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リハビリテーションの分野で地域貢献したい。海外施設を参考にした「人生をサポートできる場所」としての病院

富山県

アルペンリハビリテーション病院

室谷 ゆかり 病院長

中部

富山県富山市に位置する、アルペンリハビリテーション病院。「患者さんが1日でも早くご自宅に帰れること、そこからさらによい人生を歩めること」をミッションとして、施設設計や院内の雰囲気づくりからこだわられています。室谷 ゆかり院長に、病院を経営する上で大切にされている想いや今後の展望をお伺いしました。

●地域住民の人生を支える「リハビリ」という分野で、地域貢献を最大化

経営する上で大事にしていきたいと考えているのは、当院の資源を最大限に活かしつつ、いかに地域の方々に貢献していくか、ということです。私の父が経営していた前身の院は、どちらかというと療養病院、地域の高齢者のための病院という側面が強くありました。そこで私たちは地域に密着した病院として、地域の方々の役に立ってきたつもりだったのですが、「あの病院に入ったら、出てくるときは亡くなるときだ」といった言い方をされたこともあったんです。そのため、本当に地域から必要とされているのか、本当にこういったあり方でよかったのか、とても悩みました。
そんな中で出会ったのが、現在当院の主軸となっているリハビリテーションの分野です。障害や体が動かないなどの困りごとを解決する手段としてリハビリがあり、リハビリによって元気になっていく人をつくっていけるこの仕事に、大きな魅力を感じています。リハビリテーションの質を上げていくことで、地域への貢献を最大化することが当院のミッションです。

●海外の施設を参考に「人生をサポートする場所」として病院を設計した

例えば、大きな病気を患い障害を持ってしまっても、緩やかに障害と向き合いながらみんなで支え合って、もう一度新しいスタートを切れる。そんな場所になってほしいという想いで、私は当院をつくりました。
当院を建てる際に参考としたのが、オーストラリアの高齢者施設です。何かあっても入所者の方をすぐにサポートできるように、その施設は一階建ての平屋になっています。一人ひとりの人生を支える文化や温かさが、建物全体やデザインからも感じられる場所でした。同じような施設を日本にも作りたくて、約1年かけてスタッフと話し合い、設計士の方にも入っていただき、病院と通所リハビリ施設が一体となった形で当院を建設しました。
患者さんが入院される場所はすべて個室で、必ずトイレを付けています。また、シーツやリネン、カーテンなどは病院によくある真っ白のものではなく、ご自宅にあるような柄ものを採用。当院は、患者さんが家に帰るためのお手伝いをする場所です。病院というよりご自宅にいるような感覚で、ご自宅での生活の練習となるようなデザインや設計になっているんです。
また、院内に死角があることも当院ならではの特徴です。病院は基本的に、安全面から死角ができないように設計するものです。しかし死角があることで、患者さんにとってはそこが、隠れて泣いたり、ひとりぼっちになってみたりできる場所になるんです。ドイツやヨーロッパの建築を参考に、死角をあえて作りながらも患者さんが安全に過ごせる空間を実現しています。

●人手不足の調理場を、障害就労支援の一環として活用できる場に

現在直面している大きな課題は、人員不足です。どの部門も人手不足ではありますが、特に厨房のスタッフやケアスタッフなど、早い時間にシフトのある職種のスタッフが減ってきています。ただ、厨房のスタッフに関しては、クックサーブからクックチルへと移行し、包丁を使わずに盛り付けるだけにすれば、障害のある方にお手伝いいただくことも可能だとわかりました。人手不足の場所が、新たに障害就労支援の場になり得るというのは、大きな発見でしたね。ある意味では、さまざまな個性や特徴を持つ方を活かせる、良い時代になってきているのかなと感じます。
また、当法人はこれまで地域の皆さまと関わっていく過程でさまざまな課題に向き合ってきました。例えば、法人内託児をやっていく中で、スタッフからあるお子さんの居場所づくりについて相談されたことをきっかけに、2010年頃に「あしたねの森」を開設しました。
「あしたねの森」は、保育園や放課後等デイサービス学童保育などの並びに、特別養護老人ホームやデイサービスの施設があり、多世代が集まり交流できる場になっています。子どもも親世代も高齢者の方も、違う世代と関わることで自分以外に視野が及ぶようになるんです。そうすれば、1人でいるわけではなく、自分も周りもいるからこそ良い時間が過ごせていると感じていただけます。当院の医療スタッフも、リハビリの観点からその輪の中に混じっていく形で、地域の方々とつながっています。また、そういった困りごとを抱えているお子さんや障害のある方が社会参加できる場所として、2013年頃には障害就労施設「MUROYA」もスタートさせています。

