
食事制限だけでは体脂肪が減らないのはなぜですか?カロリーを減らしても脂肪が残るメカニズムを教えてください。
はまさき医院 糖尿病・内分泌科
過度な食事制限では脂肪だけでなく筋肉も減りやすくなります。筋肉が減るとエネルギー消費量が低下するため、体重が減りにくくなったり、リバウンドしやすくなったりすることがあります。また、体重が減っても皮下脂肪は残りやすいため、体脂肪を効率よく減らすには、食事と運動を組み合わせることが大切です。
食事制限だけで体重が減ると何が起こるか
食事量を減らせば体重は落ちます。しかし、落ちているのが「脂肪」とは限りません。とくに極端なカロリー制限(1日800〜1,200kcal以下)では、筋肉のタンパク質が分解されてエネルギー源(糖新生の材料)として使われるため、筋肉量も一緒に減ってしまいます。極端なカロリー制限の主なリスクは筋肉量の喪失であり、エネルギー不足の状態では筋タンパクの合成が低下し、アミノ酸が糖新生に転用されることが報告されています[Curr Opin Clin Nutr Metab Care. 2023;26(6):521-527.]。
筋肉は安静時にもエネルギーを消費する組織です。筋肉量が減ると基礎代謝(何もしなくても消費するエネルギー)が低下し、同じ食事量でも「消費より摂取が上回る」状態になりやすくなります。これがリバウンドの大きな要因のひとつです。
「スキニーファット」とは|体重は軽いのに体脂肪率が高い状態
食事制限だけでダイエットをすると、体重は減ったのに体脂肪率はあまり変わらない、あるいはかえって上昇するということが起こり得ます。この状態は「スキニーファット(normal weight obesity=正常体重肥満)」と呼ばれることがあります[Prog Cardiovasc Dis. 2014;56(4):426-433.]。
見た目は痩せているように見えても、筋肉が少なく脂肪が多い体組成では、代謝症候群のリスクが通常体重の人より高い可能性があります。体重が減っても体脂肪率が下がらなければ、健康上のメリットは限定的になると考えられています。
体脂肪を効率よく減らすには|タンパク質と筋力トレーニングの併用
体脂肪を減らしながら筋肉量を維持するためには、十分なタンパク質の摂取(1日あたり体重1kgあたり1.2〜1.6g)と筋力トレーニングの併用が推奨されています。筋力トレーニングは筋タンパク合成を刺激する最も強力な非薬理学的手段であり、十分なタンパク質と組み合わせることで相乗的に筋肉量の維持に寄与すると報告されています。
体重減少の停滞(プラトー)は約85%のダイエッターに起こる現象ですが[Management of Weight Loss Plateau. PMID: 35015425]、カロリーをさらに減らすのではなく、筋力トレーニングの追加とタンパク質の確保で対応することが推奨されています。
食事制限と体脂肪のうえで日常生活の工夫として検討が推奨される点

特に重要とされるのは、「食べない」ことではなく、「何を食べるか」と「筋肉を使うか」のバランスと考えられています。
ここだけは伝えたいメッセージ
「食べなければ痩せる」という考えは、短期的には正しくても長期的には逆効果になることがあります。食事の「量」を減らすだけでなく、タンパク質という「質」を確保し、筋トレで筋肉を守ることが、体脂肪を落とすための近道かもしれません。
ただし、食事を極端に減らしているのに体重が増える場合、強い倦怠感やむくみがある場合、過食と絶食を繰り返す場合は、ホルモン異常や摂食障害の可能性があります。このような場合は、医療機関への受診をご検討ください。
まとめ:食事制限だけでは体脂肪が減らない理由と対策
- 筋肉も一緒に減る:極端なカロリー制限は筋肉量の減少を招き、基礎代謝が低下する可能性があります
- 体脂肪率は変わらないことも:体重が減っても筋肉が減ると、体脂肪率はかえって上昇する場合があります
- タンパク質の確保が重要:1日に体重1kgあたり1.2〜1.6gの摂取が推奨されています
- 筋力トレーニングの併用:週2〜3回の筋トレが筋肉量の維持に寄与する可能性があります
- 受診の目安:極端な食事制限中の体重増加、強い倦怠感、過食と絶食の繰り返しがある場合は、医療機関への受診をご検討ください
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