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東都春日部病院(埼玉県)

埼玉県

東都春日部病院

木村 理 院長

関東

184床の中規模病院として、地域クリニックや大学病院などと連携して春日部エリアの医療を支える東都春日部病院。2020年の1月時点からいち早く院内のコロナ感染対策に取り組むなど、社会の動きやニーズを素早く察知し、それに対応した医療を提供されています。木村 理院長に病院として大切にしていることや、経営における持論などについてお話いただきました。

職員が一丸となることが最も重要。そのために院長が率先して情報共有に取り組む

当院が最も大切にしているのは、職員が一丸となって戦うという気持ちです。そうした気持ちをみんなが持てるよう、院長として情報共有とコミュニケーションを重視しています。
そのために取り組んでいることの1つが「院長モーニング会議」です。毎朝、看護部長・事務長・事務顧問・必要に応じて副院長、医局長と私で、患者さんの入退院から細かなことまで情報を全部共有し、私からの意見も伝えるようにしています。それと別に、月1回職員全員を集めての昼礼もおこなっています。昼礼では、例えば最近だとコロナが今どんな状況にあって、院長としてどういった考えで対応しているのかなど、私自身の言葉で職員全員に訴えかけるようにしています。
こうしたことの積み重ねによって、私の就任当初よりも情報共有や意思疎通ができ、職員が一丸となって行動できるようになってきたと感じています。

医師や看護師、栄養師など職種を超えて連携する文化が根付いている

当院は184床という中小規模の病院なのですが、医師と看護師の距離が近く、情報共有や連携がしっかりできていることが特徴です。何かあるとすぐに医師がナースステーションに来て情報を共有し、看護師もすぐに付いていって対応してくれます。
このことは医師と看護師だけでなく、栄養師や放射線技師などもそうで、例えば医師と看護師がリハビリのある患者さんの食事について悩んでいると、栄養師がすぐに来てくれて「この患者さんは今何キロカロリー食べているから、補助食品をつけてみましょう」などの形で、すぐに参加してディスカッションできます。それぞれの職種を超えて連携し合える文化は、私の就任以前から根付いている当院の大きな長所だと思います。

コロナ対策には早期から着手。院内整備も職員の心の準備もできた上で受け入れ開始

当院は日本で最も早くコロナ対策をした病院の1つだという自負があります。私の記憶では、2020年1月16日昼頃に「日本で1例目の新型コロナ感染患者が発生」というニュースが出たのですが、その日の夕方には「感染から病院を守るように」と職員に警告を出し、翌日17日には職員を集めて臨時の感染対策委員会を開いていました。その時点ではみんな何のことか分かっていない様子でしたが、私は2009年に大学にいた際に新型インフルエンザ感染対策委員長及び感染制御部長を担当した経験から、2019年の中国の感染状況を報道で聞いていた時点で危険を感じており、1月16日のニュースで「これは、春日部周辺まで感染が広がるかもしれない」と思いすぐに対応したんです。さすがにここまで世界的猛威を振るうとは予想していませんでしたが、当時安倍首相が中国武漢から邦人引き上げのチャーター便を出したのは1月22~24日頃でしたし、横浜のクルーズ船での感染が話題になったのも2月3日頃からだったので、それよりも早く動いていたのは確かです。
3月の初めには院内でテレワークを推奨し、患者さんの電話対応も始めました。初めはみんな慣れるのに大変だと言っていましたが、そうしている間に国内でも感染が増え始めたんです。8月には院内会議はほぼ全てズーム会議でできるようにし、なるべく人が集まらないで仕事ができる環境を整えました。このように早い段階から、「感染を院内に入れない、院内でクラスターを起こさない」というのを一番に考えて、院内感染対策や病室の整備を進め、職員のワクチン接種も進めました。
その上でコロナ患者さんの受け入れを開始したので、感染対策ができた上でシームレスに受け入れをおこなうことができました。特に職員の心の準備ができていたので、コロナ受け入れに関して意見が割れたり、それで離職する人がでたりということもなかったです。

