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なぜ閉経後に骨がもろくなるのか?エストロゲンと骨代謝のメカニズムを教えてください。
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なぜ閉経後に骨がもろくなるのか?エストロゲンと骨代謝のメカニズムを教えてください。

濱畑 智弘監修者

山田記念病院 整形外科 整形外科部長

濱畑 智弘

エストロゲンには骨を壊す働きを抑える役割があり、閉経によりエストロゲンが減少すると骨を壊す速度が骨をつくる速度を上回り、骨がもろくなると考えられています。

エストロゲンが骨を守るしくみ

私たちの骨は、一見変化していないように見えますが、実際には「骨をつくる細胞(骨芽細胞)」と「骨を壊す細胞(破骨細胞)」が絶えず働き、古い骨を新しい骨に入れ替えています。この入れ替えのサイクルを「骨代謝:こつたいしゃ」と呼びます。

エストロゲン(女性ホルモンの一種)は、この代謝のバランスを保つうえで重要な役割を担っています。具体的には、エストロゲンは骨を壊す細胞の働きを抑え、骨が過剰に壊されるのを防いでいることが示されています[Trends Endocrinol Metab. 2012;23(11):576-581.]。

閉経後に骨がもろくなる原因|エストロゲンの低下と骨吸収の関係

閉経を迎えると卵巣からのエストロゲン分泌が大幅に減少します。エストロゲンが不足すると、先述のとおり骨を壊す細胞の活動が活発になります。その結果、骨を壊す速度が骨をつくる速度を上回り、骨の量が減少していきます[Int J Mol Sci. 2022;23(3):1376.]。

さらに、エストロゲンの低下は骨を壊す経路だけではなく、炎症を引き起こす物質にも影響を及ぼします。エストロゲンが不足すると、炎症性物質(TNF-α)が増加し、骨を壊す細胞の活動をさらに促進することが明らかにされています。この炎症による経路が加わることで、閉経後の骨量減少はより速く進むと考えられています[J Clin Invest. 2006;116(5):1186-1194.]。

エストロゲンによる骨破壊の防止は複数の経路で起きている

エストロゲンが骨を守るしくみは、ひとつの経路だけではありません。エストロゲンは複数の経路を通じて、効果的に骨を壊す働きを抑えていることが示されています。これは、閉経によるエストロゲン低下が骨に与える影響が多面的であり、エストロゲンが減ると複数の「ブレーキ」が同時に外れるため、骨量の減少が加速しやすくなると考えられています。

骨密度を維持するための栄養素|カルシウムとビタミンDの役割

閉経後の骨の健康を維持するうえで、日々の栄養摂取が重要な手段のひとつです。閉経後の女性を対象とした研究では、カルシウムとビタミンDを併用して摂取することで、骨密度の維持に役立つ可能性が報告されています。カルシウムは骨の主要な構成成分であり、ビタミンDはカルシウムの吸収を助ける働きがあるため、両方を合わせて摂ることが推奨されています。

日常生活の工夫

ここでは、簡単に日常生活で取り入れることができる工夫を紹介します。

  • カルシウムとビタミンDを一緒に摂る:乳製品・小魚・緑黄色野菜などからカルシウムを摂取し、日光浴や魚類からビタミンDを増やします。カルシウムとビタミンDの併用摂取が骨密度の維持に役立ちます[Food Funct. 2020;11(12):10817-10827.]。
  • 適度な運動を習慣にする:ウォーキングや軽い筋力トレーニングなど、骨に適度な負荷がかかる運動を日常に取り入れましょう。骨に物理的な刺激が加わることで、骨をつくる細胞の働きが促されます。
  • 定期的な骨密度チェック:閉経後は骨密度が低下しやすい時期であるため、定期的に骨密度の検査を受けることで、早期に変化を把握できます。エストロゲン低下による骨量減少は自覚しにくいため、早い段階で対処することが重要です。

ここだけは伝えたいメッセージ

閉経後に骨がもろくなるのは、エストロゲンの減少という体の自然な変化によるものです。日々の食事でカルシウムとビタミンDを意識的に摂取し、適度な運動を続けることで、骨の健康を支えることが期待できます。

骨密度の低下は自覚症状が乏しいことが多いため、気になる方は医療機関への相談をご検討ください。早めに骨の状態を把握することが、将来の骨の健康を守る第一歩になると考えられています。

まとめ:エストロゲンと骨代謝のメカニズムを知って骨の健康を守る

  • エストロゲンの役割: エストロゲンは骨を壊す細胞の働きを抑え、骨代謝のバランスを保つ調整役を担っている
  • 閉経後の骨量減少の原因: 閉経によるエストロゲン低下から、骨を壊す速度が骨をつくる速度を上回る
  • 炎症経路の関与: エストロゲン不足は炎症物質(TNF-α)の増加を招き、骨を壊す働きをさらに促進する
  • 複数の保護経路: エストロゲンは複数の経路で骨を守っており、低下すると複数のブレーキが同時に外れる
  • 栄養面のケア: カルシウムとビタミンDの併用摂取が骨密度維持に役立つ可能性がある
  • 定期的な確認: 骨密度の低下は自覚しにくいため、医療機関への相談を検討することが望ましい

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(参考文献)

Khosla S, et al. Estrogen and the skeleton. Trends Endocrinol Metab. 2012;23(11):576-581.
Weitzmann MN, Pacifici R. Estrogen deficiency and bone loss: an inflammatory tale. J Clin Invest. 2006;116(5):1186-1194.
Riggs BL. The mechanisms of estrogen regulation of bone resorption. J Clin Invest. 2000;106(10):1203-1204.
Cheng CH, et al. Osteoporosis Due to Hormone Imbalance. Int J Mol Sci. 2022;23(3):1376.
Liu C, et al. Effects of combined calcium and vitamin D supplementation on osteoporosis in postmenopausal women. Food Funct. 2020;11(12):10817-10827.
Uenishi K, et al. Milk basic protein increases bone mineral density and improves bone metabolism in healthy young women. Osteoporos Int. 2007;18(3):385-390.

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