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【医師監修】誤嚥性肺炎を防ぐには?|口腔ケア・食事の工夫・ワクチンによる予防法

誤嚥性肺炎の予防は、口腔ケアと食事の工夫が基本です。高齢者の肺炎の約7割は誤嚥性肺炎とされており[Respirology. 2024.]、特に70歳以上の方にとって身近なリスクです。この記事では、誤嚥性肺炎を防ぐための具体的な方法を、エビデンスに基づいて解説します。


この記事でわかること

  • 誤嚥性肺炎とはどんな病気か(むせのない「不顕性誤嚥」や、高齢者に多い理由)
  • 口腔ケアと食事の工夫による予防(口腔ケアで肺炎の発症リスクが約39%低下)
  • 肺炎球菌ワクチンの役割(誤嚥性肺炎は直接防げないが、肺炎全体のリスクを下げる)

誤嚥性肺炎とはどんな病気?

誤嚥性肺炎とは、食べ物や唾液が誤って気管に入る「誤嚥(ごえん)」をきっかけに、口の中の細菌が肺に入り込んで起こる肺炎です。日本の死因の第6位(全死亡の3.8%)を占めています[厚生労働省. 人口動態統計. 2023.]。

  • 誤嚥性肺炎の患者の82%が70歳以上で、平均年齢は83歳と報告されています[Respirology. 2024.]
  • 高齢者の肺炎の約7割(66.8%)が誤嚥性肺炎に分類されます[Respirology. 2024.]
  • 眠っている間に唾液が少しずつ気管に入る「不顕性誤嚥(ふけんせいごえん)」(むせのない誤嚥)が、高齢者の誤嚥性肺炎の主な原因とされています[StatPearls. 2024.]

むせや咳がなくても誤嚥は起きるため、日常的な予防が重要です。


誤嚥性肺炎はどうすれば予防できる?

誤嚥性肺炎の予防は、誤嚥を防ぐ口腔ケアと食事の工夫が2本柱です。これに加えて、肺炎球菌ワクチンで重症化のリスクを下げることも大切です。

誤嚥性肺炎を直接防ぐ2つの柱

  1. 口腔ケア — 口の中の細菌を減らし、誤嚥しても肺炎を起こしにくくする
  2. 食事の工夫 — 誤嚥そのものを起こしにくくする

重症化を防ぐ二次的な予防策

  • 肺炎球菌ワクチン — 肺炎球菌による重症感染症のリスクを下げる

特に口腔ケアは、成人肺炎診療ガイドライン2024でも誤嚥性肺炎の予防策として推奨されています[成人肺炎診療ガイドライン. 2024.]。


口腔ケアにはどんな予防効果がある?

口腔ケアは、誤嚥性肺炎の予防にもっとも強いエビデンスがある方法です。複数の研究を統合した分析では、口腔ケアにより肺炎の発症リスクが39%低下し、肺炎による死亡リスクも59%低下したと報告されています[Gerodontology. 2008.]。

厳密に計画された研究では、毎食後の歯磨きと週1回の専門的口腔ケアを行うことで、肺炎の発症が有意に減少しました[J Am Geriatr Soc. 2002.]。

日常でできる口腔ケアのポイント

  • 毎食後の歯磨きを習慣にする
  • 入れ歯を使っている方は、毎日の入れ歯洗浄を行う
  • 就寝時には入れ歯を外す(装着したまま寝ると肺炎リスクが約2倍になるとの報告あり)
  • 可能であれば、歯科医師や歯科衛生士による定期的な口腔ケアを受ける

※ 口腔ケアの効果については、多数の研究を体系的にまとめた報告でも肺炎関連死亡を低減する可能性が示されていますが、科学的な裏付けとしてはまだ十分とは言えない段階です[Cochrane Database Syst Rev. 2022.]。個人差がある点にご留意ください。


食事の工夫で誤嚥性肺炎を防げる?

食事中の誤嚥を減らすためには、姿勢の調整や食事の形態を工夫することが大切です。ただし、とろみ付けなど単独の方法で誤嚥性肺炎を予防できるというエビデンスは現時点では十分ではありません[BMC Geriatr. 2018.]。姿勢の調整や嚥下(えんげ)リハビリテーションと組み合わせた複合的な取り組みが効果的と考えられています。

食事中に気をつけたいポイント

  • 食事中の姿勢:背筋を伸ばし、やや前かがみの姿勢で食べる。あごを少し引くと誤嚥しにくくなる
  • 食べ物の形態:飲み込みにくい場合は、とろみをつけたり、一口大に切ったりする
  • 食事のペース:ゆっくり食べ、一口ずつ飲み込みを確認する
  • 食後の姿勢:食後すぐに横にならず、30分〜1時間は上体を起こしておく(胃の内容物が逆流して誤嚥するのを防ぐため)
  • 嚥下リハビリテーション:飲み込む力が弱っている場合は、医師や言語聴覚士に相談し、嚥下訓練を検討する

肺炎球菌ワクチンは誤嚥性肺炎にも効果がある?

