【医師監修】高齢者の肺炎を防ぐには?|ワクチン・口腔ケア・生活習慣の3本柱
高齢者の肺炎は、ワクチン接種・口腔ケア・生活習慣の見直しの3つで予防できます。肺炎による死亡者の98%は65歳以上であり[厚生労働省. 人口動態統計. 2024.]、高齢者にとって肺炎の予防は特に重要です。この記事では、高齢者が肺炎を防ぐための具体的な方法を、エビデンスに基づいて解説します。
この記事でわかること
高齢者はなぜ肺炎にかかりやすい?
65歳以上の方が肺炎にかかる割合は65歳未満の約4倍にのぼり、肺炎球菌感染による死亡率も約21%と、15歳以下(約4%)の約5倍と報告されています[Vaccines. 2025.]。
高齢者が肺炎にかかりやすい主な理由は以下の3つです。
- 免疫機能の低下:加齢に伴い、感染症に対する体の防御力が弱まる
- 嚥下機能の低下:食べ物や唾液が誤って気管に入る「誤嚥(ごえん)」が起きやすくなる
- 持病の影響:糖尿病・心臓病・慢性の肺の病気などがあると、肺炎が重症化しやすい
肺炎と誤嚥性肺炎を合わせると、日本人の死因の実質第4位に相当します[厚生労働省. 人口動態統計. 2024.]。
高齢者の肺炎はどうすれば予防できる?
高齢者の肺炎予防は、以下の3本柱が基本です。
- ワクチン接種 — 肺炎の主要な原因菌である肺炎球菌に対する免疫をつける
- 口腔ケア — 口の中の細菌を減らし、誤嚥性肺炎のリスクを下げる
- 生活習慣の見直し — 適度な運動と栄養で全身の免疫機能を維持する
この3つはそれぞれ異なるタイプの肺炎に効果を発揮するため、組み合わせて取り入れることで予防効果が高まります。
肺炎球菌ワクチンの効果はどのくらい?
肺炎球菌ワクチンは、肺炎の主な原因菌である肺炎球菌に対する免疫をつけるワクチンです。2026年4月から定期接種に採用されたワクチン[プレベナー20(PCV20)]では、侵襲性肺炎球菌感染症(IPD:菌が血液や髄液に入る重症感染症)の発症を25%、肺炎を15%減らすことが示されています[Lancet Infect Dis. 2026.]。
- 成人が接種できる肺炎球菌ワクチンはプレベナー20(PCV20)・キャップバックス(PCV21)・ニューモバックスNP(PPSV23)の3種類があります
- 2026年4月からはプレベナー20(PCV20)が定期接種に採用されています[肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方 第8版. 2026.]
- 65歳の方は定期接種の対象で、公費助成を受けられます。65歳の1年間限定の制度ですので、対象の年齢になったら早めに接種をご検討ください
各ワクチンの違いや選び方については、関連記事「成人の肺炎球菌ワクチンの種類と違い|PCV20・PCV21・PPSV23を比較」で詳しく解説しています。
※ 肺炎球菌ワクチンは肺炎全体を100%予防するものではなく、肺炎球菌が原因の肺炎や重症感染症に対する予防手段です。
口腔ケアで肺炎を予防できる?
口腔ケアは、特に誤嚥性肺炎の予防に有効とされています。厳密に計画された研究では、毎食後の歯磨きと週1回の専門的口腔ケアを行うことで、誤嚥性肺炎の発症リスクが約40%低下したと報告されています[J Am Geriatr Soc. 2002.]。
成人肺炎診療ガイドライン2024でも、誤嚥性肺炎の予防策として口腔ケアが推奨されています[成人肺炎診療ガイドライン. 2024.]。
日常でできる口腔ケアのポイント
- 毎食後の歯磨きを習慣にする
- 入れ歯を使っている方は、毎日の入れ歯洗浄を行う
- 就寝時には入れ歯を外す(装着したまま寝ると肺炎リスクが高まるとの報告あり)
- 可能であれば、歯科医師や歯科衛生士による定期的な口腔ケアを受ける
- 食事前にお口の体操(嚥下体操)を取り入れることも効果的です
生活習慣の見直しも肺炎予防に役立つ?
