病院長ナビロゴ
地域の救急医療の「最後の砦」として、熱意と誇りを持って地域医療に貢献するのアイキャッチ画像

地域の救急医療の「最後の砦」として、熱意と誇りを持って地域医療に貢献する

東京都

公立昭和病院

上西 紀夫 病院長

関東

東京都小平市にて、90年以上にわたり地域の方々の健康に貢献されてきた公立昭和病院。北多摩北部地域をカバーする地域中核病院として、高度専門医療と救急医療を中心に幅広い医療を提供されており、地域において無くてはならない存在となっています。病院経営に対する思いやITを活用した業務の効率化、今後の課題など、さまざまな角度から上西 紀夫(かみにし みちお)院長にお話しを伺いました。

地域の救急医療の「最後の砦」として。

公立昭和病院は、東京都小平市にある医療機関で小金井市、小平市、東村山市、東久留米市、清瀬市、東大和市、西東京市の7市で構成される「昭和病院企業団」が運営する500床規模の大病院です。当院に課されたミッションは、がん診療や心不全・脳血管障害、小児周産期医療などの高度・急性期医療を安全に遂行し、市民と患者さんの負託にこたえること。あらゆる領域の重篤な救急患者に24時間体制で適切な医療を提供する、いわば“地域医療の最後の砦”としての使命が求められています。
この地域では唯一の三次救命救急センターを構えており、幅広い診療を行っているため、「地域のために頑張りましょう」という心持ちだけでなく、「熱意と誇り」を持って地域医療に貢献することを目標に掲げています。

また、診断や治療だけでなく、地域の診療所や地域住民に向けて、積極的な情報提供や啓発活動、医療連携を実施しています。地域医療連携という面では、平成25年から当病院のある北多摩北部地域の42病院と5つの医師会による連携会議を構成し、年2回の各種勉強会や、総会として医師以外の職種も含めた講演会や交流会を行っております。コロナ禍により直接の交流は持ちにくくなっていますが、新型コロナ患者さんへの対応として、急性期治療を終えた患者さんの受け入れ依頼や、回復期のリハビリ対応のスタッフが不足しそうな時に近隣病院から派遣をしていただくなど、コロナ禍においてより密な連携を行うようになっています。

また、地域住民の方への取り組みとしては、子どものアナフィラキシーショックの啓発活動を、近隣の小中学校と連携して行っており、小中学校での有事の際には、ホットラインで当院へ連絡するという連携体制も確立されています。また、消防隊員や救急隊員を対象に救急蘇生訓練等も当院で引き受けております。
今後も当院の活動や状況を市民の方、近隣の医療機関の方にご理解いただくよう、広報誌やホームページを活用した情報発信を積極的に行っていきたいと考えています。
この地に根ざして93年。より高いレベルで地域住民へ安全・安心をお届けできるよう、努力してまいります。

ITを活用した業務の効率化への取り組み

当院では、業務の効率化と負担軽減を目的に、iPadを用いた業務のIT化を進めております。たとえば若手ドクターの当直中であっても的確な診断ができるよう、ベテラン医師との情報連携を行っています。具体的には、ベテラン医師のiPadにCT画像や検査データ等の情報を飛ばし、院外からベテラン医師がスムーズに指示出しを行える環境を整備しました。従来は電話で行っていた指示出しが、iPadを用いて画像や資料を参照しながら行えるようになったことで、より具体的かつ迅速、適切な救急診療が可能になったと感じています。

また、AI問診の利用も徐々に進めております。外来での診療をより効率化し、それにより創出された時間で適切な治療方針を立てることがAI問診導入の最大の目的です。AI問診の導入により、問診にかかっていた時間を削減し、より患者さんとしっかりとコミュニケーションを取ること、また有意義な情報提供を行う時間を増やすことができるようになりました。患者さんとドクターの両者にとってメリットがあると感じています。

現在当院では、特に循環器内科、消化器外科、整形外科のドクターが積極的に利用しております。実際に現場の声を聞いていると、問診にかかっていた時間を削減できているだけでなく、ドクターからの伝達漏れや、患者さんの症状の聞き洩らし防止にも役立っているようです。看護師の負担軽減にもなっているため、今後は他の科でも徐々に導入していければと考えております。

スタッフ同士のコミュニケーションを活性化する、職員への取り組み

院長として心がけていること、それは現場スタッフとの積極的なコミュニケーションです。私は、スタッフの満足度を上げることが、患者さんの満足度を上げることに繋がってくると考えています。当院には感染症科の医師が多く在籍しておりますが、この度のコロナ禍において、彼ら感染症スタッフが中心となり、院内の感染症対策を実施しました。毎日、対策チームが各病練を周り、清潔な院内状態が保たれているか隅々にわたってチェックしてもらっています。そして、ただ実施してもらうだけでなく、実施結果レポートが私のPCに届くようなシステムにし、内容に合わせて感謝とエンカレッジの気持ちを適宜伝えております。また看護師長を個別に招集してヒアリングを行ったり、各種のカンファランスに参加したりと、現場との情報交換は欠かせません。