社会のニーズに合わせてできることをやっていく、木村理の『はとバス理論』

経営に関しては、私の持論として『はとバス理論』というものがあります。本来、都内観光用のバスである「はとバス」ですが、コロナ禍になった当初は観光客が減って経営が厳しくなっていたそうなんです。しかし、ワクチン接種が進む現在では、集団接種会場に人を移送するのに使われ大活躍しています。このように、その時その時の社会のニーズを察知して対応していくことが重要で、それは病院経営も同じです。
現在のコロナ禍において、当院は重症患者さんを診られるICUがあったり、呼吸器内科の専門医がいたりするわけではありません。しかし、軽症や中等症で苦しんでいる患者さんを診ることはできますし、味覚障害で苦しんでいる方に栄養師が食べられる物を考えたり、中和抗体カクテル(抗体カクテル療法)をおこなったりすることはできます。そうやってニーズに対応して最大限できることをやること、地域の患者さんに病院を使っていただくことが、病院経営においても非常に大切だと考えています。

残業時間は抑えられているが、研究や学会参加などとの線引きは今後の課題

職員の働き方、残業時間に関しては、看護師はほぼ残業せずに勤務できています。医師は少し人数が足りていないので、どうしても残業しないといけない場合もでてきますが、それでも大学病院などに比べるとかなり少ない残業時間に抑えられている状況です。そのため、医師の働き方改革で今後規定される残業時間でも、問題なく範囲内に収まる見込みです。
とは言え私自身、勤務時間外は一切病院のことをしないわけではなく、休憩時間に論文を書いたり、土日に病院のパンフレットを作ったり学会・研究会・理事会に出席したりということはしばしばあり、もう癖としてそれは残業時間と考えなくなっているという面はあります。同じように、残業時間に計上していないが、研鑽や研究に自分の時間を使っているという医師もいると思います。医師というのは診療だけをしていれば良いわけではなく、研究や学会への出席などで情報をアップデートしていかなければならない仕事です。それらの活動を残業とするか、自身の勉強と捉えるかは、当院に限らず医療業界全体で線引きが曖昧になっているところで、働き方改革で残業時間を規定するだけでは解決は難しい問題ではないでしょうか。
ただ、最近では学会にリモートで参加できたり、シンポジウムに現地参加しなくても会費を払えばオンデマンドで一定期間アーカイブ動画を視聴できたりと、デジタル化によって自分の時間に合わせてそうした活動ができるようになってきています。もちろん対面で会う良さや、そうでないと話せないこともありますが、コロナ禍でそうしたデジタル化が医療業界でも進んだことは、医師の働き方の面でも良いことだと思います。

大病院や地域のクリニックとの間で理想的な地域医療連携を実現できている

地域医療連携に関しては、看護師2人・社会保健士1人・事務1人の計4名が「地域連携室」として稼働してくれています。地域のクリニックや施設と連絡をとって療養患者さんを受け入れたり、逆に当院では治療が難しい患者さんをより大きな病院にお願いするよう連絡してくれたりしています。医師自ら受け入れ先を探すなどしなくても、彼らがやってくれるので非常に助かりますね。
また、当院で受け入れた患者さんは離さないわけではなく、患者さんの状況や費用に応じて、他の病院をご紹介するなど、臨機応変に受け入れができています。当院は透析部門や療養部門があるので、そうした患者さんは積極的に当院で受け入れたり、大規模な大学病院などで回復期になった患者さんを当院に引き取ったりもしています。大規模な病院、小中規模の当院、地域のクリニックと、それぞれのできることを互いに理解して、それぞれの役割に沿って患者さんを紹介し受け入れる。そうした、地域連携の見本のような形が実現できています。
もちろん、消化器外科学、肝胆膵外科学などわれわれ専門の得意な領域の疾患については、10時間もかかる高難度手術でもどんどん施行しております。今後も社会や地域のニーズに合わせ、当院でできることを最大限にやり、地域医療と連携しながら皆様のご健康に貢献していければと考えております。