適度な運動習慣は、免疫機能の維持に寄与し、肺炎予防にも効果が期待できます。1日1時間以上の歩行習慣がある方は肺炎による死亡率が低いと報告されており、中等度の有酸素運動(週3回程度)を行うことでワクチンの効き目が高まる可能性も示されています[J Sport Health Sci. 2020.]。
一方、栄養補助(サプリメント等)の単独使用では肺炎予防効果は実証されていません[PLoS Med. 2011.]。基本的な生活習慣の見直しが最も重要です。
日常で取り入れやすい生活習慣
- ウォーキングなどの有酸素運動を無理のない範囲で続ける
- バランスの取れた食事で栄養を十分にとる
- 十分な睡眠で体の回復を促す
- 禁煙する(喫煙は肺炎のリスクを高める要因のひとつです)
よくある疑問
Q.肺炎球菌ワクチンは何歳から接種できる?
成人の肺炎球菌ワクチンの定期接種は65歳が対象です(60〜64歳で特定の疾患がある方も対象)。費用や対象者の詳細については、関連記事「成人の肺炎球菌ワクチンの費用と対象|定期接種・任意接種の違い」をご覧ください。
Q.口腔ケアとワクチン、どちらが大切?
どちらか一方ではなく、両方を組み合わせることが大切です。肺炎球菌ワクチンは肺炎球菌による重症感染症を予防し、口腔ケアは誤嚥性肺炎のリスクを下げます。それぞれが異なるタイプの肺炎に対して効果を発揮するため、両方取り入れることで予防効果が高まると考えられます。
Q.インフルエンザワクチンも肺炎予防に効果がある?
インフルエンザにかかると気道の防御機能が低下し、肺炎球菌などによる肺炎を続けて起こしやすくなります。インフルエンザワクチンの接種は、インフルエンザに伴う肺炎の予防にも寄与するとされています。肺炎球菌ワクチンとインフルエンザワクチンは同時に接種することも可能です[肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方 第8版. 2026.]。
まとめ
- 肺炎による死亡者の98%は65歳以上であり、高齢者にとって肺炎予防は特に重要です
- 予防の3本柱はワクチン接種・口腔ケア・生活習慣の見直しです
- 定期接種のワクチン(プレベナー20)は、侵襲性肺炎球菌感染症の発症を25%、肺炎を15%減らすことが示されています
- 口腔ケアにより誤嚥性肺炎のリスクが約40%低下するという報告があります
- 適度な運動習慣も免疫機能の維持に寄与します
- 肺炎球菌ワクチンについては、かかりつけ医や医療機関へのご相談をご検討ください
出典
・厚生労働省「令和6年(2024)人口動態統計」
・Imai K, et al. "Pneumococcal Disease Burden in Older Adults." Vaccines. 2025; 13(1):88.
・日本感染症学会・日本呼吸器学会・日本ワクチン学会「65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(第8版 一部修正)」(2026年6月15日)
・Miles AC, et al. "Real-world effectiveness of 20-valent pneumococcal conjugate vaccine among adults ≥65 years of age in the United States: a retrospective cohort study." Lancet Infect Dis. 2026.
・Yoneyama T, et al. "Oral care reduces pneumonia in older patients in nursing homes." J Am Geriatr Soc. 2002; 50(3):430-3.
・日本呼吸器学会「成人肺炎診療ガイドライン2024」
・Simpson RJ, et al. "Exercise and the Regulation of Immune Functions." J Sport Health Sci. 2020; 9(3):227-37.
・Dangour AD, et al. "Effect of a nutrition supplement and physical activity program on pneumonia and walking capacity in Chilean older people: a factorial cluster randomized trial." PLoS Med. 2011; 8(4):e1001023.
本記事は 2026年6月25日 の情報に基づいて作成されています。最新の情報は各出典元でご確認ください
※ この記事は医療情報の提供を目的としており、医学的アドバイス、診断、治療を目的としたものではありません。症状や治療については、医師へのご相談をご検討ください。