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炭酸ガスの入浴剤でお湯に浸かると体が温まりやすいと感じるのはなぜですか?
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炭酸ガスの入浴剤でお湯に浸かると体が温まりやすいと感じるのはなぜですか?

栗原 信吾監修者

北水会記念病院 整形外科

栗原 信吾

炭酸ガス(CO2)が肌から吸収され、血管を広げて血流を増やす仕組みが関わっていると考えられています。この効果は主に皮膚の血管に生じるとされています。

炭酸ガスが皮膚の血流を増やす仕組み

炭酸ガス(CO2)は肌から吸収されると、体の中で重炭酸イオンという物質に変わります。この重炭酸イオンが血管の内側にある細胞(血管内皮細胞)に働きかけ、血管を広げる物質(一酸化窒素)が作られやすくなることが、動物実験や細胞を使った実験で示されています[Sci Rep. 2021;11:21789.]。血管が広がることで血流が増え、体が温まりやすくなると考えられています。

軽度の末梢動脈閉塞性疾患(脚の血管が狭くなる病気)がある患者さん18名を対象に、炭酸ガス入りの水と通常の水(真水)に足を浸ける実験を行った研究では、炭酸ガス入りの水では皮膚の血流を示す指標が300%上昇し、皮膚の酸素分圧(皮膚にどれだけ酸素が届いているかを示す値)も10%増加しましたが、真水では血流に変化がありませんでした[Angiology. 1997;48(4):337-43.]。ただしこの研究は血管の病気がある患者さんを対象にしたものであり、健常な人でも同じ大きさの変化が起こるとは限りません。

炭酸ガスの効果が生じる部位

健常成人男性10名を対象に、ぬるめの炭酸ガス入りの水に脚を浸ける実験を行った研究では、皮膚の血流が通常の水と比べて約779%増加し、脚の主要な動脈を流れる血流も約126%増加したことが報告されています[Physiol Rep. 2018;6(18).]。一方で、筋肉の血流(筋肉に運ばれる酸素の量)には、炭酸ガス入りの水と通常の水で明確な差が見られませんでした。この結果から、炭酸ガスによる効果は、筋肉の奥深くまでではなく、主に皮膚の血管に生じていると考えられています。

炭酸ガス入浴剤の効果についてわかっていることと、まだわかっていないこと

炭酸ガスが皮膚の血流を増やす仕組み自体は、複数の研究で確認されています。一方で、実際の入浴剤としての使用が、体温の上昇や睡眠の質、冷えの改善にどこまで役立つかについては、まだ十分にわかっていない部分もあります。

重炭酸イオンを含む水での入浴を4週間続けた試験では、比較のために炭酸ガスを使わなかった対照群と比べて、参加者全体では体温の上がり方に統計的な差は見られませんでした。体温が低めの一部の対象者(各群8名・6名程度)だけを絞った分析では、対照群より早く体温が上がる結果もみられましたが、対象者数が非常に少ない分析のため、参考程度の情報にとどまります。

また、睡眠の質や冷えの症状についても、重炭酸イオンを含む水と対照群のどちらも同程度に改善し、両者の間に統計的な差は見られなかったことが報告されています[Sci Rep. 2021;11:21789.]。炭酸ガスには血流を増やす仕組みがあると考えられていますが、それがどの程度実感できる変化につながるかは、個人差もあり、今後さらに研究が必要な部分といえます。

炭酸ガス入浴剤を使ううえで日常生活の工夫として検討が推奨される点

炭酸ガス入浴剤を使ううえでの3つのコツと理由をまとめた表です。1つ目は「お湯の温度と併せて考える」で、炭酸ガス入浴剤を使う場合も40℃前後を目安にすることです。理由は炭酸ガスの効果は皮膚の血流を増やす仕組みによるもので、お湯の温度による効果とは別に働くと考えられるためです。2つ目は「炭酸ガスだけに頼らない」で、体を芯から温めたい場合は、入浴の基本(温度・時間・タイミング)も見直すことです。理由は炭酸ガスの効果は主に皮膚の血管に生じており、筋肉の奥深くまでへの効果は確認されていないためです。3つ目は「効果の感じ方に個人差があることを理解する」で、すぐに実感できなくても継続して様子を見ることです。理由は実際の入浴剤としての効果はまだ研究が十分でない部分もあるためです。

炭酸ガスの効果を過度に期待しすぎず、入浴の基本的な工夫と組み合わせることが、特に重要と考えられます。

ここだけは伝えたいメッセージ

炭酸ガスの入浴剤には、皮膚の血流を増やす仕組みがあると考えられていますが、実際にどこまで温まりを実感できるかには個人差があります。入浴剤の効果だけに頼らず、お湯の温度や入浴の仕方も合わせて工夫してみてください。血管の病気や心臓に不安がある方は、入浴剤の使用について医療機関への相談をご検討ください。

まとめ:炭酸ガス入浴剤で体が温まりやすいと感じる理由

  • 仕組み:炭酸ガスが肌から吸収されて重炭酸イオンに変わり、血管を広げる物質(一酸化窒素)が作られやすくなることが報告されています
  • 効果の範囲:炭酸ガスによる血流の変化は、主に皮膚の血管に生じており、筋肉の奥深くまでの効果は確認されていません
  • 患者さんを対象とした研究:軽度の末梢動脈閉塞性疾患のある患者さんを対象とした研究では、炭酸ガス入りの水で皮膚の血流指標が大きく上昇したことが報告されていますが、健常な人にそのまま当てはまるとは限りません
  • わかっていないこと:入浴剤としての体温上昇・睡眠・冷えへの効果は、対照群と比べて明確な差が確認されていない部分もあり、今後の研究が必要です

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(参考文献)

Hartmann BR, Bassenge E, Pittler M. Effect of carbon dioxide-enriched water and fresh water on the cutaneous microcirculation and oxygen tension in the skin of the foot. Angiology. 1997;48(4):337-43.
Ogoh S, Washio T, Suzuki K, Ikeda K, Hori T, Olesen ND, Muraoka Y. Effect of leg immersion in mild warm carbonated water on skin and muscle blood flow. Physiol Rep. 2018;6(18).
Yamazaki T, Ushikoshi-Nakayama R, Shakya S, et al. The effects of bathing in neutral bicarbonate ion water. Sci Rep. 2021;11:21789.

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