●採用に関してはビジョンや価値観を具体的に伝え、志を同じくする人材を集めたい

人手不足を解消する手段の1つとして、採用ページの充実に力を入れています。採用ページでは、私たちがこの地域でどんな仕事をしたいか、私たちの仕事にどんな価値があるのかを伝えるようにしています。さらに、働き方が具体的にイメージできるように、スタッフや患者さんのインタビュー記事なども載せています。
この働き方改革の中にあって、自分を酷使するような働き方は求めていません。とはいえ、医療・福祉に携わる限り、シフト制ということもあり一部で制限もあります。そういった部分を理解していただいた上で、自分たちの限られた時間とエネルギーを使って、一緒に考えて変えるべきところは変えていこう、と思ってくれる人材に出会いたいと考えています。求める人材に関しては以前よりも具体性を持って発信できているので、少しずつビジョンを同じくするスタッフが集まってきてくれていると感じます。

●ロボットの活用と多職種評価で地方における回復期医療の確立を目指す

地域医療連携では、現在は2つのことに力を入れています。1つめは、ロボットを活用した近隣病院との連携です。施設間連携を強化し、リハビリスタッフの少ない地方において、より地域に貢献できる方法を考えていきたいですね。
2つ目は、多職種評価を当法人内だけでなく、当院と地域の介護施設との間でもおこなっていくことです。例えば、脳の病気を患うと、認知機能の低下によって認知症のような症状が現れるケースがあります。こういった方にケアスタッフだけで対応するのは、身体的にも精神的にもかなり大変です。そこで、必要があれば利用者様をもう一度病院に戻してもらい、医師など多職種が多角的な面から再度評価するという試みを、当院とグループ法人の特別養護老人ホームの間ではじめました。ケアスタッフのサポートがあれば暮らせるような形ができたところで、また施設に戻っていただくような形にしています。こうした多職種評価のシステムを、今後は地域の介護施設の方たちにも活用いただけるようにしたいです。

●この先、日本のように高齢化社会になるアジアの国々へ知識や技術を伝えていきたい

今後は、もっとデジタル機器なども導入して、回復期の評価を上手くシステム化していきたいです。さまざまなデータを集め、それによって一人ひとりに最適なリハビリを組んでいきたいと考えています。さらに言えば、集まったデータをもとにして、より最適なケアができるよう病棟のあり方も変えていく。そういったことを繰り返し、地方の病院を上手く運営していくやり方が見つけられたら、それを積極的に国内外へ発信していきたいとも考えています。
アジアの他の国々にも、これから日本と同じように高齢化社会がやってきます。私たちがオーストラリアから学んだように、現状の高齢化社会において日本で得られるものを、アジアの方々にも伝えていきたいです。もちろん、アジアの方々から私たちが学ぶこともあるでしょう。ともに考えていける体制を整えられるよう、当法人もお役に立てればと考えています。具体的には、現在のような技能実習生という形ではなく、語学面でのサポートも含めた留学という形の方が、学んだことを自国に持ち帰って活かしてもらえるのでは、と思います。お互いに知識や技術を伝え合い、ハッピーになれるような運営を考えていきたいです。

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