
監修者福岡ハートネット病院、井林眼科・内科クリニック 糖尿病・内分泌科 福岡ハートネット病院 糖尿病内科部長
体脂肪率の停滞は、体が少ないエネルギーに適応して代謝が低下する「適応熱産生」が主な原因と考えられています。タンパク質の確保と筋力トレーニングの追加が対策として推奨されています。
体脂肪率の停滞期とは|なぜ途中で変化が止まるのか
ダイエットを始めて最初のうちは順調に体脂肪率が下がるのに、ある時期から変化が止まってしまう──これが「停滞期」です。体重減少の停滞は約85%のダイエッターに起こるとされており、ほとんどの人が経験する現象です。
停滞の主な原因はホメオスタシス(恒常性)の働きによる「適応熱産生(てきおうねつさんせい)」と呼ばれる体の防衛反応です。食事量が減ると、体は「飢饉に備えてエネルギーを節約しよう」とはたらき、安静時のエネルギー消費量(REE)が体重の減少から予測される以上に低下します。これに加えて、食欲を抑えるホルモン(レプチン)の分泌が減少し、食欲を増すホルモン(グレリン)の分泌が増加するため、「食べたい気持ち」が強まりやすくなります。
体脂肪率の停滞を招く5つの原因
停滞期の背景には、複数の要因が重なっていることが多いです。
- 1つ目は基礎代謝の低下です。食事制限だけで体重を落とすと、筋肉量も一緒に減ってしまいます。筋肉は安静時にもエネルギーを消費する組織であるため、筋肉量が減ると基礎代謝が下がり、同じ食事量でも脂肪が落ちにくくなります
- 2つ目はタンパク質の不足です。タンパク質が足りない食事では筋肉の分解が進みやすくなります
- 3つ目は睡眠の質の悪化です。睡眠不足はストレスホルモン(コルチゾール)の分泌を増やし、脂肪の蓄積を促す方向にはたらく可能性があります
- 4つ目は慢性的なストレスによるホルモンバランスの乱れです。インスリン抵抗性(インスリンの効きにくさ)が引き起こされ、脂肪が燃焼しにくくなります
- 5つ目は食事内容の偏りです。カロリーだけを気にして栄養バランスが崩れると、体の代謝がうまくはたらかなくなる可能性があります。不十分な栄養摂取は炎症やミトコンドリア機能の低下を通じて疲労にも影響することが報告されています[Nutrients. 2020;12(2):444.]
停滞期を抜け出す方法|筋トレとタンパク質が鍵
停滞期を打破するための対策として、筋力トレーニングの追加とタンパク質摂取量の見直しが推奨されています。タンパク質は1日に体重1kgあたり1.2〜1.5gの摂取が推奨され、筋力トレーニングは週2〜3回行うことで基礎代謝の維持・向上とインスリン感受性の改善に寄与する可能性があると報告されています。食事制限と筋力トレーニングを組み合わせることで、脂肪を落としながら筋肉量を維持するアプローチが推奨されます。
体脂肪率の停滞期を抜け出すうえで日常生活の工夫として検討が推奨される点

特に重要とされるのは、食事のカロリーをさらに減らすのではなく、タンパク質量を確保しつつ、筋力トレーニングを追加することと考えられています。
ここだけは伝えたいメッセージ
停滞期は「失敗」ではなく、体が変化に適応している証拠ともいえます。あせってさらに食事を減らすのではなく、筋トレとタンパク質で体の代謝を底上げするアプローチに切り替えてみてはいかがでしょうか。
ただし、食事制限を続けているにもかかわらず体重が増え続ける場合、強い倦怠感やむくみを伴う場合、生理が止まった場合は、甲状腺の病気(甲状腺機能低下症など)や多嚢胞性卵巣症候群:PCOSなどの可能性もあります。このような症状がある場合は、医療機関への受診をご検討ください。
まとめ:体脂肪率の停滞期の原因と対処法
- 停滞期は約85%の人に起こる: 体が少ないエネルギーに適応して代謝が低下する「適応熱産生」が主な原因です
- 筋肉量の維持が鍵: 食事制限だけでは筋肉も減り、基礎代謝が低下するため、筋力トレーニングの併用が推奨されます
- タンパク質は十分に: 体重1kgあたり1.2〜1.5g/日を目安にし、毎食含めることが推奨されます
- カロリーをさらに減らすのは逆効果: 代謝のさらなる低下を招く可能性があります
- 受診の目安: 食事制限中の体重増加・強い倦怠感・むくみ・生理不順がある場合は、医療機関への受診をご検討ください
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(参考文献)
Sarwan G, Daley SF, Rehman A. Management of Weight Loss Plateau. StatPearls. 2024.
Azzolino D, Arosio B, Marzetti E, Calvani R, Cesari M. Nutritional Status as a Mediator of Fatigue and Its Underlying Mechanisms in Older People. Nutrients. 2020;12(2):444.


