1939年「横須賀海軍共済病院追浜分院」として創設され、終戦を迎えてからは地域に貢献をしてきた横浜南共済病院様。横浜の南部、逗子、葉山、横須賀の北部地域の医療を担い、地域を愛し、地域に必要とされる病院を目指してきました。地域住民への健康のサポートや治療は当然の事ながら、QOLの向上、心の支え、そして高齢化社会を踏まえた地域の活性化に役立ちたいという理念を掲げ病院経営を行う長岡 章平院長にお話を伺いました。
地域の方々だけではなく、職員も満足する。全ての人に愛される総合病院
当院は歴史のある総合病院であるという背景からも、多くの診療科が揃っています。32の診療科があるため、患者さまがどの様な症状で来院されても幅広く対応することが可能です。病院経営の方針としては何か特別な事をするのではなく、病院全体で一枚岩になり、地域に貢献する方法を模索し、地道に一歩ずつ邁進していきたいと思っております。
最近の取り組みでは、「花プロジェクト」というプロジェクトを計画しています。地域の町内会や小学生達にご協力いただき花壇を作ることです。花を育てることによって、患者さんや職員に四季を感じながら院内での生活をより豊かに過ごしていただくことを目指しております。
また、当院は今まで地域住民や患者さんを念頭に置いた理念を掲げておりましたが、患者さんの幸せと同等に職員の幸せも大事であると考え、職員満足度を内包した理念へと刷新しました。
職員の満足度を高めるための取り組みは、職種間や診療科間における不公平感を無くすことです。当然、職種による上下はないのですが、医療という専門領域の特性上、なんとなく医師が偉いというような雰囲気が院内に漂ってしまうことはよくあることです。そのような思い込みを払拭し、全ての職種を尊重する意味を込めて、職員表彰制度を新たに実施しました。
職員表彰制度は、目立ちたがる職員や自己主張の強い職員ではなく、自分の仕事にしっかりと取り組み、真面目にコツコツ頑張っている職員や患者さんに寄り添っている職員を、全職員が投票することによって選考する制度です。年に一度、投票数の多かった職員を表彰しています。
去年表彰されたのは看護職員、看護助手、保育士、事務の職員でした。受賞者にはクリスタルの盾と記念品の他に、毎年異なる副賞を併せて贈呈しております。表彰を始めてからは、自らの職種以外への職員に関心を寄せる職員が増え、職種間の隔たりがさらに緩和されたように感じます。
より良い医療を提供していくためには、お互いの気持ちを考えあうチーム医療が非常に大切です。職員間のコミュニケーションをよりよくしていくため、私自身も毎年約1300人の職員全員に感謝の気持ちを込めた手書きのクリスマスカードを贈っています。
職種間の不平等感を取り除き、働きがいのある職場環境を作る
当院は今までは経営面を重視し、設備や待遇などに関して医療点数の高い診療科を優遇する傾向がみられました。しかし、診療報酬のみに着目して、医療点数の高い診療科のみに様々な優遇措置を取っていくと、どうしても職種間や診療科間での職員の不平等感が生まれてしまいます。その結果、優遇されていない職種や診療科における職員の意欲を削ぎ、結果として病院全体としてマイナスな影響が出てしまいます。
必要のない診療科や職種はありません。したがって、診療科や職員間の不公平感が出ないようにする事が大切です。一見すると黒字経営と結びつき辛い施策ですが、幸い私が院長に就任してからは黒字経営を維持することができており、新型コロナウィルスの感染拡大以前の病床利用率は93-95%です。
また、職員間による福利厚生での公平感を継続する取り組みも行なっております。当院では今まで、医師においては、専門医や認定医となるための費用や、学会の参加費は研究費として予算が出ていたのですが、その他の職種の職員は個人でスキルアップの費用を賄っていただいているという状況でした。
現在は、看護師、専門薬剤師、管理栄養士、事務職員のキャリアアップおよびスキルアップに繋げるための研修費用を病院が負担しています。
さらに、院内保育園の設置や育児休暇の支援などにも注力を行なっております。
2年程前からこれらの制度を開始した結果、看護職員の転職に特化したリクルートの「働きがいのある病院ランキング」において、今まで圏外だったものが、昨年初めて51位とランキング圏内に掲載されました。全国8000以上の病院がある中でそういった評価をいただき、非常に嬉しく思います。さらに、人材不足などで規定通りに運営が出来ない病院も多い中、看護職員の離職率は神奈川県でも低い基準を保てています。
地域に根差す病院としての医療連携への試み
当院ではホームページに患者さんが近隣のかかりつけ医を探すことができる検索ページを設置するなど、地域の医療機関との連携を促進するための施策を継続的に行なっております。
その一例として、当院と連携している近隣病院や医療機関をつなぐ『ネットワーク』という機関紙を年に3,4回発行しています。『ネットワーク』の発行は医療連携の必要性が強く認識される以前の2001年から現在まで20年以上継続して発行しております。『ネットワーク』では当院の最新の医療情報、診療科の特徴や研修の案内などを紹介しています。さらに登録されているクリニックの紹介もしています。
また患者さま用に4~5ページのリーフレットを外来に配置しており、どの様な疾患を当院や連携している医療機関が専門で診ているかなどの内容を患者さまへ発信しています。
これまでは、近隣病院の医師に向けた講演会を数多く行ってきましたが、数年前からは「地域包括支援センター」や「地域ケアプラザ」に当院の職員が出向き、地域の方々の希望に沿った内容の講演会を実施することで、医療関係者だけではなく地域住民へも積極的に情報を提供しています。
地域の方に愛されるには、相互理解が不可欠です。地域の病院としてきちんと認識してもらう為には、地域住民の声にしっかりと耳を傾けるのが大切だと思っています。コロナウィルス蔓延によって、対面のコミュニケーションは殆どなくなりましたが、今はオンラインを利用して、Webで講演会を開いています。厳しい状況が続いていますが、出来る限り病院として地域の方々や近隣病院とのコミュニケーションを絶やさないように努めています。
院長が目指す病院のこれから
当院は病院機能として、神奈川県の災害拠点病院や癌の診療連携指定病院、地域医療指定病院、日本医療機能評価機構認定病院、救命救急センター、臨床研究センター、神奈川県のDMAT指定病院、大学病院に準ずる機能を有する「DPCの特定機能病院群」の指定を受けるなど様々な役割を担っています。
さらに、医学教育の側面では各診療科の専門医や認定医の研修教育病院、臨床研修医の指定病院という側面も持っております。これからも引き続き、持たせていただいている役割を全うすることは当然のこと、地域の医療機関と上手く連携を図り、さらに質の高い医療の提供を行うことで、地域医療に貢献していきたいと考えています。
また、職種間や診療科間の公平感を継続することによって、職員全員の働きやすさを意識した職場環境の最適化を進めていき、患者さまと職員の幸せを追求していきたいと思っています。
ユビーメディカルナビについて
ユビーメディカルナビとは、ユビーAI問診など複数のソリューションを総称する医療機関様向けパッケージです。
診察や受付業務の効率化や、患者さんからの認知向上など、さまざまな角度から診療の質向上を支援します。
ユビーAI問診について
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