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地域に根差した患者様中心の医療がモットー。急性期医療・回復期医療・療養施設を併せ持つケアミックス型病院のアイキャッチ画像

地域に根差した患者様中心の医療がモットー。急性期医療・回復期医療・療養施設を併せ持つケアミックス型病院

大阪府

社会医療法人協和会 加納総合病院

久保田 真司 病院長

近畿

大阪市北区で、急性期医療・回復期医療から慢性期医療まで併せ持った地域密着型ケアミックス病院として、地域医療に貢献する社会医療法人 協和会 加納総合病院。新型コロナウイルスの感染拡大にも、早期から発熱外来や受け入れ病床を整備して対応されてきました。久保田 真司 院長に、病院として大切にされている思いや地域医療連携、今後の取り組みなどについてお伺いしました。

●急性期医療と回復期医療、さらに慢性期医療を併せ持つケアミックス型の病院

理念としているのは「地域に根差した患者様中心の医療の実践」です。地域の患者さんが安心して暮らすことができる良質かつ高度な医療を届けること。それが使命と考え、病院運営において中心に据えております。
当院は来年に70周年を迎え、私が3代目院長になるのですが、過去にこの病院の立ち位置を決定づけた出来事があったと聞いております。それは、1970年に当院のすぐそばで起きた天六ガス爆発事故です。地下鉄工事の際に事故が起こり多数の死傷者が出たのですが、そのときに多数の傷病者を診て、「救急をメインとした急性期病院を作ろう」と先々代がお考えになったそうです。ですから中心は急性期医療なのですが、その後地域のニーズを考え、介護や療養の施設も必要だということになり、現在の急性期と回復期、慢性期を併せ持つ地域密着型ケアミックスの病院となりました。
急性期だけ、もしくは回復期だけ診て、その後は他の病院・施設やご自宅に戻っていただくというのではなく、急性期から回復期、必要に応じて慢性期まで一連の流れで診られるのが、当院の特徴です。この特徴を今後も維持して経営していきたいと考えています。
職員に関してですが、理事長先生がいつも「挨拶のできる人になりなさい。挨拶をしても返してくれない先輩の言うことは聞く必要ないよ」とおっしゃっていまして、挨拶は特にみんな心がけています。患者さんからも「いつも笑顔で挨拶してもらえる」とご評価いただいていますね。

●病床利用率を意識して多くの患者さまの受け入れ体制を整える

稼働病床数の目標を提示して、多くの患者さまの受け入れを行うよう全職員が意識をもって日々運営を行っています。救急搬送についても、日中は常勤の救急専門医が積極的に受け入れを行っていますが、夜間も内科、外科、脳神経外科の3診療科で当直体制を組んで救急搬送の受け入れを行っています。救急の専門医は増員を予定しており、更なる救急医療体制の充実を行う予定です。

●看護師、医師の確保が課題。重視するのはコミュニケーション

高度急性期、急性期、回復期、慢性期の医療機能をもったケアミックス病院ですので、それぞれの病棟で勤務できる幅広い医療技能を有した看護職をホームページの充実や看護フェア等で広報をするなど、取り組みを行って採用をしています。
医師については、ほとんどが大学医局からの派遣になります。大学の医局とは緊密に連携することで、優秀な医師を派遣していただいています。最近では、医局からの医師だけではなく、独自に採用も行っており、放射線科の医師を採用するなど、積極的に医師の体制の充実を図っています。
もう1つ、診療面の課題として今後遠隔診療をどのように取り入れていったらいいのか、ということを考えています。開業医さんならシステム的に患者さんと1対1でできると思うのですが、当院のような規模の病院で実現するにはどうしたらいいのだろうか、と悩んでいるところです。そのあたりのノウハウなども取り入れていきたいですね。

