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組織を横断したチーム医療を実現。健全なチーム運営のために倫理コンサルテーションや人事面での新陳代謝もおこなう

愛知県

日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院

佐藤 公治 院長

中部

806の病床を有し、全国に91ある赤十字病院をけん引するフラグシップ病院として、名古屋市の医療を支えている日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院。「いかなる時も地域医療を守る」をモットーに救急医療や高度かつ先進的な医療の提供はもちろん、東日本大震災をはじめとした有事の災害対応にも力を入れています。また、全国に5つある「国際医療救援拠点病院」の1つを担い、海外への医師の派遣・育成などもおこなっています。 院長の佐藤 公治先生に、病院独自の取り組みや今後の展望などを詳しくお伺いしました。

806床の大規模病院でありながら、組織横断的なチーム医療を実現

当院の大きな特徴としては、高度急性期医療も担う大規模病院でありながら、組織横断的なチーム医療を実践している点が挙げられます。600床を超えるような大規模病院では、どうしても縦割りの組織になりがちですが、当院では職種を越えたチームプレイで日々医療にあたっています。そのひとつが、倫理コンサルテーション活動です。

倫理コンサルテーションとは、一個人や一部署だけが責任を負うのではなく、病院全体で困り事を解決していこうという概念です。私はもともと「医療はチームだ」という考えを持っていましたので、自身が副院長の頃からチームビルディングを大切にしてきました。
もちろん、ただチームの数ばかりが増えていき、成果が見えずクラブ的雰囲気に終始してしまう懸念もあります。そこで、チーム医療の質を向上させるための管理部門もつくり、効果の見込めないチームは発展的解消の意味でなくすなど、一定程度のチームコントロールも意識しています。
さらに、チームをつくる上で大切にしているのが、各チームがサスティナブルな組織であることです。チームを引っ張るリーダーや熱意のある人だけが負担を強いられ、それらの人がチームを去るとチーム自体が消滅してしまうのでは本末転倒です。そのため、委員長や副委員長、部長などといったリーダー的立場の人は、1~2年と比較的短いスパンで交代させるような人事を採用しています。人材を育て、チームを率いていく存在が常に不足しないようなシステムがつくられています。

定期的なアンケート調査で患者の満足度を可視化し、病院経営に反映する

当院が独自で実施していることとしてはもう一つ、患者さんの「満足度調査」があります。当院は、医療機能評価としては最も厳しい評価基準を持つJCI(国際医療機能評価機関)の認証を取得しています。患者さんの満足度調査はJCIでも推奨されており、また私自身も、病院経営の観点から把握しておくべき指標の一つだと考え、毎年調査を実施しWeb上でも発信しています。

また、これはどの病院でも実施していることかもしれませんが、患者さんの満足度を図る手段としてご意見箱も活用しています。いただいたメッセージは逐一、院内のサービス委員会や私を含めた幹部に報告するようにしてあります。どういったご意見をいただいているのか、日々把握していますね。
一方で、アンケートにしてもご意見箱にしても、収集した情報をどのようにまとめ、分析し、どのように医療に活かすべきかについては、難しさを感じているところです。いただいたご意見をどこまで受け止めるべきか、冷静に判断して臨機応変に対応していかなければならないと思います。

近隣の開業医に対して電子カルテをすべて開示し、スムーズな患者情報の共有を目指す

日本赤十字社に属する病院として、地域医療に貢献することも当院の使命です。現在、私が地域医療において最も課題だと感じているのは、患者情報の収集・伝達です。
当院では「やごとクロスネット」という電子カルテをフルオープンし、連携する近隣の医師2000人へ当院の患者情報を開示しています。登録さえいただければ、問診表から手術方針などまで、当院の患者情報はすべてPCなどから閲覧が可能です。
一方で、近隣のクリニックや病院では、現在も紙ベースで患者情報を管理しているところが少なくありません。また、電子カルテを導入しているクリニックや病院でも、当院に向けて患者情報が開示されているわけではありません。そのため、他院からの紹介の場合、患者情報を得る手段は、患者さんご本人が持参される紹介状が主となります。
地域医療連携の理想的なかたちとしては、どの病院でも患者情報がデジタルで標準化されることです。カルテにおいてデジタルの標準化が実現されれば、例えば、患者さんご本人が、自身の情報をマイナポータルというかたちで持ち歩くことが可能になります。患者さんが意識のない状態で救急車により当院まで運ばれてきても、マイナポータルを電子機器につなげば、その方の既往歴、お薬手帳の記録などが確認できるわけです。電子カルテの導入が全国的に進んでいけば、地域医療連携はより発展したものとなっていくでしょう。

