【無料】=良い事ではない。きちんとしたサービスを提供するために。 救急車の適正利用が叫ばれる昨今、軽傷でも救急車を呼ぶ人がかなり増えています。 そんな中、武蔵野赤十字病院は本当に迅速な対応が必要な人を受け入れられるよう、様々な制度を導入し、医師の充実を含む受け入れ環境の整備を図っています。 今回は、年間1万台以上の救急車が訪れる環境を作り上げた武蔵野赤十字病院の泉院長にお話を伺いました。
病院ならではの働き方改革を実施するために。
少子高齢化が進む昨今、1人の医師が対応する患者数は右肩上がりです。しかし、医療ミスが発生すると世間の注目の的になるくらいメディアに取り上げられてします。病院は人が介する場所なので、人的ミスを完全に0にするのは難しいかもしれませんが、それが最大限の努力をしなくてよい理由にはなりません。
当院もやはり救急の対応には課題があり、当直医師、空き病床を確保、またそれに付随した品質管理に焦点を当てて解決策を練ってきました。
まず、当直医師の確保については普段の勤務形態から見直すことにしました。それまで手作業でシフト管理を行っておりましたが、当直という概念ではなく、24時間シフトという概念で進めるため、勤怠管理のソフトウェアを導入しました。この対応により、15名以上の医師がどんな時間帯でも勤務している体制を作る土台が出来上がりました。
それに付随して、複数主治医制度を導入しました。1人の患者に1人の医師というのが一般的ですが、先ほど申し上げたように人的なミスを最大限防ぐため、また様々な視点から患者さんを見る事が出来るため、小さな見逃しの防止、医師自身のスキルアップにも繋がっています。そうすることで、院内でのセカンドオピニオンが実施できており患者さんの満足度・安心感の向上にも繋がっています。
一番大きな決断だったのが、選定療養費を夜間救急にも導入した点だと思います。救急救命士の方とのコミュニケーションも取れている為、患者さんの容態によって当院を選んでもらうかどうかの判断がしやすくなっているように感じます。
患者さんの負担を考えると費用は掛からない方が良いとは思いますが、昨今の救急車の適正利用をはじめ、必要な人に必要な治療を届けられる病院、ひいてはそのような地域づくりにも繋げていきたいと考えております。
いつでも患者さんを受け入れられる地域の拠点病院として
地域の拠点病院として、常に対応可能な状況を作る事が不可欠だと考えております。
そのための空き病床を確保するためには、在院日数の短縮が重要だと判断し、対応に移してきました。短縮と言っても早く退院してほしいというわけではなく、自分たちの役割を明確にしているため、本当に得意な領域は他病院に任せるという事も多く行っています。
また、患者さんの不安を軽減するために、医療ソーシャルワーカーが担う役割も大きいです。1人1人の病床や状況をもとに、どの病院に通えば良いかというアドバイスはもちろん、病院側への情報共有を欠かさないことでその後のケアのずれがないように注意しています。
そうすることで、当院の空き病床を確保することもできますし、地域コミュニティの活性化にも繋がっていると考えています。
その他にも、透明性の確保に重点を置いており、病床数や入院日数が一目で分かるようなシステムを構築しております。QCサークルも活発に動いているため、医師の業務を効率化する活動を行ったり、品質管理にも問題がないか頻繁にチェックしています。
常に最新の医療を提供するために
働きやすい仕組みづくりの整備はもちろんですが、当院は広報も重要視しています。ですので、新しい取り組みも積極的に行う必要が高いと考えておりますし、それに対する投資は惜しみません。
新しい治療にチャレンジする医師がいれば応援しますし、学会や専門医試験にも積極的に参加するよう促しています。その空気創りの為にもトップである院長・副院長が積極的に外部の情報収集を行っており、年間60以上の病院を見学させてもらっています。
そこで得た情報をもとに勉強会も実施しており、取り入れたものはしっかりと外部にPRすることでどんな病院なのかを知ってもらう機会も増やしています。
その結果、紹介いただく件数も増えており、今では月間200件以上にまで伸びています。信頼されている病院にしか紹介は出来ないと思いますので、当院の信頼も少しずつついてきたのかなと実感しております。
最新医療と広報に力を入れることにより、当院を選んでくれる研修医も多いです。7年連続マッチング人気No.1というところまで来ているため、医師の成長する現場としても適した環境を作れているようです。
研修医だけでなく女性からの応募が多いのも特徴的ではないでしょうか。医師と看護師の協力体制はもちろんですし、システム導入により過度な労働もありません、また一番は院内の雰囲気を見て選んでいただく方が多いようです。忙しい環境だとやはりギスギスした空気が生まれ、雰囲気も悪くなります。そうならないためにも病院ならではの働き方改革が必要だと常に実感しております。
また、最先端の医療にチャレンジすることで、高度技術Drの採用からがん拠点病院としての維持にも繋がります。繰り返しになりますがスキルの高い医師を募集するには最先端の情報を得続ける必要があります。何故ならどんな医師にも成長する環境を提供する事で、医師全体の成長から始まり、病院全体の能力向上となるからです。
このように、仕組みが上手くいってるおかげか、多くの病院関係者の方から相談いただくことが増えました。しかしながら仕組み作りだけでは足りず、採用という入り口から考える事が重要だと思っています。
向上心が高い医師が増え、患者さんの満足度も上がり、地域からの信頼も厚くなる。そうなることで初めて地域医療と言えるのではないでしょうか。