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療養型病院を中心に介護医療や障がい者支援にも尽力。グループ全体で利用者の自立を長期的に支援する

愛知県

医療法人さわらび会 福祉村病院

山本 左近 さわらびグループCEO             ※役職は取材日(2022年7月19日)時点での情報であり、現在は文部科学大臣政務官・復興大臣政務官の就任に伴い退任されております。

中部

愛知県豊橋市の広大な敷地に、多くの施設の集合体として運営されている「福祉村」。療養型病院である福祉村病院を中心に、介護医療院、障がい者支援施設など、幅広い面から利用者さんの自立度を高める取り組みを続けていらっしゃいます。 認知症リハビリテーション、認知症研究の分野で特に強みをおもちの福祉村病院。「みんなの力で、みんなの幸せを」という理念のもと、地域とともに歩み続けられる病院運営について、さわらびグループCEO※の山本左近先生にお話を伺いました。 ※役職は取材日(2022年7月19日)時点での情報であり、現在は文部科学大臣政務官・復興大臣政務官の就任に伴い退任されております。

●「みんなの力で、みんなの幸せを」の理念に基づく自立支援

福祉村病院をはじめとする、医療法人さわらび会・さわらびグループの基本理念は「みんなの力で、みんなの幸せを」です。私たちは人の幸せを「自立して自由に生き、今自分のできることで他の人の役に立つ働きができるときに、人は最大の幸せを感じる」と定義しています。自分自身だけではその実現が難しい方を支援し、その方の自立度を上げる、もしくは他の人の役に立つ働きの機会を作ることを私たちは大切にしています。
福祉村の10万平米の敷地内には、高齢者施設、高齢者住宅、障がい者の方が暮らす施設、日中通って来られる方の作業施設等があります。また、障害者の方が働くクリーニング工場、さらに郵便局、公園、保育園もあります。
これらは、理事長の理念を反映したものなのですが、同じご病気、同じ身体障がいをもつ方を集めた単一機能の施設では、患者さんご自身のもっている力で、他の人の役に立つ働きをすることが困難です。福祉村では、40年以上前から他者との関わり、つながりが必要だと考え、異なるご病気、障がいをもつ方が同じところに住むことを推進してきました。
例えば、認知症でも身体は元気な方が、別の利用者さんの車椅子を押して病院まで出かけるといったことです。もちろん職員は付き添いますが、このような形で人の役に立つ働きの場を作ることが、この福祉村設立の最大の理由です。

●認知症の診断精度の向上と未来の治療法確立への取り組みに向け、研究所を設立

当院の特色の1つは、認知症の研究所を併設していることです。1992年に設立したこの研究所では、私たちドクターが臨床で行った診断内容が正しかったかどうかを死後に検証するCPC(Clinico-pathological conference)を実施しています。一言で認知症といってもさまざまな病気が複合している場合も多いのですが、実際に病理解剖による確定診断をすることは、非常に重要と捉えています。
確定診断をする理由は2つあり、1つはレビュー(振り返り)の確実性が高まることです。例えば、医師がつけた診断名がアルツハイマー型認知症だとしても、確定診断をした際に、脳血栓疾患やレビー小体型認知症だったとわかる場合もあります。存命中に脳内を見て診断するのは不可能ですから、すべての認知症診断は結局のところ、言動、行動、様子からの推定診断なのです。診断を確実にすることで、対症治療の精度を高められますので、病理解剖による確定診断と生前の診断の突き合せる、振り返りは現在や未来の診療に大きく貢献されます。
もう1つの理由は、研究によって未来の認知症予防・治療につなげたいからです。私たちはブレインバンクとして、病理解剖させていただいた脳組織を、遺伝子が壊れないマイナス80℃で冷凍保管し、認知症研究の資材としています。当然、研究の内容は毎回院内の倫理委員会にかけ、どういった研究をするのか、倫理的に問題はないのか、利益思想はないかなどを判断します。将来認知症に苦しむ方が1人でも減るように、そして剖検を承諾してくださった患者さんとご家族の意思が、未来の役に立つように、というのが研究所を運営する私たちの思いです。

