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赤ちゃんからお年寄りまで、誰もが安心して受診できる地域医療環境を整える

京都府

医療法人社団石鎚会 京都田辺中央病院

古川 啓三 病院長

近畿

京都府南部の医療を支える京都田辺中央病院は、人口増の地域に対応するべくさまざまな診療科を揃えた病院です。出産から高齢化に備えた医療、コロナ診療にも対応しており、「この病院に来ればどうにかなる」という存在を目指しています。病院のさまざまな取り組みや今後の展望について、詳しくお話をお伺いしました。

地域を支える病院として、赤ちゃんからお年寄りまで適切に対応できる医療体制を整える

この辺りは全国でも珍しく人口が増えている地域です。当院は京田辺市で唯一の急性期病院として、地域の医療を支える存在でありたいと考えています。患者さんに質の高い医療を提供することはもちろん、職員にとっても働きがいがあり、かつ健全な経営も実現していくのが基本方針です。

人口が増えているということは、赤ちゃんからお年寄りまで幅広い受診層があるということです。幸いにも、この地区は住みやすいと多くの方々に思っていただいているようですので、地域のニーズに合った医療環境作りを進めています。京田辺市は人口約7万人の都市であり、同様の人口規模であれば地域によっては小児科や産婦人科がない病院もあるでしょうが、当院では周産期医療や小児医療をしっかりカバーできるよう診療科を備えています。若い人たちが増えるということは出産数も増えることが予想されるので、そのような地域住民のニーズに応えていきたいと思います。

またどのような地域でも問題になると予想される高齢化に関しても、幅広く対応できるようにしています。京都市内などと比べると高齢化の影響は緩やかですが、5~10年後の地域のあり方も見据えて、在宅医療の分野にも今後さらに力を入れていく考えです。

採用活動に力を入れ、多職種で若い職員の割合が多い活発な職場環境

昔の病院で働く職種といえば、医師や看護師・薬剤師などコンパクトなものでしたが、現在では職種も多様化しています。リハビリのスタッフ、ドクターズクラーク、それに救急救命士など新しい職種が増えているため、当院では男女問わず若い職員の割合が高いです。

もちろん他院同様、「介護職の職員が集まりにくい」といった人材確保の問題はあります。苦戦はしていますが、そのあたりをみんなでカバーし合えるよう努力していきたいです。

また人手不足を解消するために、法人全体で採用サイトに力を入れています。毎年、新しい職員が入るとはいえ、どうしても退職する方も出てきます。そこで組織的な対策が必要ということで、数年前からプロジェクトを発足して取り組みを始めました。また、看護師さんの中途採用にも積極的に取り組んでいます。ブランクがある看護師さんが復帰できるようにプログラムを組んで研修を行った結果、無事に現場復帰された方も少なくありません。看護師のほかにも介護職、臨床工学技士、PT、OT、STなど、さまざまな職種に対して、法人全体で積極的な採用活動を行っています。

コロナ診療と通常診療を両立し、かつ健全な経営を続けるためのさまざまな工夫を行う

最近の難題と言えば、やはりコロナ診療と通常診療の両立です。当地域のコロナ患者さんはほぼすべて当院で引き受ける状況でしたので、通常診療とどのように分けて、かつ、いかにクラスターの発生を抑えるかが課題でした。

幸いにも古い病棟が空いており、コロナ診療はそちらで対応しました。通常診療を行う病棟と構造的に分けられたため、比較的スムーズに対処できたと考えています。しかし、やはり通常診療の方は「病院に行ったらコロナに感染するのではないか」という恐れからか、患者さんの受診抑制があり、経営的には非常に苦しい面もありました。

そのためオンライン診療をはじめ、電話での聞き取り調査や再診、薬の手配を行うなどさまざまな対策で乗り切りました。当初は、なかなか積極的に取り組みをアピールできない時期もありましたが、コロナワクチンの接種開始をきっかけに状況が改善し、患者さんにも安心して受診していただけるようになったと感じています。

入院患者数や受診患者数、救急車の搬入台数、手術数などの動向を見ると、現在はコロナ前までの水準まで戻っており、通常通りの診療ができるようになりました。受診患者数が戻ってきたということは、それだけ地域の皆さんに信頼していただいているということでもあると思います。今後もこのような状況が続くよう、気を引き締めて対応していきたいです。

地域医療の連携のため、コミュニケーション方法に工夫をこらす

最近では近隣の病院と情報交換を目的とした直接対面での会合は難しいですが、Web会合やメーリングリストを利用した情報交換は盛んに行われています。例えば年に2回、地域医療連携懇話会として講師の先生をお呼びして勉強会を行っていたのですが、現在はWebでの開催になっています。対面式の交流会と同じような効果があるかはまだわかりませんが、試みを進めているところです。また、京都府医師会、京都府病院協会、公的・公立病院の部長会、私立病院協会など、さまざまな団体と関わりを持ち、ほかの病院の状況や取り組みなどをヒアリングして参考にしています。