しっかりと効果検証をおこないながら、最適なITツールの導入を目指す

病院自体のDX化を進めていくことも今後の課題の一つです。DX化の一歩として優先的に導入を考えているのが、AI問診の導入と院内PHSのスマホ化です。
特に院内PHSのスマホ化に関しては、ブレイクスルーになるかもしれないとの期待感があります。院内PHSがスマホに変われば、職員への一斉通報は簡略化され、各職員は会議室に集まらずともスマホからオンラインで会議に参加できます。どこにいても電子カルテから患者情報が得られ、マニュアルなどを印刷する必要もなくなるでしょう。
実は、各科での使い勝手を見ながら採用するか検討してみようと、いくつかの部門でiPadを数十台取り入れてみました。しかし、ソフトの更新にアプリが追い付かず使えなくなったり、思ったよりも電池の消耗が激しかったりと、さまざまな課題にぶつかっています。1年かけてやってみた結果、タブレットよりはスマホのほうが正解なのかな、と。とはいえ全職員にスマホを渡すとなるとまた多額の費用もかかりますので、まずはテストケースでどこまで広げていくのかなど、現状はプランニングをしっかりと進めている段階です。

医療者特に医師の意識が変わらなければ、「働き方改革」を本質的に実現することは難しい

昨今たびたび話題に上る医療者の働き方改革に関しては、当院では3年ほど前から対策をおこなってきました。具体的には、就業管理システム導入による勤務表の作成と出勤・退勤時間の管理です。加えて、電子カルテのオン・オフの履歴などから、各医師の在院時間や仕事内容などをトレースして把握できるような仕組みも整備しています。システム上の出勤・退勤時間と実際の業務時間との間に乖離がある場合は、時間外として記入してもらうことも徹底しています。
一方で、それが本当に「働き方改革」として正しいかどうか、といった疑問は抱いていますね。国が言うように在院時間をすべて仕事だと定義すると、医師の時間外労働が増えていることは事実です。とはいえ医療者にとって、病院にいればいるほど自分の学びになることは事実なので……。大事なのは時間外労働をこまかくつけることではなく、無駄がないか考えること、効率を上げるよう働き方を工夫すること、であるように思います。そのような意味で、働き方改革を本質的に実現するには医師の意識改革も必要だと感じています。医師一人一人に意識を変えてもらう手段としては、「働き方改革チーム」を設立し、全診療科のカンファレンスを回ってもらうなどの試みも進めているところです。

予約外来とシフト勤務の導入で、一人でも多くの患者さんを「お待たせせず」診られる環境に

今後の展望としては、病院のDX化を推進し、最終的には予約外来が基本となるかたちを実現したいと考えています。もちろん、救急以外の診療科においてです。診察の予約時点で患者さんにスマホなどから問診も済ませてもらい、問診内容が当院の電子カルテと連携されていれば、担当医師が事前に患者さんの状態を把握できます。そうすれば、患者さん一人一人にかかる診察時間が短くなり、効率はすごくよくなりますよね。ただちに治療方針を立てて診断・検査のほうへ進めますから、患者さんにとってもメリットは大きいと思います。
また、医療者の意識や働き方を変えていくという点においては、医師をはじめとした多職種におけるシフト勤務の導入を検討しています。看護師以外の医療者にとっては、変形労働時間制はなじみがないのが現状です。とはいえ、当院は特に高度急性期の医療を提供しているわけですから、24時間ずっと稼働し続けるためにも、今後はデータに基づいた職員配置が非常に大事になってくると思っています。