肺炎球菌ワクチンは、誤嚥性肺炎を直接予防するものではありません。誤嚥性肺炎は口の中の細菌が原因で起こるため、肺炎球菌ワクチンだけでは防げません。

ただし、高齢者の肺炎の原因菌として肺炎球菌は重要であり、2026年4月から定期接種に採用されたワクチン(プレベナー20)では、侵襲性肺炎球菌感染症(IPD:菌が血液や髄液に入る重症感染症)の発症を25%、肺炎を15%減らすことが示されています[Lancet Infect Dis. 2026.]。肺炎全体のリスクを下げる予防策のひとつとして、口腔ケアや食事の工夫とあわせて検討する価値があります。

  • 成人が接種できる肺炎球菌ワクチンにはプレベナー20(PCV20)・キャップバックス(PCV21)・ニューモバックスNP(PPSV23)の3種類があります
  • 2026年4月からはプレベナー20(PCV20)が定期接種に採用されています[肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方 第8版. 2026.]

各ワクチンの種類や違いについては、関連記事「成人の肺炎球菌ワクチンの種類と違い|PCV20・PCV21・PPSV23を比較」をご覧ください。


よくある疑問

Q.むせない人でも誤嚥性肺炎になる?

なることがあります。眠っている間に唾液が少しずつ気管に入る「不顕性誤嚥」は、むせや咳の症状がないまま進行します。高齢者の誤嚥性肺炎の多くはこのタイプとされており[StatPearls. 2024.]、むせないからといって安心はできません。日常的な口腔ケアが、不顕性誤嚥による肺炎予防にも有効と考えられています。

Q.とろみをつければ誤嚥は防げる?

とろみをつけることで飲み込みやすくなりますが、とろみ付け単独で誤嚥性肺炎を予防できるというエビデンスは十分ではありません[BMC Geriatr. 2018.]。むしろ不適切な濃度のとろみは、かえって喉に張り付きやすく飲み込みの妨げになることもあります。適切な食事形態を工夫することに加えて、食事姿勢の調整や口腔ケアなど、複数の方法を組み合わせることが大切です。

Q.口腔ケアは自宅でもできる?

毎食後の歯磨きや入れ歯の洗浄は自宅でもできる基本的な口腔ケアです。加えて、歯科医師や歯科衛生士による専門的な口腔ケアを定期的に受けることで、より高い予防効果が期待できます。訪問歯科診療を利用できる場合もありますので、かかりつけの歯科医院にご確認ください。


まとめ

  • 高齢者の肺炎の約7割は誤嚥性肺炎であり、70歳以上の方に多い病気です
  • 予防の2本柱は口腔ケアと食事の工夫です。肺炎球菌ワクチンは重症化を防ぐ二次的な予防策です
  • 口腔ケアにより肺炎の発症リスクが39%低下、肺炎による死亡リスクが59%低下したと報告されています
  • 食事の工夫では、姿勢の調整・食後すぐに横にならない・嚥下リハビリが重要です
  • 肺炎球菌ワクチンは誤嚥性肺炎を直接予防しませんが、肺炎全体のリスクを下げる予防策のひとつです(IPD発症を25%、肺炎を15%減らす効果)
  • 誤嚥性肺炎の予防については、かかりつけ医や医療機関へのご相談をご検討ください

出典

Miyashita N, et al. "Aspiration Pneumonia in the Elderly." Respirology. 2024.(多施設前向き研究)

厚生労働省「令和5年(2023)人口動態統計」

Marik PE, Kaplan D. "Aspiration Pneumonia and Dysphagia in the Elderly." StatPearls. 2024.

Sjögren P, et al. "A Systematic Review of the Preventive Effect of Oral Hygiene on Pneumonia." Gerodontology. 2008; 25(1):3-9.

Yoneyama T, et al. "Oral care reduces pneumonia in older patients in nursing homes." J Am Geriatr Soc. 2002; 50(3):430-3.

日本呼吸器学会「成人肺炎診療ガイドライン2024」

Cao Y, et al. "Oral care measures for preventing nursing home-acquired pneumonia." Cochrane Database Syst Rev. 2022; 11(11):CD012416.

O'Keeffe ST. "Use of modified diets to prevent aspiration in oropharyngeal dysphagia." BMC Geriatr. 2018; 18(1):167.

Miles AC, et al. "Real-world effectiveness of 20-valent pneumococcal conjugate vaccine among adults ≥65 years of age in the United States: a retrospective cohort study." Lancet Infect Dis. 2026.

日本感染症学会・日本呼吸器学会・日本ワクチン学会「65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(第8版 一部修正)」(2026年6月15日)

本記事は 2026年6月25日 の情報に基づいて作成されています。最新の情報は各出典元でご確認ください

※ この記事は医療情報の提供を目的としており、医学的アドバイス、診断、治療を目的としたものではありません。症状や治療については、医師へのご相談をご検討ください。


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