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急性期からお看取りまでを幅広くカバーする中核病院。予防・急性期〜回復期医療・看護の3つを確実に実践していきたい

千葉県

医療法人芙蓉会 五井病院

加藤 良二 病院長

関東

予防・急性期〜回復期医療・看護の3つを確実に実践し、千葉県市原二次医療圏の中核病院として、地域のニーズに応えられてきた五井病院。常勤医師数が少ない中、救急隊との連携や医師の獲得により、現在は特に急性期医療の向上に努めています。加藤 良二院長に、病院の取り組みや今後の展望についてお伺いしました。

●どのような患者さんにも全力で応えることが、医療者としてのあるべき姿

当院の基本理念は、安心できる中核病院であること、地域に貢献する医療サービスを提供すること、そして、気軽に来院できるファミリーホスピタルであることです。これらを実現するために、当院のスタッフには日頃から、医療人としての自覚を持って医療にあたってほしいと考えています。
医療者にとって患者さんとは助けるべきものであり、すべての患者さんに応えることが前提です。ですから患者さんに相対したときは、「できません」「専門ではありません」などと言わずに、「先ずは、すぐにやれることをやりなさい」と指導しています。専門でなければ、目の前の患者さんを救うために自分でできることをやり、何が必要か勉強するのが医療者の務めだと私は思います。
そうした意味で、現在国が進めている働き方改革には疑問を感じています。私たちの仕事は人を救うことであって、儲けるために働いているわけではありません。にもかかわらず、医療者が働くことを一般の企業と同じ枠で考えてしまっては、現実にそぐわない部分が出てきてしまうのではないでしょうか。もちろん、当院のスタッフが働きやすい環境を整えていくことは、重要な課題の1つではあります。そのための取り組みを進めつつ、病院としてあるべき姿も同時に追求していくべきだと考えています。

●急性期から療養までを網羅し、市民から頼られる病院でありたい

当院の大きな特徴は、急性期から療養まで総合的に担っている点です。当院のある市原二次医療圏には、帝京大学ちば総合医療センター、千葉ろうさい病院、千葉県循環器病センターと、基幹病院の役割を果たす大きな病院が3つあります。しかし、これらの基幹病院と地域の患者さんとをつなぐ中核病院は、多くはありません。そのためあらゆる診療科を網羅し、救急からお看取りまでを幅広くカバーすることで、市原市民の皆さまが心から安心して頼れる病院であることが、当院のミッションです。
私が4年前当院に赴任した当初の市民の印象は、患者さんのお看取りを担っている病院であるとの認識でした。そのため、受け入れた患者さんの多くが亡くなる病院であるとの誤解を受けたこともあります。もちろん病院でのお看取りを希望される患者さんやご家族の意向もあることから、その役割も大事であると思っています。しかし、当院では救急車を受け入れて、適切な急性期医療を行い、回復期リハビリテーションを終えて退院するまでの適正な医療をカバーしている実績があります。そのような経験から、患者さんの安心のためには、当院がおこなっていることや当院の役割を正しく認識いただけるよう、発信に力を入れていくことも重要だと感じました。
実は、新しく開設した老人ホームの中に会議室を備えているんです。今後はその会議室を有効に活用し、市や教育委員会などを巻き込みながら、公開講座や啓発活動などを積極的におこなっていきたいと考えています。コロナ禍という現状もありますし、そういった活動で、地域の方々の健康に対する不安を少しでも払拭していきたいです。

●ベッドコントロールと、忙しい科や病棟で働くスタッフのモチベーション維持が課題

経営上重視している数字は病床稼働率です。当院の患者さんには高齢の方も多く、平均在院日数はどうしても長くなりがちです。DPC(診断群分類包括評価)対応の急性期病院では、平均在院日数が長くなればなるほど、病院の収益は下がってしまいます。ベッドの回転率を上げることも必要な施策です。しかし当院はDPC対応ではありません。急性期一般病床と、期限の限られた回復期病床、地域包括ケア病床、長期入院も可能な医療型療養病棟と様々な患者さんが入院されています。全ての患者さんに対して、一律に対応できないことが悩ましいところですね。
もう1つ課題だと感じているのが、スタッフのモチベーションの維持です。当院は救急から療養まで広範囲にわたり対応しているため、看護師数が10対1や15対1で稼働できる病棟もあれば、ICUのように5対1、7対1でなければならない病棟もあります。当然、5対1に対応する看護師の方が業務負担は大きいです。救急外来や緊急の入退院、手術に対応するスタッフは忙しく、療養型病棟を担当するスタッフと比較すれば、ストレスや疲労度はより大きくなります。
業務負担の偏りがある状態で、負担の大きいスタッフのモチベーションを維持していくのは難しい問題です。現状は手当などの待遇面で対応していますが、それも限界があります。今後は、人員配置を上手く回していったり、医師や看護師の採用に力を入れるなど、別の施策も必要になってくると考えています。

