図っています。医師が患者さんの目を見て問診できるようになりました。その他にも診療看護師を採用して、ICUや手術場で裁量権を持って働いてもらっています。現在心臓血管外科に配属していますが評判は上々です。