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『人』を中心に、地域に在り続ける。そのためのあらゆる変化を厭わない臨機応変な病院経営とは

愛媛県

HITO病院

石川 賀代 理事長

中国・四国

2013年4月。石川病院から院名と施設を刷新し、職員と地域住民へのより良い環境づくりを行うHITO病院。人を中心とした病院経営を実施するためにリスクを徹底的に排除するよう努める石川 賀代理事長へ、地域連携やICTの利活用に関してのお考えをお聞きしました。

病院名の変更と同時に理念を刷新。旧病院の理念を引き継ぎ、新たな病院へと生まれ変わる

当院は『HITOを中心に考え、社会に貢献する』ことを経営理念として掲げています。経営における判断に関しては、これらの理念に基づいているかという点と、地域の中でいかにお役に立てるのかという点を常に問いながら病院経営を行っています。

2013年4月に新しく病院を建て直すことが決まった際に、代替わりのタイミングでもあったため病院名を変更し理念なども刷新しました。救急医療において社会医療法人化したということもあり、地域の救急医療を守り続けるという旧病院時代からの理念に加えて、ステップアップするためにも『HITO』という行動指針に基づいて病院を作り上げることを職員とともに定めました。

経営をリアルタイムで把握し、リスクを徹底的に排除する。理事長としての役割とは

当院は理事長と病院長の役割を切り分ける体制を取っています。病院長は病院運営のマネージャーのような役割を担い、理事長である私は経営のバランスや人の確保など、今後のリスクとなるものの排除を行う役割を担っています。

理事長と言うと大層に聞こえてしまうかもしれませんが、実際は泥臭い役割です。世の中の情勢が常に変わる今日において、病院経営におけるリスクは常に存在します。例えば、病床稼働率が大幅に上がった際にはスタッフの消耗などを懸念して新しい人材を確保するなどの打ち手が必要です。資金繰りなども含め、リスクヘッジのために先手を取って動いていくことが私の役割であると考えています。

経営におけるリスクをいち早く察知するために、経営数値をダッシュボード化してリアルタイムでデータを見るようにしています。以前は収支速報を1ヶ月に一度見るような形でしたが、新型コロナウイルスの拡大後において外来患者数の増減が激しくなり収益の振り幅が大きくなったこともあり、月に一度の数値観測ですと間に合わない状況となりました。

そのため現在は外来患者数や入院患者数、稼働日数と在院日数、単価、加算などのデータをクラウド上に抽出し、リアルタイムで職員が閲覧することができるようにしています。

以前は病院経営においての指標として、収入のみを見ていたのですが、今後は人件費も含めてコストをいかに抑えるかという視点でICTの利活用などを進めています。新型コロナウイルスが拡大してからは特にコスト面に注視して収支とのバランスを確認しています。

収支のバランスを測りながら働き方改革を推進する

収支のバランスを取るためには、収益を最大化させることと同時にコストを抑えることが必要です。コスト面においては、やはり時間外業務の把握と効率化が肝要ですので勤怠情報をリアルタイムで抽出し、時間外の勤務時間数を日々可視化できるような体制を整えています。

時間管理を職員全体に意識してもらい、要因を分析し、対策を講じることにより、コストを削減することができています。勤務時間を正しく把握し効率化を図る事によって、時間外勤務に関する人件費は2年前と比べると半分まで削減されています。

さらに、コロナ禍においては、出社することもリスクがありますので当院では多様な働き方を取り入れています。例えばテレワークを推奨しており、事務スタッフの中には沖縄在住で経営企画として勤務している職員もいますし、診療情報管理室の職員は月に1,2回ほどしか出社しない者もいます。

課題は日々変わりますが、今後も引き続き収支のバランスを取りながら働き方改革を推進していきたいと思っています。チームでとりくみ、スピード感をもって解決していきたいです。