また、以前は地域住民とのコミュニケーションとしては、年に1回「健康まつり」という住民参加型のイベントを開催していました。血圧や血糖値を測れる機器を置いたり、心肺蘇生の方法を伝えたり、薬剤師や看護師さんの説明や講演会を聞けたりして、毎年多くの方にお越しいただいていました。今はそのような機会を持つことも難しいので、形式を変えて地域のみなさんとのつながりを作っていけるような方法を模索しています。職員の互助会による運動会や旅行なども今はできないので、状況が落ち着いたらまた何らかの方法を考えていきたいですね。

医療機関として安全が第一ではありますが、地域の医師や住民の皆さん、職員同士の交流は、医療の質を上げたり、患者さんに病院をよく知ってもらったりするためにも必要だと思います。多少時間がかかるかもしれませんが、今後も地道に取り組みを続けていかなければならないと考えています。

業務の分担をできるよう研修を行い、一人当たりの労働時間の短縮を目指す

医療というのはどうしても「フェイス・トゥ・フェイス」の要素が必要であり、すべてをオンラインで行うわけにはいかないので、単純に労働時間を削減するのは難しいところです。1時間の残業を減らすには、残った仕事を片付けるための人員が必要になります。人を増やすには経営的に難しいこともありますし、募集しても集まるとは限りません。かといって単純に医療の量を減らすわけにもいかないでしょう。少なくとも現状を維持するためには、どのようにして業務の効率を上げるのかが重要になってきます。

たとえば医師の場合、1人の患者さんを診るのに1時間かかるとして、5人で5時間かかっていたのを4時間にする必要があります。そのためには、医師にしかできないようなコアの部分だけに集中してもらい、ほかの職種ができることはタスクシフトして効率を上げるという方法があります。そのような連携を取るためには、スタッフへの教育や研修が不可欠です。

法の改正により、今までは医師や看護師以外には認められていなかった業務の一部を、ほかの職種が行えるようになったものがあります。しかし、例えば注射を打つ経験をしていないスタッフにいきなり「注射してみて」と言っても、できるわけがありません。そこで、ある程度研修や実習を行い、タスクシェアできるように取り組んでいます。直近の取り組みとしては、救急救命士や臨床工学技士がコロナワクチンの接種ができるよう、京都府とも協力して実技研修を行いました。看護師一人あたり50人注射しなければならないところを、フォローが入り30人で済むと、結果的に一人当たりの労働時間を大幅に削減できます。

もちろんこれはワクチン接種だけの話ではありません。日常診療の中でもこの動きは広まっています。法改正で、臨床検査技師や放射線技師などができる業務の幅が少しずつ広がっていることや、技術革新や機器の性能向上の影響もあるでしょう。当院では昨年末に「ダビンチ」という内視鏡手術支援ロボットを導入しましたが、これを使うと、今までの手術は医師2人に看護師2名必要だったところ、看護師は1名(そのほか臨床工学技士1名)で行えるようになります。

このように当院では労働時間短縮のため、今後もタスクシェアを積極的に進めていく予定です。また医療の質を維持するためにも各種の研修を盛んに行い、環境の改善に努めていきたいと考えています。

地域で完結する医療環境や、災害時にも強い病院作りを目指す

当院の所在する地域である、宇治市や木津川市を含めた京都府南部にはおよそ60万人が住んでおり、人口は今後一定数増えると予測されています。しかし、京都市内や大阪、奈良とも少し離れており、特にご高齢の方が遠くまで出向くのは困難です。そこで地域住民を支えるためにも、この地域で完結する医療を目指していきたいと考えています。

もちろん、高度医療や特殊医療、先進医療というのはまだ難しい部分もあります。しかし、日常診療に関してはここで治療や手術を行い退院、さらにその後のリハビリまで対応できるのが理想です。診療科に関しては、先程も述べましたように非常勤なども含めると多くの分野で対応できる体制を整えています。今後は病院のリニューアルも予定しているので、手術の内容や設備といったものも含めて、地域に根ざした病院として医療の内容や質を上げていくことが、私たちのミッションであろうと思っています。

また災害時にも、拠点として機能できる病院であるように環境を整備しています。たとえば、当院の近くを流れる木津川が氾濫すると水没の恐れがあるため、高さ3メートル以上になる2階以上のフロアを手術室にしたり、レントゲン機器やサーバーを3階に置いたりして対応しています。万が一停電が起こっても、1週間ほどであれば自家発電で持つような設備も備えています。現在はコロナ対応に追われているところが大きいですが、地震や火災、水没といった災害時にも強い病院になるよう、ハード面・ソフト面ともにさらに改善していきたいです。

当院は人口増の地域を支える急性期病院として、赤ちゃんからお年寄りまで適切な医療を提供できる病院を目指しています。理想は「あの病院に行ったら何とかしてくれる」と地域の皆さんに思ってもらえるような存在になることです。ここで完結できるような地域医療を目指すのはもちろん、職員にとっても働きやすい環境を提供し、かつ健全な経営を行っていけるよう今後も引き続き努力していきます。