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明朗会計を心がけて患者様に安心を。多角的な視点を持ち、小さな実績を積み重ねることで実現する時代に合った病院経営とは。

西予市立西予市民病院

末光 浩也 院長

中部

市民の皆様に最も愛される病院となることを掲げ、地域全体での高度な医療の提供体制を構築することを目指す、西予市立西予市民病院さま。明朗会計を常に心がけ、職員の経営意識の向上を促す末光浩也院長に病院経営に関するお考えを伺いました。

時代にあった病院経営を行うため、多角的な視野を

西予市立西予市民病院は、「地域の病院として人を大切にし、安心と信頼の医療を提供する病院」であることを理念に掲げ、病院経営を行なっております。

医療に関する国の方針決定が早くなっている近年、地方の病院ではより時代にあった経営をしていく必要があると考えております。そのような考えから、経営コンサルタントに参画していただき、具体的な意見をいただきながら病院の経営方針を見直しています。

経営コンサルタントに参画いただくことで、院内で話し合うだけでは見えてこなかった、収益性の高い部門や低い部門、他院と比べた当院の強みや弱みを再認識しながら病院経営を行うことができております。
経営の意識は、院長の私だけが持っていればいいというものではありません。職員一人ひとりの経営者意識が重要だと考え、年度の経営方針を周知しているのですが、コンサルタントに参画いただいてからは、各部において経営方針をより具体的に落とし込むことができるようになったと思っています。

市民の皆様に最も愛される病院になるため、積み重ねる努力

開院時に市長に要請いただき、私が院長に着任してから、今年で当院は7周年目となります。開院の際には、市民の皆様に一番愛される病院になろうと考え、市民の皆様との繋がりを感じることができるよう病院の名前を一般で公募したり、地元の美術協会会員が寄贈くださった25作ほどの絵画を院内に飾らせていただきました。

さらに、地元の木材を廊下の腰板や病院の入口などにふんだんに利用したり、個室に障子を使うなどして、入院している患者さまにはできるだけ自宅で治療をしているような気持ちになってもらうように心掛けました。

開院後も地域住民の方に認知いただくために、市の広報誌に疾患の紹介や職員の紹介などを行うためのページをいただいております。患者さまは病院職員の仕事内容をご存知ないので、親近感を持っていただくためにも職員の仕事紹介などの連載を行っています。

また地元のケーブルテレビなどにも出演し、病気のことやコロナワクチンの話、脱水症状の危険性などの時宜にかなった情報を発信しています。新型コロナウイルスの感染拡大後は開催できておりませんが、病院祭も開催しておりました。

病院経営は、何か一つの施策で、経営規模が大きく増えるということなどはなく、実際は小さなことの積み重ねです。患者さま一人ひとりを大切にし、丁寧な医療を提供することによって、市民の皆様に愛される病院になっていきたいと考えております。

明朗会計を心がけ、患者さまに安心を

病院経営に関しては入院数、一人当たりの医療費単価を指標として重視しております。さらに、明朗会計であることも意識しております。

医療行為を行うと当然費用が発生しますが、行った医療行為に関して適切に費用をいただかないと、長期的に良質な医療サービスを提供していくことができなくなってしまいます。

しかし公的医療機関である市立病院の職員の中には、それらの意識が希薄な方もいらっしゃいます。自分の行なった医療行為のどこからどこまでが医療報酬になるかという教育は、基本的に医師にも看護師にもされていない事が理由の一つかもしれません。職員が多い大病院であればあるほど、このような問題は発生するのではないでしょうか。

時代の変化によって医療行為における費用の発生箇所は変化するため、それらをきちんと把握していないといけないため、職員へ周知することが必要です。個々のスタッフがきちんとその意識を持つことは難しいと考えておりますので、各部署に医療秘書を設置し過不足のない明朗会計な請求を患者さまにできる体制を整えております。

地域医療連携のため、進める医療情報ネットワーク

地方では高齢化が進んでいるため、当院でも入院患者の方のほとんどが高齢の方になっています。病院だけでケアするのではなく市や行政、福祉との連携を進め、地域全体で行う医療サービスの提供が、より必要になってくると考えております。

地域医療連携のために当院では、「せい坊ネット」というネットワークを令和3年7月から運用しております。「せい坊ネット」は、当院と野村病院の両市立病院にある患者さまの診療記録(電子カルテ)を、両市立病院や「せい坊ネット」に登録している医療機関の医師が閲覧できるシステムです。

こちらの医療情報ネットワークを利用することによって、ご利用いただいている病院は逆紹介や患者さまの経過観察が容易になります。

こちらを利用して、近隣病院と患者さまの紹介をよりスムーズにしていきたいと考えております。島根県では「まめネット」という医療情報ネットワークを県が中心となって取り組んでいるようです。今後、「まめネット」のように全県で展開していきたいと考え、近隣病院に働きかけております。

働きやすい職場づくりのために進める人材採用

地方の病院全体にも通じるとは思いますが、当院でも医師不足、看護師不足、医療従事者不足が深刻な課題です。

だからこそ、医療従事者にはより働きやすい職場を提供していく必要があると考えております。奨学金制度や、認定看護師となるため資格教育などを取り入れたり、院内保育や病児保育を設けて働きやすい職場づくりを目指しております。

医師に対しても働きやすい職場づくりを行おうと、まずはタイムカードで勤務状況を管理する事で時間外労働の把握を行いました。医師は業務上、緊急の処置が必ず必要になってくるため、時間外労働を完全になくすということはできません。そのかわり、時間外労働に対してきちんと残業代と手当を出せる体制を整えました。

さらに、外来の医師には全て医療秘書をつけ、診断書の記載などのタスク・シフティングを進めております。時間外労働の多い職員に関しても、きちんと把握し、原因の解明ができるようにしております。
医師の数が多い都会の働き方改革の手法を、地方でそのまま展開することは非常に困難だと思っております。地方では病院数自体も少なく、急患の搬送が集中することもあるため、やはりスタッフの確保は大変重要です。働きやすい職場作りをするためにも、働き方改革と並行して、スタッフの確保をしていく必要があると考えております。

満足はないからこそ、改善し続ける病院経営

地方では病院も医師も数が少ないため、個々の病院が持つ責任は大きくなります。例えば近隣に位置する愛媛県の南予地方は救急病院が少ないということもあって、救急搬送が困難な地域になっています。当院では救急医療の崩壊を食い止めるためにも、救急の患者さまは全て受け入れ、出来る限り当院で医療を完結させるという方針を持っております。

そのような方針を評価いただいたのか、昨年、救急医療功労者の知事表彰を受賞させていただき、今年も救急医療功労者の厚生労働大臣表彰をいただきました。

病院経営に満足はないと思っております。新型コロナウイルスの感染拡大でも分かるように、将来何が起こるかわかりません。地域医療の中核病院として職員一同、また行政とも一体となって今後も良質な医療を提供していこうと考えております。