AIなどのテクノロジーを駆使し、人がすべき業務へリソースが割けるような体制作りを

今後はAIと患者さんのデータをどのように利用していくかに興味があります。一部現在でも、転倒転落を防止するアプリを利用しています。リハビリ治療を受ける患者さんのほとんどが高齢者なのですが、回復期に近づき動けるようになってくると転倒転落の危険性は高まります。そこで、看護師がカルテに記載した患者さんの情報をAIが分析して、転倒の危険性を予測する形で利用しています。

今後、医療的なケアが必要な患者さんの割合が増えてくることが予想されます。一方で、その分だけ人を投入できるかというとそうでもありません。だからこそ、必要であれば一部AIやロボットを利用するなどテクノロジーを駆使しつつ効率化し、人が本当に必要な業務にはリソースを割ける環境を整えることが必要だと思っています。

効率化において直近で検討しているシステムに関しては、予約システムや見守りシステムです。これらを極力コストをかけずに実施していきたいと考えており、企業との共同開発を行なっています。

当院では完成したシステムを安価に導入することができ、企業としては試作品として作成したサービスを当院の現場で利用することで、生のフィードバックを受けられるというWinWinの関係を築くことができています。

また介護と医療をつなぐツールの導入も検討しています。介護の現場では音声入力など必要なシーンもありますので、それらのツール導入を実施していこうと思っています。

地域の医療機関と住民に開かれた病院を目指す

地域に在り続ける病院としては、地域住民とのふれあいが非常に大切だと考えています。
そのため当院では、地域包括ケアシステムの基盤づくりとして様々な取り組みを行なっています。

具体的には小学校の夏休みが始まる1週目の週末に『HITOフェスタ』というイベントを定期的に開催していました。小学生に当院の施設や職員の仕事を知っていただくことを目的にはじめた取り組みですが、家族単位でいらしていただけることが多く、今では県外からの参加者がいらっしゃったり、地元の飲食店や銀行とも協賛いただけるようになったりと、一大イベントとなりました。このような取り組みの中で地域住民参加型の取り組みが徐々に増えてきています。

さらに、地域活性化の取り組みとして『出前講座』と呼ばれる活動を行っています。予防医療に関する理解を広めるために、公民館や学校などで継続的に当院の医師を派遣して小規模の講演を実施していました。

また施設を新設する際に、地域の方が病気になった時だけ来るのではなく、より開かれた病院にしたいというコンセプトから、レストランや会議室を解放することを前提に建物自体を設計しました。その甲斐もあってか、今ではかなり気軽に地域の方々が来院いただけるようになっています。

コロナ禍以前は外に出て地域の方達と触れ合うということができていましたが、ここ2年ほどはできていません。今後も、ご自身のお体について知っていただき、必要な際にはご相談いただけるような関係性作りのために、オンラインを含めて様々な取り組みを実施していきたいと思っています。

形に囚われず、地域に必要とされる病院で在り続ける

当院ではICTを進めていく開発担当としてHIA(Hospital Infrastructure Architect)の役割をもつ職員や、CCTO(Chief Clinical Technology Officer​​)の役職をもつ職員が在籍しています。

現在CCTOを務める職員は、脳神経外科の医師です。かつて脳神経外科は一人体制で対応する時期があり、その際に情報共有などを円滑にするために、診療に関係するスタッフ自身がLINE Worksなどを利活用した経験から現状の役職についていただいています。

ITにおける人材を採用したというよりは、ICTを進めていく中で必要に応じて院内から選出しました。ICTの導入に関して当院では、現場の声を反映しつつスモールスタートで開始し、ある程度成功した際に横展開することでステップアップを行なってきました。今後もITツールだけではなく組織や役割に関しても柔軟に最適化していきたいと思っています。

地域においては今後人口減少が進み、働き手の減少が予想されます。地域に必要な病院で在り続けるために、必要な変化を厭わずニーズに合わせた病院経営を行なっていきます。

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