デスモプレシン酢酸塩(デスモプレシンⓇ)には、どのような効果がありますか?
血管内皮細胞の中にあるVWFを放出させ、血液凝固第Ⅷ因子が増加することで、止血効果を発揮します。
デスモプレシン酢酸塩は、血管内皮細胞(血管の一番内側にある膜の細胞)の中に貯蔵されている「フォン・ヴィレブランド因子」を血液に放出させる作用があります。その結果、フォン・ヴィレブランド因子と結合することで安定する「血液凝固第Ⅷ因子」の分解が抑制され、「血液凝固第Ⅷ因子」が増加することで、止血効果を発揮します。
このため、通常は、以下の病気の自然発生性出血、外傷性出血および抜歯時、手術時出血の止血管理に用いられています。
- 軽症・中等症血友病A(第Ⅷ因子凝固活性が2%以上の患者さん)
- TypeⅠ・TypeⅡAのフォン・ヴィレブランド病
◆血友病とは
血を固める働きのある「血液凝固因子」が不足しているために血が止まりにくくなる病気で、不足する血液凝固因子の種類によって主に「血友病A」と「血友病B」に分けられます。
「血友病A」の患者さんでは複数ある血液凝固因子のうち第Ⅷ因子が不足しており、「血友病B」の患者さんでは第Ⅸ因子が不足しています。
◆フォン・ヴィレブランド因子(von Willebrand factor:VWF)とは
血管の破損部分に血小板が集まるのを促したり、循環している血液の中で血液凝固第Ⅷ因子を安定化する作用をもつ、高分子のタンパク質です。
フォン・ヴィレブランド因子が量的に欠乏する、あるいは質的に異常があると起こる病気が、出血性疾患であるフォン・ヴィレブランド病です。
◆フォン・ヴィレブランド病(von Willebrand disease:VWD)とは
フォン・ヴィレブランド病は、主に遺伝により発症する出血性疾患です。フォン・ヴィレブランド因子の異常部位の違いによってさまざまな病型(Type)が存在し、病型によって出血症状の程度が異なります。
血友病に似ていますが、ほとんどが男性に生じる血友病とは異なり、フォン・ヴィレブランド病は女性にも発症します。 また多くの場合、血友病よりも比較的軽症です。
症状としては、鼻出血などの粘膜出血、皮下出血、月経過多が多く見られ、抜歯や手術時の出血の多さでフォン・ヴィレブランド病と初めて診断されるケースもあります。
一般的には、TypeⅠは軽症で、TypeⅡ(特にⅡA)やTypeⅢは重症の出血を起こしやすいとされています。また、血友病に特徴的な関節出血や筋肉内出血はまれですが、TypeⅢやTypeⅡNでみられることがあります。
公開日:
最終更新日:
兵庫医科大学病院 輸血・細胞治療センター 血液内科
山原 研一 監修
(参考文献)
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