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地域に信頼され必要とされるため、行う時流に合わせたハード面のアップデート。地域医療のハブとなるための連携方法とは

愛媛県

愛媛県立新居浜病院

北條禎久 院長

中国・四国

職員全員が「地域から信頼され、必要とされる病院」を目指し、東予地域の医療を支える中核病院となっている愛媛県立新居浜病院様。地域の大学や、近隣病院と連携して、総合的な医療を提供している北條禎久院長に病院経営に関するお考えを伺いました。

大学や近隣病院と連携し、総合的な医療を提供

当院は「地域から信頼され、必要とされる病院」を目指し医療の提供を行なっております。
病院の成り立ちとして、昭和28年に結核療養所としてスタートしました。昭和40年から一般診療を開始し、平成4年から3次救命救急センターを併設することになり診療科が増えてきました。ご高齢の地域の方々には、当院は結核療養所としての印象があると思いますが、徐々に小児・周産期医療や救急医療などが根付いてきております。

新居浜市は、人口12万ほどの市なのですが、約200〜350床規模の急性期病院が4つあります。4つの病院の理事長・院長は医師会の理事会や市の医療対策協議会などに出席し、地域として医療提供体制をどうするのかという問題や今回の新型コロナ感染症の対応などのような臨時の問題も協議し連携を図っています。さらに愛媛大学からは連携病院として強い支援があり多くの医師を派遣していただいています。

信頼され必要とされるため、時流に合わせたハード面のアップデートを

当院では新型コロナ感染症の流行前から病院の建て替えを進めていたのですが、コロナ患者の受け入れを決定したことによって、進行中の建て替え計画の設計変更を行いました。
以前の設備では、PCR検査の機材がなかったため検査結果が出るまでに1日ほどかかってしまい、感染の疑いがある患者様には入院していただいておりましたが、現在は機材を導入したことで検査結果が1時間ほどで出るようになりました。さらに、陰圧機能付きの診察室や観察室を新型コロナウィルスに対応する病棟以外にも設置し、職員や患者様にも安心して治療に専念していただけるようになっております。

施設の建て替えにあたり、設計と施工を一元化することで、質を担保しながらコストを抑えることのできる『デザインビルド方式』という手法を取りました。これにより患者様に寄り添ったデザインを実現することができました。来院される患者様の中には高齢の方が多いため、外来及び検査機能をワンフロアにして、上下の移動を不要にしました。さらに、患者様に親しみをもっていただくため、エントランスホールには地域の建材を利用したり、地域の祭りの飾り幕や内装に愛媛県内のイラストレイターに愛媛県のマスコットのみきゃんと祭りを題材に作成していただいたイラスト使用したりしています。

また、当院は災害時に地域の医療拠点となる災害拠点病院でもあるため、屋上ヘリポートを設置しました。建て替えの前から地上ヘリポートは設置していたのですが、地上のヘリポートを利用して患者様を搬送する場合は、市の救急隊に依頼し病院まで搬送いただく必要がありました。より効率よく患者様を受け入れるために、屋上ヘリポートを新設しました。

今まであった地上のヘリポートに関しては、当院以外の病院からの患者様の搬送や災害時の物資の搬送のためのランデブーポイントとして利用を予定しております。

医師の採用と定着のため、進める働き方改革

当院には産休、育休中の医師を含めて46名の医師が在籍しています。3次救命救急センターと周産期母子医療センター機能を持っている病院では、当院の倍ほどの医師がいるところがほとんどで、働き方改革に対応するためには医師不足が課題となっております。

医師の人材確保のため、大学との連携をさらに強めるなど採用活動の強化などを行なっておりますが、病院設備のアップデートによる採用強化も図っております。

一例として、新診療棟の救急初療室に『IVR-CT』というCTと血管連続撮影装置を組み合わせた機器を導入しました。四国に当院の規模でこのような設備を導入している病院はありませんが、重症患者の救命率の向上や後遺症の軽減が見込めるため、地域の方の安心はもちろんですが、救急医の採用につながればと思い、導入を決定しました。

現状、当院における医師の女性比率は3割強なのですが、より女性医師が増えることを予想しております。女性には妊娠や出産などのライフイベントがあるため、院内保育所や夜間保育の充実を図り人材の確保とともにより働きやすい職場にする必要性を感じております。

実施しているタスクシフティングの一例として、当院では超音波検査を臨床検査技師に業務を移行しております。また旧診療棟では一部の病棟しか薬剤師を配置していなかったのですが、新診療棟に移行してからは全病棟に薬剤師を配置して、薬剤業務にかかる看護師の負担とリスクを軽減しました。人材の確保と定着を進めるためにも、より医療スタッフの業務効率化は進めていく予定です。

安心してご紹介いただくために積み上げる実績

「地域から信頼され、必要とされる病院」を目指す指標として、近隣病院からの紹介率や逆紹介率を重視しております。そのため定期的に連携を強めるための会を開き、連携の医療機関に興味を持っていただける講演や医師の紹介・交流などを行なっております。

さらに大学や市をハブとした近隣病院との地域医療連携を強めております。例えば、個人の産婦人科でお産をする際に移送リスクが高ければ、当院へ搬送いただくだけではなく、大学の要請に基づき医師の派遣も行なっております。

また、当院では愛媛大学小児科との連携で小児科医が8人在籍しているため、新居浜市の休日夜間急患センターへの医師派遣や、東予東部3市の小児二次救急輪番を年間2/3の期間を当院が担当するなど診療圏域内の診療所や病院から安心してご紹介いただけるように努めています。

その他、新診療棟での診療開始とともに新居浜市と協定を結び救急体制の強化やメディカルコントロール体制の構築を含めた病院前救護体制の充実強化が期待できる派遣型救急ワークステーション事業も開始しました。

地域の住民、そして近隣の病院からも信頼されて、必要とされる病院になっていくべく、今後も市や大学との連携を強めて、より良い医療サービスを提供していきます。