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医療法人 和会 武蔵台病院(埼玉県)

埼玉県

医療法人 和会 武蔵台病院

河野 義彦 理事長

関東

働き方改革を進めながらも地域に根ざし、患者さまに対して門戸を広く開いている医療法人 和会 武蔵台病院さま。患者さまだけでなく働く人々の幸せを願い様々な施策を行う当院の病院経営や今後の目指す姿を河野義彦理事長に伺いました。

患者さまにはもちろん、職員にも優しい病院を目指す

当院は埼玉県の西部にあり、東部に比べてかなり人口も減少傾向の土地です。2040年には地域の人口が30%減少してしまうという推計が出ており、職員の確保は非常に難しくなってくることも予想されています。 

医療介護の質を高く提供し続けるには、職員にとっても居心地の良い病院を目指す必要があると考えて、患者さまにはもちろん職員にも優しい病院を目指して働き方改革を掲げて、DX化やタスク・シフティングを推進しています。

「和」の心で。地域完結型の医療サービスを目指す

当院は『「和」の心で地域の人々に安心安全な医療を提供する』という法人理念を掲げており、地域の健康意識を高めるための取り組みを数多く行なっております。

当院に来院される9割の患者さまは地域の方です。足腰が弱くなってしまった高齢の患者さまには地域完結型の医療介護サービスは提供価値が高まると思っています。

地域完結型の医療介護サービスの必要性が高まった際に、当院のことを認知していただけなければ良い医療を提供することができないため、認知していただくためにも市民講座である武蔵台健幸塾を開催しております。 

緊急事態宣言の発令後、このような取り組みの開催回数はどうしても少なくなってしまったのですが、久々にお会いした患者さまが巣篭もりによる生活習慣で体力が減少していることを目の当たりにして、改めて取り組みの必要性を感じオンラインセミナーツールのZoomによって再開しました。

当然、地域の方の中にはITツールに慣れ親しんでいる方は少ないため、開催は大変だったのですが、地域の方からは再開を喜んでいただきました。また、YouTubeやLINEにても健康意識を高めるための情報発信を行なっております。これらのITツールを用いて少しでも地域の方々を勇気づけるような取り組みを行なっていきたいと思っています。

患者さまの安心のため、地域医療連携の取り組み

地域医療連携も地域に根ざした病院には非常に重要な要素だと考えております。当院は大学病院が近隣10キロ以内に2つあるという特徴を持っていますので、重症の患者さまには、そちらへ速やかにご紹介することを行なっています。逆に先方からこちらの転院依頼があった際には特に条件を付けずに柔軟に受け入れを行うことを心がけております。
 
具体的には、発熱の症状がある患者さまには新型コロナウィルスの特性上すぐに病院に受け入れができない状況があります。こちらに対応するべく、『ID NOW』という15分以内でPCR検査が行える感染症遺伝子検査システムを導入して素早く新型コロナウィルスの検査を行い、受け入れを判断する体制をとっております。

未曾有の自体にも提供可能な医療介護の体制を目指す

現状の当院の課題は、BCP(Business Continuity Plan=事業継続計画)の作成です。新型コロナウィルスの感染拡大もそうですが、近年は今まで出会ったことのないような未曾有の出来事が頻発しています。地域でも川の氾濫や落雷による停電などの災害を経験しました。このような予期せぬ事態が起こった際にも、医療介護の提供体制を失わないためのBCPの作成を進めています。

BCPの作成には優先順位と職員の納得感が必要だと考えておりますので、それらを意識した作成を行なっております。現在コロナに関してのBCPの骨格はできており、今年中に災害に対してのBCPの作成を進めております。

 今後の対策としてBCPの作成を進めると同時に、現在直面している新型コロナウィルスへの対策も徹底しております。一通りの感染症対策は当然のこと、職員の感染症への意識を高めることを心掛けております。感染症委員による勉強会を月に一度開催すると同時に、チャットツールを用いて地域の1日の感染者数や、感染症に対する新しい情報を職員に日々発信しています。

もとより、職員一人ひとりの感染症への意識が高いという背景もあったのですが、これらの施策によって、2021年9月現在で約300人の職員中1人もP C R検査にて陽生者を出さずに運営ができております。

職員にとっていかに魅力的か?を問い、進める働き方改革

当院では3年前から働き方改革を法人目標として推進しています。労働人口が激減する地域でもありますので、新型コロナウィルスへの対応を行いながら慢性的に地域が抱える問題にも対応していこうと職員へ周知しております。

 質の高い医療介護を提供し続けるためには、職員にいかに魅力的な職場であるかということを実感していただくことが大切だと考えています。そのためにもハード面では、院内に職員が集まることができるラウンジを新築したり、地域外の方が快適に暮らしていただくために寮の拡大を行なっています。

ソフト面では職員自身への評価を把握していただけるように制度を刷新しました。人事評価ツールなどを導入して、職員の評価ポイントやフィードバックポイントを開示することで、人事評価のブラックボックス化を防ぎ、納得感を持って働いていただけるような制度を運用しております。

また、勤務体制に関しても働きやすさを重視して体制変更を行なっております。これまで外来では週6日の勤務体制でしたので、少人数の部署では休みを取れないという声がありました。このような課題を解決するため、1日あたりの患者数に偏りが出ないことをゴールとして、週休2日に勤務体制を変更しました。外来の混み具合や医師ひとりあたりの患者さまの対応数のデータから来院数をシュミレーションし、患者数や職員の再配置を行いました。結果的に休日数を増やしたにもかかわらず、外来の患者数は増加し効率を高めることに成功しました。 

常勤医師の数が5名と99床の病院としては少ないため、医師のパフォーマンスを最大化するためにタスク・シフティングに関しても積極的に行なっております。厚労省が開示した、タスク・シフティングに関する資料を参考にし、タスク・シフティング可能な項目を定めました。タスク・シフティングを実現するために職員の職務領域の意識改革を行い、タスク・シフティングを実施しております。具体的には、今まで医師が行なっていた患者さまの再来院日程の調整や、電子カルテの代行入力などを医師事務作業補助の職員へタスク・シフティングしております。 

看護師の負担軽減に関しても取り組みを行なっています。患者さまのバイタル情報などを、以前はナースステーションへ戻った後に記録していましたが、ベットサイドにて記録できるように体制を変更しました。さらに、回診の時間を一定にすることで、回診の際に看護師が医師に同伴せずとも良い体制にして移動時間の効率化を図っております。

進行が予想される地域課題への対策としてのDX化方針

3年前から行なっている働き方改革ですが、まだ至っていない部分も数多くあります。一例をあげると、介護老人保健施設では、まだ手書きで記録の管理を行なっております。こちらに見守りシステムを導入して改善していこうと考えております。各ベッドサイドに見守りシステムを配置し、センサーを利用して夜間巡視やなどの業務を効率化していこうと考えています。

最終的にはできるだけ少ない人数で、精神的にも肉体的にも負担が少なくオペレーションできる現場の構築を2040年にむけて作っていこうと思っています。高い投資にはなるとは思いますが、将来の労働人口の減少という課題を見据えて改善していきます。またそれらの投資へ資金を割けるような財務体制の構築もあわせて進めていきます。 

地域の方々が困った時、来院いただき『地域に住んでいてよかった』と思えるような病院を目指し今後も病院経営を行なっていきます。