●介護情報共有システム「SHIP」でグループの強みを最大化

ICT化は当院の課題ですが、すでに独自開発して運用中のシステムもあります。それが、グループ全体で介護情報を共有するシステム、「SHIP(シップ)」です。開発・導入から今年で5年になりますが、開発のきっかけは、施設を超えて患者さんの情報を一元化したいと考えたことでした。
当グループには高齢者向け施設として、デイサービス、グループホーム、特別養護老人ホーム、病院があり、利用者の方は年齢や症状に応じて施設を移ります。従来は、1人の利用者さんに対して、それぞれの施設でアセスメントを実施していました。しかし、10年ほど福祉村を利用している方には、平均9回もアセスメントをしていたことが分かったんです。
これは本当に必要なのか調査したところ、情報の2/3程度はほとんど変化のない内容だったんです。それであれば、一度聞いた内容を各施設で共有できた方が効率的です。共有する情報には、その方の日々の生活記録、病院での生活、リハビリの内容も含まれます。また、当院は40年以上前から音楽療法、回想法を取り入れていますので、それらの情報を共有し、利用者さんの自立訓練やリハビリに活用できる点も有意義だと考えています。

●高齢者が増加する今後10年。ボリュームゾーンに対応するための体制構築がカギ

経営面の課題は、人材の問題にもつながるのですが、今後10年の当院のキャパシティの問題です。2025年に団塊の世代の方が全員75歳になり、2035年には85歳になります。現在、当院の入院患者さん、利用者さんの平均年齢は80代前半ですので、つまり今後10年がボリュームゾーンとなるのです。
ベッド数は決まっていますし、限られたリソースの中でどのように対応するのかという点が課題ですね。もちろんそこには人材の問題もありますので、人がやらなくてもいいことは、今後テクノロジーに置き換えなくてはなりません。デジタル化、DXは非常に大切だと考えています。
私が当院に関わったこの10年間、IT化・デジタル化を推進してきました。コロナ禍での後押しもあり、最近ではかなり進んだ部分もあります。今後、導入を予定している電子カルテの診療情報とSHIPをベストミックスさせていくことがグループ全体のカギとなりますので、その点は対処すべき課題だと認識しています。

●在宅医療の推進と「東三河ほいっぷネットワーク」を通じた地域連携の強化

地域医療に関しては、特に在宅医療の推進を検討しています。当グループには在宅診療部門がありませんので、訪問医療の体制を整えて、病院にかかる前にしっかりと医療的なサポートができる環境を整備したいですね。近年、利用者さんのお考えも大きく変わっており、在宅で看取りをしたいというご希望も増えています。できるだけその方の生活を考え、十分なサポートができればと思っています。
また、2020年8月には地域包括ケア病棟を開設しました。高齢者の慢性期病院として、介護医療院と地域包括ケア病棟を揃えたのは、おそらく愛知県内で当院が最初だったと思います。まずは、地域へ帰ることを推進し、困った方は入院していただき、再度ご自宅へと帰っていただく、あるいは介護医療院という終の住処も用意する。地域の方が必要とするサービスを提供できるように、地域包括ケア病棟、医療療養、介護医療院という、ケアミックスの機能をもつ病院としての役割を果たしています。
また、私たちは慢性期医療の分野になりますので、地域の急性期、回復期の病院との連携、開業医の先生方との病診連携は重要です。診療所に通われている患者さんで認知症が疑われる場合、当院にご紹介いただくケースは多いですね。また、地域の介護施設さんとも連携を進め、困った時には入院していただける体制ができています。
それから、豊橋市では医師会が「東三河ほいっぷネットワーク」という情報連携ネットワークを作っています。医師会の先生方だけではなく、訪問看護事業者の方、介護施設さんが繋がることで、地域の皆さまに必要な情報が共有できる仕組みです。今後は、このネットワークが強化されていくことにも期待しています。

●地域住民と関わる機会を増やし、頼られる病院から、手を差し伸べる病院へ

私たちは、地域の皆さまが困ったときにいつでも頼れる存在であるべき、という考えのもと活動しています。さらに今後は頼ってもらうだけではなく、「困っている」という声を出しにくい人に対して、こちらからリーチしていく必要もあると考えています。
8年前に始めた認知症予防脳ドックも、地域の皆さまに元気な頃から当院との接点をもっていただきたいという思いで運営しています。さらに、子ども食堂や、講習会「さわらび大学」、8月の親子福祉体験講座、11月の文化祭といったイベントを通して、地域の皆さまと交流させていただいています。今後も、そのような機会を更に増やしていきたいですね。ご自身やご家族が認知症になったときに初めて関わりをもつのではなく、地域の方が普段から行き来できる、開かれた場所であることが理想です。
当院は今年60周年を迎えます。今後も基本理念に忠実に、同時に社会の変化と行く末を見極め、変化に先回りして対応できる病院でありたいと考えています。それをあるべき姿として、1人でも多くの皆さまの幸せの役に立てるような病院を目指し、医療に取り組んでまいります。

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