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コロナ時代でも安心な治療体制と在宅・介護までのトータルサポートで患者ファーストの医療を

北海道

医療法人重仁会 大谷地病院

北海道

「信頼と真心」を理念にして、患者さんやそのご家族に寄り添った医療を提供している大谷地病院。北海道札幌市に位置する大谷地病院では外来受診や入院治療だけでなく、在宅生活まで包括的な医療と支援を行っています。また、精神科救急病棟を運営しており、24時間・365日の救急診察も実施。理想の病院の姿や病院経営者として心がけていることなどについて、田尾 大樹 病院長にお話しいただきました。

自分の大切な人を安心して預けられる病院であり続けること

私が病院長として大切にしていることは、患者さんの気持ちに寄り添った医療を提供することです。精神科というのは身体科を受診するよりも心のハードルが高いと感じている患者さんが多いのが特徴です。精神的に救われるかどうかというのがとても大切で、患者さんに寄り添った対応をするように職員にも常に伝え続けています。

例えば精神科では、場合によっては患者さんを拘束しないといけないこともあります。しかし、安全面ばかりを重視して患者さんの行動を制限するのではなく、なるべく拘束する機会を減らすような仕組みを強化すべきと考えています。

私が目指す病院は「自分の大切な人を預けたいと思える病院」であり続けるということです。私自身ももちろんですが、病院に勤めるスタッフにもこのような想いで仕事をしてほしいと考えています。「自分の家族や親戚などの大切な人を入院させたい」と思える病院であり続けることを目指して、日々取り組んでいきたいですね。

幹部スタッフの育成だけでなく、採用にも力を入れていく必要がある

病院を経営するにあたって、幹部スタッフをどう育てていくのかということはとても重要な問題です。外部講師を呼んでリーダーシップ研修を実施したり、院内で勉強会をしたりしてスタッフの育成に努めています。このような試みは一時的にやっても意味がないので、試行錯誤をしながら、今後も継続して取り組んでいかないといけない部分だと考えています。

また、病院スタッフをどう育てるのかも課題ですが、採用にも力を入れていかないといけません。札幌は過疎地より比較的にスタッフを集めやすい地域ではあると思いますが、これからどんどん生産人口の減少に伴い、給与などの待遇面以外に、働きやすい風通しの良い組織づくりを目指していく必要があると考えています。

私は採用の際に行う面接を非常に重視しています。医療・介護・福祉業界では特に、元来の優しさ、誠実さや素直さを持っている人材が重要であると考えており、当法人ではそのような方々を求めています。今までに医師、看護師や専門職の面接はできるだけ多く行ってきたので、面接をすればその人がどんな人なのかということは何となく理解できます。個人的には、面接での印象以上のパフォーマンスを実際の仕事で発揮することはないと思っているので、残念ながら面接で良くないと感じた方はドクターでもお断りすることも多いです。病院にポジティブな影響を与えてくれる人を採用していきたいですね。

病院での治療だけでなく、在宅医療や介護サービスを充実させていく

当病院は通常の診察や入院治療以外に、在宅支援などにも力を入れています。認知症の患者が増えており、有料老人ホームや在宅医療など含めて新しいことを展開していく必要があると考えています。

共同住宅や施設に退院した場合、そこでのケアレベルが低いと、折角、病院での入院治療で良くなっても、再び病状が悪化してしまうというケースがあります。これからどんどん高齢者が増えていく中で、病院運営のみに止めるのではなく、在宅医療や介護サービスを充実させることで、経営的にリスクヘッジしていく必要があると考えています。

病院経営者として全体のバランスを見ながら判断していく

病院の経営を行うにあたっては、まず経営コストを増やさないことが重要です。
精神科病院で一番多い経費はやはり人件費です。業務が忙しくなっていくと人員を増やしてほしいという声がスタッフから上がるケースがありますが、必ずしもそれよって問題が解決するわけではありません。人員を増やしたとしても、幹部がスタッフをまとめきれないと逆に効率が悪くなることもあるのです。つまり、有能な幹部を育てないと無駄が増えてしまうのです。

組織が大きくなればなるほど、常に複数の問題が他部署で同時発生する可能性が高まりますが、全体のバランスを俯瞰して見極め、優先順位をつけて解決させる能力がトップには求められます。スタッフの不満が高まることは、患者さんへの対応の悪さにつながるなど、病院全体に負のスパイラルが起こってしまうことにつながりかねません。

業務の効率化という点では、ICT関連の新しいシステムを取り入れる方が効率が上がる場合もあります。業務効率化を目指して、当病院では平成23年からオーダリングシステムをそして平成25年より電子カルテを導入しています。

電子カルテ導入のメリットは、効率的に情報を共有できること

紙カルテから電子カルテに切り替えたことで業務を効率化できたと考えています。コストの問題もあって、精神科では電子カルテはまだ約半分以下の病院にしか導入されていません。

当院でも電子カルテを導入する前は、年配の医師や職員からの反対意見が強くなるかと心配していましたが、想定していたよりはスムーズに導入することでできました。年配の方であっても、操作練習により時間をかける事で、電子カルテに対してのアレルギーが減り、今では若手職員と同様に問題なく使ってもらえるようになりましたね。

電子カルテの一番のメリットは、情報が伝わりやすいという点です。紙カルテでは医師の字が読みにくかったり、情報をうまく共有できないケースもありました。電子カルテは、欲しい情報をどこでも簡単に閲覧できます。院内の全員で情報共有できるので、業務を効率的に行える部分が増えました。さらに紙カルテでは、特に書類の多い精神科において、何度も同じ内容の記載をしなくてはならないようなことがありましたが、電子カルテではそのような必要がありません。電子カルテを導入することで業務効率化できる部分も多く、費用対効果は高いと考えていますね。

新型コロナウイルスへの対応

当病院では新型コロナウイルスのクラスターが発生してしまい、その対策には非常に苦労しました。職員が新型コロナウイルスに感染し、そこから広まってしまったのです。院内でのコロナ対策は徹底して行っていましたが、無症状者からの感染だったため防ぎ切ることが難しかったのです。

コロナのクラスターを収束させるまでに2ヶ月ほどの時間がかかり、外来診療も1ヶ月半ほど止めなくてはならない状況が続きました。事態を収束させるまではとても大変でしたが、専従で対応してくれる有志の医師やスタッフを募り対応しました。コロナ対応してくれるスタッフには臨時の手当をプラスして支払ったり、宿泊用のホテルなども手配したりしました。結果的には誰ひとり辞めることなく、この事態を乗り越えられたことは非常によかったです。

その後、重点医療機関として新型コロナウイルス患者を受け入れることになりました。院内クラスターが発生した経験を生かし、コロナ対策は万全にできるような体制を構築することができましたね。