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職員一人一人の幸せ、患者さんの細やかなニーズに目を配る。病院関係者を大切にするあたたかな経営姿勢とは

北海道

社会医療法人 耳鼻咽喉科麻生病院

平塚 仁志 院長

北海道

365日年中無休で診療を行う北海道の耳鼻咽喉科専門「麻生病院」。 「病気にお休みはありません。だから、私たちも休みません。」 職員一人一人の幸せのため新しい取り組みを積極的に取り入れたり、治療に限らず患者さんの細やかなニーズにも目を配るなど、病院関係者を大切にするあたたかな経営姿勢について、平塚 仁志院長にお話をお伺いしました。

病院の理念達成に、職員一人一人の理解と幸福感は欠かせない

患者さんが幸せになれるような医療を提供するべく善処するのは当然のことながら、まずは職員一人一人が幸せでなければ目的は達成できないという考えを持っています。そのために、職員を大切にし、働きやすく、安心して誇りをもって働くことが出来る環境を整えることを、一つの目標としています。

病院によっては、昨今のコロナ渦による職員流出に頭を抱えることも少なくありません。
もちろん当院も例外ではなく、いかに変化する環境に対し、適切に対応できるかを考え続けています。病院に限らず、企業の取り組みなどを参考にしながら、快適な職場環境を整えること、職員に高い就業意欲を維持してもらうための仕組みを考え、実践しています。

いくつかの試みをご紹介させていただきます。
まず、年度末に職員に対する経営陣からの感謝の気持ちとして、職員と経営陣合同での食事会を開催しています。

経営陣と職員との対話による意思疎通の時間を設けることで、双方の考え、気持ちを共有し納得度の向上に繋がっていると思っています。
さらに、その場で決算報告会を開いて、当院の経営状況を知ってもらうようにしています。

このように、すべての職員に病院の経営状況、経営陣の考えを知ってもらい、対話の中で理解・納得してもらった上で自分の仕事に向き合えるように心掛けているのは、当院の特徴の一つかもしれません。

次に、経営陣の思いを伝えるために、当院ではリッツカールトンホテルの取り組みを参考にしたクレドのシステムを導入しています。職員全員には病院の理念、基本方針、クレド、行動規範といったものが記載された「クレドカード」を携帯してもらい、ミーティング時などに活用しています。年間を通して行動規範に沿った素晴らしい働きをした職員をサプライズで表彰するといった取り組みもしています。

また、当院の規模的にすべての職員の名前を覚えられることは、職員間の意思疎通を図るうえでの強みだと思っています。クラブ活動などにも積極的な参加を促すなど、部署を超えたつながりの中で充実したコミュニケーションが生まれるよう心がけています。
職員間の親密なコミュニケーションが促され、部署の壁を越えた相談やアドバイスのやり取りに繋がっていると感じています。

数年前から人事考課制度のオープンセミナーを開いていることも特徴的です。
これは職員を評価する上で重視しているポイントを開示することで、職員が人事考課の中で自分のどの部分を見られているのか、評価されているのかを理解し、どのような努力をしていくべきかを自律的に考えてもらうことを狙っています。

当院には、上記のような企画を専属で検討・推進する部署はありません。各部署で生まれる意見を経営陣が直接傾聴し、法人運営会議で取り上げるという形を取っています。このように、職員の意見が経営陣に直接伝わることで、新しい施策を実践し、迅速に改善していける仕組みも、当病院の自慢できる部分ではないかと思っています。