●職種を越えた連携のために、全部署参加のミーティングを定期的におこなっている

今後は働き方改革に向けて、タスクシフトで医師の負担を分散していかざるを得ません。現在、全ての外来病棟に医療クラークさんに入ってもらい、医師の事務処理などの業務をしてもらっています。それから内科に関しては、ユビーAI問診を導入したことでかなり業務負担の改善になりました。
しかし、働き方改革に対応するには、医師の業務だけを考えていては難しいと思います。なぜなら、病院には医師だけでなく非常に多種多様な職種の方がいるからです。看護師、臨床検査技師や放射線技師、リハビリテーション技師もいれば、医事課の職員もいます。さらに栄養課や薬剤部もあれば、総務や経理もあります。働き方改革に対応するにはそれら全体の連携が必要です。そうした考えから、月1回各部署スタッフが一堂に会して議論するミーティングを実施するようになりました。
約1年前から始めたのですが、だんだん各部署の垣根がなくなり、「その業務ならこちらでやります」とか「シフトを分けて協力しますよ」など、これまでにない連携がとれるようになってきました。また、理事長や院長の私も参加しているのですが、みんな立場や役職を越えて遠慮なく発言し合えているので、その面でも非常に良い取り組みだと感じています。

●新型コロナウイルスには早期から発熱外来・コロナ病棟を用意し対応した

新型コロナウイルス感染症の対応に関しては、ダイヤモンドプリンセス号の頃から検討を開始して、大阪市内で民間病院として最初に受け入れを開始しました。対応するならば万全の受け入れ体制を整える必要がありますので、発熱外来やコロナ病棟も早くから立ち上げました。
発熱外来については、以前に新型インフルエンザ対策で診療テントを購入しており、それを活用することで設備面では対応が可能であったことから、感染対策専任のナースを配置して、検査体制を進めていきました。
病棟ですが、元々新病棟を作る際に陰圧室を準備していたり、2009年の新型インフルエンザのときに陰圧ユニットを購入していたり、コロナ関係なく感染症対策は考えていました。結核疑いの患者さんなどに使っていたのですが、それをそのままコロナ対応に使うことができました。その後大阪府から「病床を増やしてほしい」「病棟単位で対応してほしい」と通達が来たので、2020年の11月頃に1つの病棟をゾーニングしてコロナ病棟にしたという流れです。
その後変遷はありましたが、大阪で最も深刻な状況に陥った第4波のときには、最大で25人くらいのコロナ入院患者さんを受け入れし、その中で5人ほどは人工呼吸器も必要な状況の中で診療を行いました。それでも院内クラスターも起きず対応できたのは、院内の従事者全員の力だと思っています。早期から準備をして対応したことで、結果として上手く運営できたのではないでしょうか。

●今後は地域の開業医とも連携し、在宅医療にも取り組みたい

地域医療連携ですが、大阪市北区、都島区地域を中心に多くの医療機関、開業医の先生方に連携医療機関としてご登録いただき、地域連携室を通じて連携を密に行なっています。大阪市北区には北区医師会と大淀医師会の2つがあり、当院は大淀医師会に所属するのですが、大淀医師会はもちろん、北区医師会の先生方とも親密にさせていただいていますね。もう何十年と北区との病診連携、病院連絡会というのがあり、北区・大淀関係なく連携を図れる情報交換会を年3回おこなっています。
今後は、地域の先生方と協力して在宅医療により力をいれていきたいと考えています。冒頭でもお話したように当院は急性期から慢性期までをおこなっているのですが、今後の課題は在宅医療の強化だと思っています。ただ、在宅医療となると当院だけでは難しく、地域との連携が重要です。そこで、2年ほど前から大淀医師会の先生方と在宅医療の勉強会をおこなっています。
本来の地域医療は、まずかかりつけ医に行き、そこから大きな病院に行って、治療が終わったらかかりつけ医にお戻しし、そのかかりつけの先生が在宅医療もしてくれるというのが理想だと思います。しかし、大きな病院から地域に戻ってもかかりつけ医がおらず、結局民間の在宅業者が受け皿になっているという現実もあります。まだ具体的な構想には至っておりませんが、そのあたりは当院と地域の先生方で連携して少しずつでも変えていければ、と考えています。

●これからも地域に根差した患者さん中心の医療を維持することが大切

今後は大きく何かを変えるというより、患者さん中心の医療、そして救急や介護といった従来から担っている医療を維持し、確実に提供していくことが第一だと考えています。その上で、地域医療連携のところで話したような、在宅医療の取り組みなどを進めていければと考えています。
また、コロナ禍で最近は開催できていないのですが、年1回地域住民の方にモニター参加いただいて、病院の治療を紹介したり、皆様から当院に対するご意見・ご要望を伺ったりする会をおこなっていました。コロナ禍が落ち着いていけば、そうした会も再開していきたいですね。これからも「地域に根差した患者様中心の医療の実践」という理念にのっとって、地域の皆様の健康に寄与できるよう努めてまいります。