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細菌性胃腸炎」の解説

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監修医師

新潟大学大学院医歯学総合研究科消化器内科学分野医員
吉岡 藍子 先生

概要

細菌感染によって腹痛、嘔吐や下痢などの胃腸症状が引きおこる状態。血便や発熱を伴うことがある。どの細菌かによって、感染から症状出現までの潜伏期間、症状継続の期間やどんな症状が出るかなど経過がさまざま。食中毒として起こることが多く、特に夏季に多い。 また、他の病気で抗生剤を使っていてしばらくして下痢症状が起こるときは、薬剤性腸炎が疑われる。腸内細菌のバランスが崩れてある種の細菌が増えてしまうことで引き起こされたり、薬剤自体が腸粘膜を傷つけて出血性腸炎を起こすことがある。

原因

  • カンピロバクター(食肉類、主に鶏肉):潜伏期間は1-7日、まれにギランバレー症候群とう手足の麻痺などの症状がでる病態を合併することがある。
  • サルモネラ(食肉類、生卵、ペット):潜伏期間は1-2日
  • 病原性大腸菌(汚染した食べ物):特に出血性大腸菌の感染はベロ毒素を産生して重症化することがある。潜伏期間は3-5日、人から人への二次感染もある。重症化すると溶血性尿毒症症候群や脳症という重大な合併症をおこすことがある。
  • 他には、腸炎ビブリオ、エルシニア、ウェルシュ菌、黄色ブドウ球菌、ボツリヌス菌、クロストリジウムディフィシルなど。

症状

腹痛、嘔気・嘔吐、下痢、血便や発熱などの胃腸症状で病原菌によって症状の出方はさまざま。軽症であれば自然に軽快する。下痢や血便がひどい場合は脱水症状を起こしたり、貧血になったりすることもある。また合併する病態によっては致命的になるような重症なもの(脳炎、髄膜炎、尿毒症など)もある。

検査・診断

問診と腹部の診察で、ある程度原因となる細菌を推測する。症状の重症度に合わせて血液検査、便検査で培養提出、大腸内視鏡検査、CT検査を行っていく。培養検査で菌が検出されることもあるが、数日以上時間がかかることと、菌が検出されないこともあるので、他の検査や症状と総合して判断する。

治療

原因菌や症状の程度によっては抗生物質(抗菌薬)は不要で、ウィルス性胃腸炎と同様に対症療法のみで改善することも多い。脱水症状が強い場合や他の合併症が疑われる場合は入院治療が必要。数日から2週間程度で改善する場合が多いが、症状が長引いて、感染性腸炎後の過敏性腸症候群をきたしたり、合併症で重症化することもある。

予防

汚染された食物が危険なので、特に旅行先などでは注意が必要。生ものはもちろん、氷や加熱されていても不十分なものもあるので、気を付ける。それこそ現地の人は耐性があるので大丈夫なものでも旅行者のみが発症してしまうことは大いにある。治療後は、過敏性腸症候群へ移行することも10%程度にあるので、症状が長く(1か月以上)続く場合は、受診して相談する。

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監修医師

新潟大学大学院医歯学総合研究科消化器内科学分野医員
吉岡 藍子 先生

診療科・専門領域

  • 消化器内科
新潟大学医学部卒。 済生会新潟病院、新潟大学医歯学総合病院に消化器内科医として勤務。 その後、新潟大学大学院病理学教室にて博士取得。 県内市中病院である燕労災病院、長岡赤十字病院消化器内科副部長を経て、2018年4月から埼玉県済生会川口総合病院消化器内科医長として勤務。 2022年4月から新潟大学大学院医歯学総合研究科 消化器内科学分野所属。
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