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公立病院として先進的な治療法を率先して取り入れ多職種によるチーム編成で質の高い医療を実現

愛知県

愛知県精神医療センター

高木宏 院長

中部

愛知県の精神科医療の中核として、専門外来のほか、精神科救急医療などに取り組んでいる愛知県精神医療センター。持てる資源と知識と技術を総動員し、疾患や障害からの患者さんの回復をお手伝いすることを理念としています。平成30年に新病院の建設が完了し、より先進的な治療や患者に優しい環境が提供されるようになりました。今回は高木院長に、大切にしているチーム医療や、新病院改築で重視した点、コロナ禍での院内感染ゼロを実現した取り組みなどについて伺いました。

●早期の社会復帰で 患者様の明るい表情を取り戻す

当院は、患者様にできるだけ早期の退院を促すことを一番大切にしています。精神科は、元来病院でしっかりとリハビリテーションを行い、それから地域に戻ってもらうという流れが長年続いていました。皆さんの中にも、「精神科患者は長く入院している」というイメージがあるのではないかと思います。しかし、病院の中でのリハビリテーションではなく、地域の元の環境の中でリハビリテーションを行っていく方が、うまく病気をコントロールできるということが示されてきております。単身生活の患者様も施設に入っている患者様も、退院された後外来でいらした時には、病院にいた頃と全く違う良い表情をされているんです。そういったお顔を拝見する度に、早期退院を促す方針にして良かったと感じます。


●先進的な治療法を取り入れるのが 公立病院の使命

病院経営の観点では、患者様がある程度長期入院されていた方が、経営は安定します。ですから、患者様を早期に地域へ戻していくというのは、運営上は厳しいことなのです。しかし、私たちは公立病院として、経営第一ではなく理想的な精神科医療を目指すことが使命だと思っています。

その使命を果たすためにも、精神科の先進的な治療法を積極的に取り入れることにしています。一つは、クロザリルという薬剤です。一般的な薬剤が効かない患者様に使用する薬剤で、使用率は県内でもかなり上位に当たると思います。もう一つは、修正型電気痙攣療法。通電して痙攣を起こし症状の改善を図るという、薬剤が効かない患者さまに施す治療法です。愛知県内では最も治療実績があるのではないでしょうか。他の病院から患者様を受け入れて治療を行うことも多いです。

また、厚生労働省が、再発防止や治療抵抗性の患者様における社会復帰に役立つと推進しているのが、持効性注射薬です。これは注射を打てば1カ月や3カ月と治療の効果が続くというものです。しかし、こうした治療は治療導入に際する説明や注射に抵抗のある方に対して納得していただくのに手間がかかるなど、開始するにはハードルが高い面もあります。しかしそういった点も、公立病院の使命と捉えて早期から積極的に実施し、今に至っています。


●新病院改築で 誰にとってもやさしい病院へ

当院は、平成30年に改築が完了し新病院が完成しました。以前は慢性の患者様がたくさんいらっしゃり、興奮状態の患者様が使用する「保護室」という鍵のかかる個室も常に満室の状態でした。50年ほど使っている病棟もあるなど設備も古く、こちらがやりたい治療があるのに設備が追いついていない部分がありました。その点、改築が完了したことによって、保護室の数を増やしたり、入院環境が整ったりと、やらなければいけないと思っていた医療ができるようになりました。院内環境やアメニティなども含め、柔らかい印象の造りとなっているので、見学に来られる医学生や研修医の方からは、「精神科病院のイメージが変わった」と評価をいただいています。

また、緊急時の入院もとても入りやすくなりました。早期の退院を目指しますので、病床回転率も向上しています。10年ほど前と比べると、2倍から3倍の回転率です。


●最新のホームページで医師確保に注力

質の高い医療を提供するためにも、医師の確保は重要です。当院も人材確保には重点を置いています。今年(2022年)の春、病院のホームページを更新することにしました。医局の雰囲気や仕事風景などにスポットを当てて、関心のある医師からの問い合わせを増やしたいと考えています。また、予約状況などもタイムリーに反映させられるような仕組みにできればと思っているところです。


