子どもの部活動中に熱中症を防ぐには?保護者や指導者が知っておくべきポイントを教えてください。
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子どもの部活動中に熱中症を防ぐには?保護者や指導者が知っておくべきポイントを教えてください。

井上 信明監修者

埼玉医科大学総合医療センター 小児科

井上 信明

子どもは大人に比べて体温調節の機能が未熟であり、また飲水の必要性に対する意識も高くないため、暑さ指数(WBGT)の確認・こまめな休憩・水分補給を指導者と保護者が責任を持って管理することが推奨されています。

部活動中に熱中症になり、救急搬送される子どもが毎年多数発生しています。「子どもは元気だから大丈夫」と思われがちですが、実は子どもには大人とは異なる特徴があり、熱中症のリスクが高まる場面があります。保護者や指導者が子どもの特徴を理解し、責任を持って予防策を取ることが大切です。

子どもの熱中症リスクが高まりやすい理由

米国小児科学会(AAP)の声明(Pediatrics 2011;128(3):e741-7)によると、十分な水分補給が確保されている状況では、子どもの体温調節能力は大人と比べて本質的に劣るわけではないとされています。しかし、実際の部活動では、以下のような要因が重なりやすく、熱中症リスクが高まります。

  • 自分から水分を摂らない:子どもは運動中に喉の渇きを感じにくかったり、練習の流れで水を飲むタイミングを逃したりすることが多く、気づかないうちに脱水が進みやすくなります。水分補給不足は、熱中症の最も重要なリスク因子のひとつです。
  • 体重に対する体表面積が大きい:周囲の気温が体温より⾼いとき、体の表⾯から熱を吸収しやすく、体温が上がりやすいです。
  • 暑熱順化に時間がかかる:⼦どもは⼤⼈よりも暑さに体が慣れるまでに時間がかかるとされています。
  • 体調変化を言葉にしにくい:特に低学年の子どもは「体がだるい」「気持ちが悪い」といった熱中症の初期症状をうまく言葉にできないことがあります。そのため、周囲が気づかないまま症状が進行してしまうことがあります。
  • 過度な身体負荷・回復不足:特に思春期前の子どもでは、強度の高い練習が続くとうまく汗をかくことができない特徴があります。そのため、体への負担が蓄積しやすくなります。
  • 服装・防具による熱の蓄積:体育着や野球などの防具は、熱を体内に蓄積させやすく、体温上昇を助長することがあります。
  • 「休みたい」と言い出せない:「休むと迷惑をかける」「根性がないと思われる」と感じて無理をする子どもは多く、これが重症化につながる場合があります。

熱中症の症状に気づいたら|その場での対応

まず、熱中症を疑う症状を指導者・保護者が把握しておくことが大切です。

  • 軽度〜中等度のサイン(すぐに運動を中止):めまい吐き気、ふらつき、顔色が悪い、大量の発汗、筋肉のけいれん → 涼しい場所に移動し、水分・塩分を補給して休ませてください。
  • 重度のサイン(ただちに119番通報):意識がぼんやりする、呼びかけに応じない、言動がおかしい → 救急車を呼びながら、首・脇の下・太ももの付け根を冷やしてください。これらの症状は「疲れているだけ」と見過ごされやすいため、少しでも異変を感じたら迷わず運動を止めることが重要です。

練習中にめまい・吐き気・ふらつきなどの熱中症のサインが見られた場合は、すぐに運動を中止して涼しい場所で休ませてください。意識がぼんやりしている、呼びかけに応じない場合は、ただちに救急車を呼び、到着までの間は首・脇の下・太ももの付け根を冷やしてください。

部活動中の熱中症予防|指導者がとるべき対策

部活動中は、指導者が責任を持って熱中症の予防策を実施することがもっとも効果的と考えられています。

  • WBGT(暑さ指数)を必ず確認する:練習前に環境省のサイトや携帯型WBGT計でWBGT(暑さ指数)を確認しましょう。WBGT 28℃以上では、屋外で身体を動かす部活では練習内容を軽減し、31℃以上では原則運動中止とすることが推奨されています。
  • 定期的な休憩を組み込む: 20〜30分ごとに日陰での休憩を必ず取る。「気合で乗り切る」といった指導は熱中症リスクを高めます。
  • 水分補給の機会を与える: 子どもは自分から水分を摂らないこともあるため、指導者が「水を飲む時間」を練習スケジュールに組み込みましょう。運動前にコップ1杯、運動中は15〜20分ごとに少量ずつが目安です。
  • 体調確認の声かけを行う:「気持ち悪くない?」「頭痛くない?」など、具体的な質問で子どもの体調変化を把握しましょう。

