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適応障害」の解説

概要

適応障害とは、ストレスを契機に不眠・動悸、抑うつ気分・不安などの心身の症状が現れ、社会生活や職業生活において大きな支障が生じる疾患です。適応障害では、ストレス因が明確であり、ストレスの始まりから3か月以内に症状が出現します。一般的に、症状はストレスが解消してから最長で6か月を超えないとされますが、時には長引くことがあります。外来で精神科治療をうけている人のうち、適応障害と診断される人の割合は5~20%程度であり、誰にでも起こりうる身近な疾患です。

原因

適応障害は、ストレスを契機に発症します。ストレスは、1つの出来事のこともあれば、複数のストレスが混在することもあります。日常的なストレスは、誰しもが持ちあわせているものですが、人は日々のストレスを上手に処理をしながら、健康のバランスを保っています。仕事上の過重な責任や長時間労働、友人とのトラブルなどストレスと感じる出来事は多種多様です。また、同じ出来事であってもストレスの感じ方には個人差があり、適応障害は、ストレスの大きさと自らのストレス対処能力のバランスを崩した結果、心身の症状が現れるのです。

症状

適応障害の症状は多彩です。典型的には、“気分が落ち込む・不安になる”といった精神的な症状や、“頭痛・不眠・眩暈”などの身体的な症状、そして“欠勤・遅刻・早退”といった行動面の異常が出現します(表1)。ストレスに誘発された心身の症状には、個人差がありますが、家庭生活や仕事・学業などの社会生活を続けることが困難となることは共通しています。

表1:適応障害の症状例

症状具体例
精神的な症状不安、抑うつ感、イライラ、焦り、考えられない、集中できない、など
身体的な症状不眠、吐き気、動悸、食欲不振、倦怠感、疲労感、頭痛、腹痛など
行動面の異常欠勤、遅刻、早退、ミスが増える、飲酒が増える、など

検査・診断

適応障害は、問診から診断するのが一般的であり、画像検査や血液検査では、特有な客観的所見は見つかりません。適応障害でみられる症状は、うつ病と類似することがあります。また、抑うつ気分は、精神疾患以外にも甲状腺疾患、膠原病、その他の内科的疾患などでも引き起こされます。適応障害の診断は、身体疾患やうつ病等の精神疾患を除外した後に診断されるべきとされており、うつ病や双極性障害などを診断基準を満たす場合は、その診断が優先されます。

治療

適応障害の治療についてです。治療のポイントは3点あります。

①ストレスから離れる

適応障害の契機となったストレスから離れることで、症状は改善に向かいます。職場や学校、家庭などで受けるストレスを軽減できるような環境調整を行い、それでも改善しない場合、十分な休養をとって心と体を休ませることも選択肢となります。

②ストレスに対処する

環境調整が難しく、ストレスから離れることが困難な場合があります。そのような場合は、ストレスとなっている出来事への捉え方を変えたり、ストレスを上手に逃がすことも重要となります。例えば、信頼を置ける人との相談、週末に趣味を楽しんだり、といった日々の小さな楽しみや達成感を感じられる体験を持つことは大切です。また、専門的な治療として行われる、認知行動療法やマインドフルネスなどは、ストレスの受け止め方を変えたりや心身をリラックスさせ、ストレスを軽減させる効果があります。

③薬物療法を検討する

薬物療法は、症状に対して対症療法的に用いられます。例えば、不眠があれば、睡眠導入剤を用いたり、不安があれば抗不安薬を用います。しかし薬による効果は、一般的に補助的なものと認識して下さい。

予防

適応障害の予防や再発防止には、2点を気をつけるようにして下さい。

①良い生活リズムを維持する

基本的なことですが、規則正しい生活を意識しましょう。生活リズムが乱れて症状が出やすくなり、また生活リズムが乱れるといった悪循環になることがあります。規則的な食事や良い睡眠を意識した生活を送ってください。

②ストレスとの付き合い方を考える

ストレスの受け止め方から、自分の思考のパターンが見えてくることがあります。例えば、「抱え込みやすい」「完璧主義」などといった性格傾向は発症と無関係ではなく、それを見直すことも、ヒントになります。また、過去に上手くいった経験が無いか、以前はどう対応してきたのかなど、これまでの生活で培った経験が役に立つことがあります。