●多職種によるチーム医療がスタッフのやりがいに

当院には、精神障害のために罪を犯してしまった人のための医療観察法指定入院施設があります。ここでは、多職種によるチーム編成で、退院に向けてみんなで考えていくスタイルをとっています。このスタイルが一般の病棟にも浸透し、今では当院のカラーとなっていますね。

早期退院をするためにはどうしたらいいのか、入院する段階から多職種で会議をします。長期入院の患者様のいる病棟でも、多職種会議で話し合います。最近では「ケア会議」というのも増えてきました。この会議はケアワーカーがまとめ役で、医師、看護師、患者様、ご家族も参加します。平成28年度は779件でしたが、令和2年度には1466件と倍増しています。医師だけではなくチームで一丸となって課題に取り組んでいくことで、看護師などのスタッフもやりがいを感じてくれているのが、働く様子から伝わってきます。先日、ある企業様の行った職場の満足度調査で、当院が看護師の満足度一位を獲得しました。看護師不足に陥ることなく、安定して医療を提供できることに繋がっています。


●チーム医療が 風通しの良い職場環境に繋がる

私がこの病院に入職した当時からそうでしたが、やはり「みんなで考えて進めていこう」という価値観が、伝統のように根付いていると感じます。当院は名古屋大学の精神科教室からいらっしゃる先生が多いのですが、当院で働くことをとても気に入ってくれる先生が多いです。そうしたチームの雰囲気が医療にも好循環を生み、患者様からのアンケートでも好評をいただいています。

この雰囲気は、経営側からのトップダウンというよりも、現場からのボトムアップで生まれてきたものです。病院の改築に際しても、病院内の様々な職種の人で「建設委員会」というものを設けました。建設委員会と設計施工業者が毎週会議を開き、修正に修正を重ねながら病院を作り上げました。結果、とても使いやすい建物が出来上がっています。


●初期のコロナ対応と院内感染ゼロ実現の取り組み

新型コロナウイルスの感染が広がり始めた頃、当院ではすぐに「コロナ対策本部」を設置し、院内に陽性者を入れないためにはどうすべきか話し合いました。今となっては当たり前ですが、出勤前には検温をしたり、必ず体調を報告し、また少しでも不調を感じたら休むようにしたりするなどしていました。他にも、すべての病棟前にアルコール消毒液を置いて必ず手指消毒を徹底し、患者様の入院の際も2週間は個室に入ってもらうなど、徹底した対策を講じていました。その結果、今のところ院内感染はゼロにとどめられています。スタッフ総員の努力の結果です。

コロナ禍が始まった頃は、マスクや防護服も足りない状況でした。そこで、キッチンペーパーを購入して手作りでマスクを作ったり、職員みんなでホームセンターへ雨合羽を買いに行き、何百着と洗いながら防護服代わりに使用したりしていました。本当に苦労が多かったです。

現在当院は、愛知県精神科病院協会と連携し、夜間救急で新型コロナの疑いがある発熱者を全員受け入れています。令和2年の7月からは、新型コロナ陽性となった精神障害者の専用病棟も設け、役割を果たしてきました。


●課題となるコロナ禍の入院 新たな一手も

精神科では、患者様の調子が悪くなりそうな時に、そうならないように休息を取ってもらうために入院するということがあります。しかし、新型コロナの感染拡大によって、「入院しても個室から出られない」「自由に病棟の外に出られない」といったように行動制限をしなければいけなくなってしまいました。不自由な部分が増えてしまったんですね。このため今は、「少しお休みする」という入院が減少しています。

そのため、これまではあまり受け入れてこなかった遠方の患者様にも、入院していただけるようになりました。今までは、遠方の場合スムーズな通院が難しいだろうと考え、患者さま近隣の病院を推奨していましたが、できるだけそうしたケースも受け入れるようにしたところ、緊急の入院依頼も増加してきました。

また、これからは依存症の治療チームも作って受け入れていこうと準備を進めています。


●まずは「地域医療連携室」へ相談を

なかなか予約が取れず、困っている患者様もいらっしゃるかもしれません。当院には、「地域医療連携室」という場所があります。治療に関して、予約や問い合わせができる窓口です。他のクリニックさんを経由してご依頼いただくことも可能です。まずはぜひ「地域医療連携室」にご連絡いただければと思います。


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