保護者ができる準備と対策

保護者による部活動前後の対応で、子どもの熱中症リスクを下げることが期待できます。

  • 十分な睡眠と朝食を確保する:睡眠不足や空腹の状態での運動は、体温調節機能を低下させる可能性があります。
  • 通気性のよい服装を準備する:白っぽい色や通気性の高い素材の運動着を選びましょう。
  • 水分と塩分補給の準備: 十分な量の水分(スポーツドリンクまたはミネラル入り麦茶)を持たせる。塩分タブレットも携帯しておくと便利です。
  • 「無理しなくていい」と伝える:子どもは「休むと迷惑をかける」と感じて無理をしやすくなります。「具合が悪いときは休んでいい」と家庭からも本人に伝えておくとよいでしょう。

水分・ミネラル補給のポイント

子どもの運動中の水分補給は、「飲むものの内容」と「とるタイミング」が大切です。

スポーツドリンクは、汗で失われるナトリウムやカリウムなどの電解質(ミネラル)を含むため、運動中の水分・ミネラル補給に適しています。ただし、糖分が多い製品もあるため、飲みすぎには注意が必要です。ミネラル入り麦茶はカフェインを含まず、子どもの日常的な水分補給に取り入れやすい選択肢です。

塩分タブレットは携帯に便利ですが、必ず水分と一緒に摂ることが大切です。熱中症予防において、水分およびミネラルの補充はとても大切です。また水分補給のタイミングも大切で、WBGT及び運動の強度に応じてとる休憩のときに補給するのが理想です。

子どもの部活動中の熱中症を防ぐうえで日常生活の工夫として検討が推奨される点

特に重要なことは、「指導者と保護者が連携して、子どもが『休みたい』と言うことができる環境をつくること」と考えられています。

子どもの部活動における熱中症予防のコツについて、指導者・保護者向けに5つのコツと内容、理由をまとめた表です。1つ目は「WBGTを練習前に確認」で、内容は「携帯型WBGT計または環境省サイトで練習場所の暑さ指数を確認」することです。理由は「28℃以上で練習軽減、31℃以上で運動中止とすることが推奨されている」からです。2つ目は「20〜30分ごとに休憩」で、内容は「日陰での休憩と水分補給を練習スケジュールに組み込む」ことです。理由は「子どもは自分から休憩を申し出にくいため、指導者が主導することが推奨される」からです。3つ目は「水分補給の時間を設ける」で、内容は「運動前コップ1杯、運動中15〜20分ごとに少量ずつ」摂ることです。理由は「子どもは自分から水分を摂る習慣が少なく、仕組みで補給の機会をつくることが大切」だからです。4つ目は「体調確認の声かけ」で、内容は「『頭痛くない?』『気持ち悪くない?』など具体的に質問する」ことです。理由は「子どもは体調不良をうまく言葉にできないことがある」からです。5つ目は「『休んでいい』と伝える」で、内容は「保護者から『具合が悪いときは休んでいいんだよ』と日頃から伝えておく」ことです。理由は「子どもは『休むと迷惑をかける』と感じて無理をしやすい傾向がある」からです。

ここだけは伝えたいメッセージ(熱中症のサイン)

子どもは大人と異なり、自分で体調の変化に気づきにくいという特徴があります。部活動中の熱中症を防ぐには、指導者が「休憩と水分補給のルール」を練習に組み込み、子どもが「休憩したい」と言える環境をつくることが大切です。

まとめ:子どもの部活動中の熱中症予防ポイント

  • 子どもの体の特徴:体温調節が未熟・激しい運動をしたときの発汗能力が未熟・体調変化を言葉にしにくい
  • 指導者の役割:WBGT確認・20〜30分ごとの休憩・水分補給時間の設定・体調確認の声かけ
  • 保護者の役割:睡眠・朝食の確保・水分の準備・「休んでいい」と伝える
  • 水分補給:スポーツドリンクやミネラル入り麦茶で補給(あくまで補助手段)
  • 練習中の危険サイン:めまい・吐き気・ふらつき→すぐ中止。意識がぼんやり→救急車を呼ぶ

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(参考文献)

Bergeron MF, Devore C, Rice SG, et al. Pediatrics. 2011;128(3):e741-7.

Epstein Y, Yanovich R. N Engl J Med. 2019;380(25):2449-59.

環境省. 熱中症環境保健マニュアル2022.

日本救急医学会. 熱中症診療ガイドライン2024.

環境省. 子ども(幼児・園児)の暑熱反応特性と熱中症予防策

環境省. 文部科学省.学校における熱中症対策ガイドライン作成の手引き

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