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成田市の医療を支えて120年。地域クリニックや急性期病院と連携し、慢性期治療を中心にこれからも地域に貢献したい

千葉県

医療法人鳳生会 成田病院

藤崎 康人 院長

関東

約120年という歴史をもち、長く成田市の医療を支えてきた成田病院。一般病棟の他に、療養病棟やリハビリテーション病棟、精神科病棟なども併設されており、幅広い医療で地域の皆様の健康に貢献されています。病院の理念や課題、働きやすい職場環境づくりや地域医療連携についてなど、幅広いテーマで藤崎 康人院長にお話いただきました。

「公平・公正・平等」の理念のもと分け隔てない医療を提供したい

当院は地域医療にずっと関わってきた総合病院ですので、何よりも地域の皆様に便利に使っていただけること、病気になった際にはできるだけ負担なく良くなっていただくことを第一としています。地域の皆様の利便性という面では、365日昼間は休まず通常外来を開いたり、路線バス会社にご協力いただいて当院に停留所を作ったりといったことにも取り組んできました。また、ご高齢の方向けの大規模な療養施設も併設していますので、ご家族で診ることが難しくなった高齢患者さんの受け入れも積極的におこなっています。
院のモットーは「公平・公正・平等」です。一般的な医療保険内で可能な医療を、できるだけ最新の内容にアップデートしながら、より多くの患者さんに提供することが公正な医療だと考えています。そうしたモットーのもと、どの患者さんにも分け隔てなく医療を提供できるよう日々努めています。

コロナ禍の患者数減・収入減で、人材確保や給与水準保持が課題に

目下の経営課題は、コロナ禍の影響による患者さんの減少と収入の減少で、職員給与の確保と一定のレベルを保った人材確保が難しくなっていることです。ただ、これは当院だけではなく国の多くの医療機関が直面している課題ではないでしょうか。
2020年はコロナ禍による受診控えで、日本の総医療費が約1兆円、比率で言うと例年より約2.5%減ったと言われています。つまり、ほとんどの病院でそれくらい患者数・収入が減っているということです。2.5%減の状況では、当然人材確保や給与維持は難しく対策が必要になります。当院は今のところ、銀行からの借り入れや、コロナ病棟開設に関する補助金、予防接種などの協力金があり、それでひと息つけてはいますが、今後さらなる工夫や取り組みが必要だと考えています。

できるだけ残業をさせない、働きやすさや子育て環境に配慮した職場づくり

当院では、スタッフの働きやすい職場環境づくりを心がけています。そのためにおこなっているのが、できるだけ残業をさせない、看護師さんの定員を超える入院患者さんをとらない、子育て環境に配慮する、といった取り組みです。
まず残業に関してですが、当院は救急車受け入れが年間約600台とそこまで多くなく、近隣の成田赤十字病院、国際医療福祉大学成田病院などが急性期病院として救急を主に受け入れてくれている状況です。そのため、当院はかかりつけ患者さんの救急や昼間の救急は受け入れていますが、夜間はそこまで数が多くないんです。そうした背景から、残業時間を減らすことができています。
次に看護師さんの定員ですが、入院患者さんに対する看護師比率が10:1を超えないように制限しています。とは言え入院をお断りしているわけではなく、入院患者さんの数も自然とそれくらいで推移している状況です。実は過去に、ある医師がスタッフに無理な体制を敷いたことがあり、その時多くの看護師が離職し、その影響から患者さんが減って数年赤字が続いたことがあったんです。その経験からも、余裕のある体制づくりは常に気を付けています。
最後に子育て環境ですが、同法人系列の認可保育園が隣接市にあり、職員の子どもはそちらに預けられるようにしています。また、院内に病児保育施設があり、病気の時はそこに預けることも可能です。