●市原市で12年ぶりに救急救命士の挿管実習を再開。急性期医療に力を入れる

当院が今最も力を入れているのが救急です。具体的な取り組みとしては、行政と連携し、市原市において12年間休止されていた「救急救命士の気管内挿管実習」を、当院にて再開しました。挿管実習を終えた救急救命士は現場に到着した際、患者さんが息をしていなかった場合、ドクターからの指示があればその場で挿管することが可能になります。いち早く挿管し人工呼吸と心臓マッサージを開始すれば、それだけで患者さんの生存率は格段に上がるんですね。
当院で実習を再開するまで、市原市内で挿管をおこなえる救急救命士はわずか3名でした。当院には実習を担う麻酔科医が1名しかいないため、体制を整えるのは大変ではあります。しかし、挿管ができる資格をもった救急救命士が増えればそれだけ、より多くの患者さんが助かります。今後も継続して実習を担えるような体制を、しっかりと整えていきたいです。
同時に救急隊との連携を強化し、徐々に救急車の受け入れ件数を増やしています。私の就任以前は30%台だった当院の謝絶率(救急要請を断った数の割合)は、現在10%台まで下がっています。謝絶率0%を目標に今後も進めていきたいです。また、現在月8日しか対応できていない夜間救急も、最終的には(夢ですが)毎日対応できるようにしたいですね。

●働きたいと思える環境を整え、地道なコミュニケーションで医師にアプローチ

当院の常勤医師数は20名以下と非常に少なく、医師数増加は今後必須の課題です。医師採用の施策としては、千葉大学を始めとして、近隣の帝京大学ちば総合医療センターや千葉ろうさい病院、また東邦大学医療センター佐倉病院などと連携を密にして、派遣から少しでも多くの常勤医師が確保できるよう務めています。
また、当院に勤務する医師が、患者さんのためにやりたいことなら何でもチャレンジできるよう、バックアップする体制にも努めています。制限をかけた医療を医師にはさせたくないという考えからおこなっているのですが、そうした地道な努力が実を結び、当院常勤医師も少しずつ増え、対応できる疾患も増えてきています。
ただ、やみくもに人数を増やすのではなく、当院の理念や求める医師像に合致する人材を選ぶことが重要です。日本には専門医制度が存在していますが、「特定の疾患にだけ通じていれば専門医だというわけではない。それは単なる専門馬鹿」と私は考えます。医師の仕事は、どのような患者さんでも対応しなければならないことです。まずある程度の診療科を網羅した上で、得意分野に特化しているのが本来の意味での専門医であると思います。そうした考えから、まずは当院の外科から、どのような患者さんでも診られる「一般外科医」を育てることも目標にしています。

●子どもや若い世代向けのスポーツ医学施設も立ち上げ

今後は、当地域の高齢者だけでなく、若い世代に対しても貢献できる病院を目指しています。市原市は子どもたちのスポーツが盛んな地域で、ジュニアのサッカーチームや野球チームなどがたくさんあります。そこで、当院の高齢者向けリハビリのノウハウを活用し、子どもや若い世代の支えとなれるよう、スポーツ医学のドクターが在籍するジムのような施設を立ち上げます。主にスポーツで故障してしまった体を治し、未来ある若い人たちが再起を図る場所です。ただ病気やケガを治すだけではなく、もう一度思いっきりスポーツをやりたい、そういった若い人たちの想いにも応えられる病院でありたいと思っています。また、将来的には指導医を置き、他の病院の医師たちが、当院でスポーツ医学の研修を積める体制も整えていきたいです。

また、急性期への対応力もまだまだ上げていきたいですね。病院経営の観点から言えば、回復期、療養型に注力するほうが安定して利益を出していけます。しかし、「すべての患者さんに応えられてこそ、真の医療」という理念から考えて、やはり急性期にもしっかりと対応していかなければならないと思います。これらの取り組みをしっかりと進め、今後も地域医療を支えていきたいです。

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