障害者病床52床を持ち、難病患者や重度の障害を抱える患者様の受け入れを積極的に行う二日市徳洲会病院様。徳洲会として「断らない医療」の実現を目指し掲げました。地域医療連携だけでなく、地域住民との交流も行い、地域の窓口としての役割を目指す、今嶋達郎院長にお話を伺いました。
障害者病棟を持つ病院の「断らない医療」
当院は後継者のいない個人病院を引き継いで始まりました。当初は一般内科を中心とした52床の病院でしたが、徳洲会として、どこに主眼を置くかを考えた結果、「断らない医療」の実現を掲げようという事に決定しました。もちろん近隣の急性期病院も「断らない事」を主眼において患者様の対応をされていました。そこで、通常の急性期病院では対応しきれない患者様に対する「断らない医療」を提供しようと考え、難病の方や重度の障害を持つ患者様の入院を受け入れが可能な、障害者病床52床の形態を取る病院へと変化しました。その結果、近隣の急性期病院は救急医療に邁進する事が可能になり、当院は地域の中でも特徴を持つ病院となり、地域医療の棲み分けに貢献出来たと考えております。
当院の障害者病棟は難病や重度の合併症を持つ患者様を受け入れていますが、その中で、小児の患者様を含めた対応をしている点も特徴としてあげる事が出来ます。子どもの入院設備というものは、超急性期の大学病院クラスに該当する施設にしかなく、成人で言う亜急性期や慢性期にあたる病院がありません。急性期での治療後に年単位で待機しても、次の行き先が見つからないようなお子様もいます。昨今では在宅での訪問診療や訪問看護といった体制も整いつつありますが、まだまだ十分ではありません。当院では、そういったお子様の受け入れ先として、在宅医療に切り替えるまでのご家族のトレーニングを兼ねて、救急病院や基幹病院ではケアしきれない部分を担っています。
また、当院では『レスパイト入院』という形で、在宅での看護、ケアが困難な時の短期間入院や、小児患者様のケアをお手伝いする事も行っています。2007(H19)年に障害者病棟を開始した頃、低酸素脳症のお子様を在宅で治療したいという親御様のご要望があり、その小児患者様の受け入れを行ったのが最初でした。あらかじめ小児患者様用の病床数を決めているわけではないので、柔軟な対応ができるようにしています。現在、障害者病棟の中で、0歳から100歳までの患者様全てのケアを行っています。
昨今では、医療的ケア児(NICU等に長期入院した後、引き続き人工呼吸器や胃ろう等を使用し、医療的ケアが日常的に必要な児童)に対する様々な補助が増え、受けられる支援も多くなった一方、入院より在宅での医療が必要になる場合があります。その中で、親御さんが悩みを抱え込んでしまうケースや、支援や情報が届かないケースが問題になっています。
当院では、かかりつけ医の機能を持つ地域病院と連携し、医療的ケア児と暮らすご家族の事情やリフレッシュ目的での入院先として当院を紹介をして頂けるようにしております。ベットの数を増やすのは難しいですが、患者様の為に何とか対処出来るように心がけています。
風通しがよく患者様と向き合う。病院の魅力と課題
当院は救急病院ほどの慌ただしさはなく、刻々とした変化に対応するというよりは、じっくり患者様に向き合う体制である為、自分のペースで仕事ができる特徴があります。徳洲会という大きな組織の中で働けるという安心感も魅力の一つだと思います。
職員数が80名程度と少なく、風通しも良い為か離職率は低く保たれています。福岡県のベッドタウンという、人の集まり易い地域に立地しているため、採用については現状困ることは少ないです。一方で若い医師の採用は難しく感じており、ある程度経験もあり専門分野を扱う医師が足りていないのが現状です。また、離職率が低いのはいいことですが、一方で職員の高齢化が進みつつあります。そのため、次世代の育成をいかに行うかが今後の課題になっています。
病院内外を問わずに行う地域医療連携と地域交流
当院の属する地域の二次医療圏内には地域医療支援病院が3つ存在し、済生会や大学付属病院もあります。どの病院とも逆紹介、紹介といった形で連携を行っています。近隣には、同程度の規模の民間病院もあり、一般診療はそちらと連携も可能です。従って比較的連携は上手くいっていると思います。
近隣の済生会の病院がリーダーシップを持ち連携を推進してくれている事、当院の病院としての機能の分かり易さが連携が上手くいっている要因だと考えています。地域における病院の事務長がコロナ禍以前から気軽に情報共有できる会合を立ち上げてくれていたので、連携先の病院とはそこで意見交換を行っています。
当院では、訪問看護や在宅医療の提供は発展途上です。全ての工程を院内で完結させることは困難ですので、今後は在宅の医師等と連携を取り情報共有を行っていく事で、訪問看護や在宅医療提供の強化、推進を進めていきたいと考えています。また、医療関係者以外との地域連携も積極的に行っています。古い街ということもあり、当院の医療圏ではシャッター商店街が多く存在しています。そのような状況を改善するために街おこしに取り組んでいる団体があり、私自身もその団体に所属しています。
残念ながらコロナ禍の影響で、集まり辛い状況が続き、病院も忙しい状況の為、なかなか参加しきれてはいませんが、出来るだけこうした活動にも参加することで医療関係者以外の地域住民とも関係性を作り、病院から離れた場所での情報交換の機会も大切にするよう心がけています。
病院内でも地域住民の方々との関係性を築くための活動を実施しております。以前、地域の子ども会と連携して、クリスマスイベントを行いました。お子様にサンタクロースの服を着てもらい、当院を含め近隣病院の患者様にクリスマスカードを配ってまわるというイベントです。お子様が手渡したクリスマスカードに涙を流して喜んでくれる患者様もおり、非常に良い取り組みができたなと実感しました。
他にも歌や運動会で練習したダンスを披露していただいたりと、地域の子供会とは継続的な関係性ができていたのですが、残念ながら現在はコロナ禍であるため中断してしまっています。以前のような活動が1日でも早く再開できる事を願っています。
徳洲会グループとして。一つの病院として
働き方改革の具体策として挙げられるものは少ないですが、徳洲会グループの取り組みとして、医療安全等の重要なテーマについて職員全体で研修を行い、情報の共有と理解を促すような機会を毎年設けています。
病院単体で資料を揃えて、テーマを見極める事は難しいですが、グループ全体の情報発信と共有を行う機会があるのは良い事です。具体的に「このテーマについて学んで欲しい」など病院として学びの機会を促進することができているように感じます。また、グループ全職員が参加する、クオリティマネジメントの大会も開催されており、全国にある様々な病院の提案内容を見る機会があります。そのような機会から知識や知見を得て、病院に還元するような仕組みを作っていければと考えています。
徳洲会を更に良い組織にする為に努力を惜しまず、職員達にも魅力を実感してもらえるよう尽力したいと思っています。また、徳洲会という組織の傘下に入っている性質上、徳洲会全体としての試みが多く、組織に頼ってしまっている所もあるので、より一つの病院としての特色も出していきたいと考えています。
病院の規模と形態から出来ない事も多々ありますが、まずは地域の窓口として、できる限りの事をしようと思っています。地域の窓口となりやすい健診については、コロナ禍で受け入れを控えていた施設や病院も多いですが、当院ではしっかり感染対策を行った上で健康診断の受け入れも積極的に行っています。このような試みは今後も継続的に続けていくつもりです。
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