また、当院には1000人以上の医師、看護師、事務スタッフなどが在籍しているため、誰がどのような仕事をしているのか、どのような気持ちで勤務しているのか、お互いに分からないといったことが多くありました。そのような人間関係の希薄さを解消すべく、コロナ以前は、年に1回、スタッフ同士のコミュニケーションを図る目的で、レクリエーションイベントとして玉入れ競争を実施していました。毎回400人前後の病院スタッフが参加し、違う部門のスタッフ同士チームを組んでゲームに臨んでもらうことで、普段は関わりの少ない人との会話機会が生まれ、院内の雰囲気がさらに良くなったように感じます。

また、半年に一度「ベストスタッフ賞」の発表も行っております。看護師やドクター、スタッフなどいくつかの職種に分け、各職種内で「ベストスタッフ」を推薦してもらい、スタッフみなさんの前で発表するという取り組みです。このように、スタッフに少しでも「働き甲斐」や「働きやすさ」を感じてもらえるよう、小さな取り組みを積み重ねております。

看護師の離職率は5~6%

当院の「働きやすさ」が読み取れる指数のひとつに、看護師の離職率の低さが挙げられます。東京都における新卒看護師の離職率が11%~12%と言われている中、当院は5~6%と低い数値を維持しています。のちに判明したことですが、看護師の口コミサイトにおいても働きやすさにおいて支持されていることを知りました。現在は離職率も低く、若い看護師さんからの採用応募も多数いただいている当院ですが、実のところ、以前は「働きやすい」と言えるような環境ではありませんでした。病床稼働率は90%以上、常にあわただしく、看護師さんを新規募集してもなかなか人材が集まらない状況が続いていたのです。しかし、8年前の病院建て替えを機に、病床数の調整を行い、7対1の看護体制を取りました。それに加え、今まで以上に「看護師さんを大事にしよう」という院内の雰囲気づくりも心がけました。実習生への積極的な声掛けや、認定看護師の資格習得支援、手厚い教育体制を整備しています。現在では、先輩看護師だけでなくドクターにも、さまざまな教育に携わってもらっています。その結果、徐々に離職率が改善し、今では募集の3~4倍の新人看護師さんに応募していただけるまでに変化しました。

人間ドックのリピート率70%。病院の集客手段にも。

新型コロナウイルスにより、外来の患者さんは減少傾向にありましたが、一方で人間ドックに来られる患者さんの数は増加傾向にあります。今まで都心で受診されていた方がリモート勤務になり、都心にわざわざ出向く必要がなくなったためや、コロナ感染を避けるため、当院で受診していただけるようになったのです。また、それらコロナの影響により、ただ単に初回受診が増加しただけでなく、好評をいただき、多くのリピーターの獲得に成功することができました。院長としてリピーター獲得のために取り組んだことは大きく二つ。一つ目は「質」の向上です。当たり前ですが、人間ドックに来られる方は、保険診療ではなく自由診療で高い費用を支払い、受診に来られています。そのため人間ドックエリアについては特に内装にもこだわり、無料の飲物をお出しするなど、特別感を感じていただけるような内容にしました。スタッフにも、より一層の手厚いサービスと接客を心がけるよう指導し、受診者お一人お一人が安心してご満足いただけるような環境を整えております。二つ目はオプション内容の充実です。子宮がん検査や乳房エコー、前立線がんなどの各がん検査を始めとし、経鼻内視鏡検査や、脳ドックにおける頭頸部MRI検査など、幅広いオプションを充実させています。中でも特に好評なのが骨密度検査です。当院を受診される方々はご高齢の方が多いため、多くの方々にお申込みをいただいています。
現在では、人間ドックのリピート率は70%に達しました。人間ドックで初めて当院を受診し、それがきっかけとなり、その後の保険診療でも当院を利用していただけるようになった事例も多数あり、病院としても新しい患者さんにお越しいただくツールとして、人間ドックが重要な役割を担っていると感じています。

病院として目指すべき姿

地域住民の皆様から信頼していただくためにも、引き続き診療内容をさらに深め、よりレベルの高い高度・急性期医療を提供できるよう努力してまいります。
今後も地域医療の最後の砦としての誇りと責任、熱意を持って質の高い医療を提供していくとともに、地域住民の方々により当院のことをより知っていただくためにも、情報発信や地域貢献、啓発活動は今後も強化していきたいですね。