コロナ病棟開設については職員のコンセンサスをとることが困難だった

新型コロナ病棟は2021年の夏頃から始めました。その時期になったのは、準備や職員のコンセンサスをとるのに時間がかかったことが理由です。コロナが流行し出した2020年春頃は、どれくらい危険なものなのか、本当にちゃんと感染防御すればかからないのか、といった不安が大きく、コロナ病棟開設に踏み切れませんでした。
そうしている間に、今年の2月に併設の老人保健施設でクラスターが出てしまったんです。13人程度の感染で済んだのですが、そこで感染対策に関する準備の甘さや危機感が足りなかったことを痛感し、またコロナ病棟開設は先送りになったんです。
その後、今年の夏に第5波が起こった際に、「全国的に感染者が増えているし、当院もコロナ病棟を開設して受け入れるべきでは」という職員が出てきてくれて、2月のクラスターを経験した職員を中心にコロナ担当可能なスタッフを募り、コロナ病棟を開設することができました。
ただ、開設まもなく第5波が急減したため、まだあまり患者さんの数は受け入れられておりません。それでも、以前より感染対策の意識は強くなりましたし、職員のコロナに対する拒否反応もなくなってきたので、その点で意義はあったと思います。

地域の急性期病院やクリニックと連携し、中核的な慢性期治療の役割を担う

当院では二次救急は受け入れていますが、基本的には急性期治療ではなく慢性期治療が中心の病院です。そのため地域医療においても、近隣の成田赤十字病院や国際医療福祉大学成田病院などの急性期病院に入院されていた入院されていた患者さんが、自宅に退院された後の治療やリハビリが主な役割となっています。
近隣の急性期病院とは、情報ツールを活用して診断情報提供書や画像などを共有し、早く確実に患者さんの受け入れができるようにしています。また、急性期治療後に、事情があったり療養が必要だったりという理由でご自宅や施設に戻れない方もいらっしゃいますので、そうした患者さんの受け入れも強化しているところです。
地域のクリニックや診療所との連携ですが、紹介があれば遅滞なく患者さんを受け入れることができています。基本的には連携室を介していますが、医師会などによく顔を出して地域のお医者さんと顔見知りになっているので、直接担当医師に電話がかかってくることも多いですね。
それから、在宅医療にも力を入れています。成田市は都心部と違って患者さんの家や施設が離れていることが多く、在宅医療があまり進んでいない状況です。そのため可能な範囲でニーズにお応えしていこうと少しずつ取り組みを進めているところです。

事務的負担はあるものの、ITツール導入より人件費に予算を充てている

医師の働き方改革については、前述した通り残業があまり多くないため、そこまで焦ってはいない状況です。ただ、コロナワクチンの接種業務に関連して、事務作業で薬剤部ワクチン担当者の負担が増えて残業が多くなっているので、そこは解決しないといけないと考えています。ワクチン関連以外でも、レセプト集計・入力作業など事務面での負担が多いことは課題ですね。
その理由としては、電子カルテなどITツールをあまり導入できていないことが挙げられます。電子カルテ導入に関してネックになっているのは費用面です。当院は地域の中では看護師さんなどの給与が高めだと思うのですが、IT機器などに予算をかけない代わりに人件費を高く保てているという面があり、機器導入を進めると人件費を下げざるを得なくなります。また、急性期治療には電子カルテは非常に有効だと思いますが、当院は慢性期治療が中心なのでそこまで必要性が高くないのでは、という考えもあり、今のところ導入せずに人数をかけて手作業でやっている状況です。

まずはコロナの受診控えで減った患者さんを戻すことから取り組みたい

今後については、まずコロナ禍で減った患者さんの数と診療報酬を戻すことに取り組んでいきたいです。特に、風邪などの感冒によるによる初診患者さんが圧倒的に減っているので、そこをどう戻していくか。それから、精神科の患者さんもコロナ以降受診控えが多く、中にはそれで薬が切れたままになり悪化した患者さんもいらっしゃるので、そうした方のケアも考えていく必要があります。
中長期的には、地域における医療の需要に後れをとらず、常に一歩先を見据えて病院の形を作っていきたいです。予想通りにいかないことも多いですが、それでも常に先を考えて試行錯誤しながら、これからも地域の皆様に便利に使っていただける病院であり続けたいと思います。