コロナ禍における当院の社会貢献

単科病院である当院が、新型コロナウイルスの専門医療を直接提供することは容易ではない一方、何か他の形で地域医療に貢献できないか考えてきました。

そこで当院は、病院としての社会貢献をしっかり継続できるように、当院の特徴である365日年中無休診療の中で、一般診療はもとよりコロナ感染者の検査・診断を行うこと、可能な範囲で手術も積極的に受け入れること、また週末のコロナ感染への対応や行政からのご要望にも積極的に対応する姿勢を継続しております。
当初は職員の理解を得ることに苦慮しましたが、感染対策を徹底して行うこと、発熱外来患者の診療システムを構築し安全な検査体制を整えること、入院患者さんの抗原検査を行い院内にコロナを持ち込まない対策をしっかりと行う等で、院内感染ゼロを目標としつつ、安心して受診していただける仕組みを構築しております。


他にも、コロナ禍当初、病院としての取り組みをテレビCMで放映しました。感染対策を徹底し、患者さんにできるだけ安心して受診していただける体制を整えていることを積極的に情報発信し、相応に効果があったと実感しています。実際に放映されたテレビCMはホームページ上でも視聴出来るようになっています。こうした取り組みは理事長自ら率先しており、当院の積極的な社会貢献の姿勢を示し続けていけるよう、努めています。

様々な施策で、患者さんのニーズにお応えする

また、患者さんの待ち時間における身体的・精神底負担を少しでも和らげられるよう、さまざまな取り組みを実践しています。

例えば、待ち時間減少のための診療の効率化・IT化に関して、当院は当初から検査、オーダーなどの入力作業は全てクラーク(医療事務)の協力のもと行って参りました。麻生北見病院等、分院との情報共有を円滑にするため、テレビ会議システムを早期から導入し330㎞離れている札幌北見どこでも同じ治療が受けられようにカンファレンスを強化しました。今後は電子カルテ導入など、更に進化すべくITの積極的な活用の必要性を感じています。

また、当院の課題となっている若い世代の先生方の積極登用に関して、若い世代の先生方に働いていただく際に新しいシステムの利活用は不可欠と考えており、徐々に取り組んでいるところです。耳鼻科という単科病院の性質に即した一層スマートな診療体制を整えるべく、IT化を含めた「病院の在り方」を考え続けていく必要があると思っています。

また、患者さんの待ち時間、入院や治療にまつわる不安な感情を癒すケアといった点で参考になったのが、「ホスピタルアート」の考え方でした。
第一人者の先生にご紹介いただいた事例として、入院している女性の患者さんに「入院期間に病院で何がしたいですか」といったインタビューを実施したところ、「本が買いたい」というご意見をいただいたそうです。
当院においても患者さんのそのようなニーズに応えようという取り組みがはじまり、実際に廊下に本を並べたディスプレイを設置するようにしたところ、患者さんが病室からより活発に歩み出て来て下さるようになる、などの効果が表れています。
他にも、手術室の扉は鉄製の寒々しい雰囲気のものですが、そこに森のアートを描くことで無機質なイメージを取り除いたり、子供たちのために手術室の中にディスプレイを設置し、アニメキャラクターを映すなどの取り組みも行いました。
いずれも患者さんから高いご評価を頂いたとともに、患者さんのリラックスする姿を見た職員にも安心感が伝わるといった結果に繋がっており、手応えを感じています。

地域医療との密接な連携体制を築く

当院としては、中堅規模の病院として地域の患者さんや地域の先生方に大いに利用していただきたいと思っています。

開院当時、北海道における耳鼻科の単科専門病院は当院が初めてでした。
基本的には、当院を受診された患者さんには最後まで治療に関わらせていただく姿勢を心掛けていますが、病状によっては難しいケースもあります。
例えば、当院では悪性腫瘍の診断は出来ますが、専門的な治療はご提供出来ません。このような場合は、さらに高度で専門的な治療が提供出来る病院さまを紹介するといった形で対応させていただきます。


また、逆に土日に地域の病院の先生が、自分の患者の手術を当院にお越しいただき行っていただくといったような連携体制も充実させていけたら、と考えております。
このような形で、地域医療との協調関係を重要視し、ますます患者さんのお役に立てるよう、今後ともさまざまな取り組みに挑戦して行こうと思っています。