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睡眠不足の翌日は熱中症のリスクを高めるか?睡眠と体温調節の関係を教えてください。
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睡眠不足の翌日は熱中症のリスクを高めるか?睡眠と体温調節の関係を教えてください。

日下 慶子監修者

精神科・心療内科

日下 慶子

睡眠不足になると、汗をかく機能や皮膚の血流調整など、体温を下げるための反応が鈍くなり、同じ暑さでも体に熱がこもりやすくなるという報告があります。

「寝不足の翌日は熱中症に注意」と言われますが、その理由を具体的に知っている方は少ないかもしれません。睡眠不足は「疲れやすい」だけでなく、体温を調節する仕組みそのものに影響を与えることが研究で示唆されています。

睡眠不足が体温調節に与える影響|発汗と血流の変化

体温が上がったとき、体は主に2つの方法で熱を逃がします。ひとつは「汗をかくこと」(汗が蒸発するときに体の熱を奪う)、もうひとつは「皮膚の血流を増やすこと」(体の表面から熱を放出する)です。

睡眠不足の状態では、この両方の反応が鈍くなることが報告されています[Exp Physiol. 2021 May;106(5):1139-1148.]。

  • 発汗の開始が遅れる: 汗をかき始めるタイミングが遅くなり、体温が上がり始めてもすぐには対応できない
  • 皮膚血流の増加が小さい: 暑さへの反応として皮膚の血管を広げる反応が弱まり、体の表面から熱を放出しにくくなる

つまり、睡眠不足の翌日は「体温を下げる力」が弱まった状態で、暑さにさらされることになります。

自律神経の乱れと体温調節の関係

体温調節は、自律神経(じりつしんけい=体温や心拍、消化などを自動的に調整する神経)によってコントロールされています。睡眠はこの自律神経のバランスを整える重要な役割を担っています。

睡眠が不足すると、自律神経のバランスが乱れ、以下のような影響が出る可能性があります。

  • 交感神経(体を緊張させる神経)が優位になり、体がリラックスしにくくなる
  • 体温の日内変動(昼に上がり、夜に下がるリズム)が乱れ、体温が下がりにくくなる
  • 汗をかくや血管を広げるといった体温調節の指令が適切に出にくくなる

判断力・注意力の低下|暑さへの対応が遅れる

睡眠不足は体温調節だけでなく、判断力や注意力にも影響します。その結果、以下のようなリスクが高まる可能性があります[N Engl J Med. 2019 Jun 20;380(25):2449-2459.]。

  • 暑さの危険サイン(めまい頭痛など)に気づきにくくなる
  • 判断が適切にできず、「まだ大丈夫」と休憩を先延ばしにしてしまう
  • 水分補給を忘れやすくなる
  • 「いつもよりだるい」を睡眠不足のせいと思い込み、熱中症の初期症状を見過ごしてしまう

睡眠の質を上げて熱中症を予防するポイント

十分な睡眠を確保することは、熱中症予防の基本のひとつです。以下の点が推奨されています。

  • 寝室の環境を整える: 室温26〜28℃、湿度60%以下を目安に、エアコンや扇風機を活用する。タイマーで切れて暑くなる場合は、弱冷房を一晩中つけておくことも選択肢
  • 就寝前のルーティンを整える: 就寝1時間前からスマートフォンやPCの使用を控え、リラックスできる環境をつくる
  • 規則的な睡眠スケジュールを保つ: 毎日同じ時刻に寝て同じ時刻に起きることで、体内時計が整い、自律神経のバランスが保たれやすくなる
  • 睡眠不足の翌日は「特に注意の日」と認識する: 暑さを避ける行動をいつもより意識的に取り、こまめな水分補給と休憩を心がける

水分・ミネラル補給と睡眠の関係|あくまで補助的な手段として

睡眠中はコップ1杯程度(約200mL)の水分が失われるとされています。睡眠不足の翌日はこの肌の水分不足に加え、体温調節機能の低下が重なるため、いつも以上にこまめな水分補給が大切です。

起床時にコップ1杯の水や麦茶などを飲む習慣をつけることで、睡眠中の水分不足を補うことが期待できます。朝食をとることで塩分摂取もできます。熱中症の兆候があればスポーツドリンクや経口補水液も活用しましょう。熱中症予防の一番大切なポイントは、暑さを避ける行動です。なお、個人差がありますので、基礎疾患のある方は主治医に相談しましょう。

睡眠不足の翌日の熱中症を防ぐうえで日常生活の工夫として検討が推奨される点

特に重要とされるのは、「睡眠不足の翌日を『特に注意の日』と認識すること」と考えられています。

睡眠不足の翌日の熱中症を防ぐ工夫について、5つのコツと内容、理由をまとめた表です。1つ目は「寝室の環境を整える」で、内容は「室温26〜28℃、湿度60%以下に。エアコンは弱冷房で一晩中つけてもよい」ことです。理由は「暑さで中途覚醒すると睡眠の質が下がり、翌日の体温調節に影響する可能性がある」からです。2つ目は「規則的な睡眠スケジュールを保つ」で、内容は「毎日同じ時刻に寝起きする。休日の『寝だめ』も控えめに」することです。理由は「体内時計が整うことで、自律神経のバランスが保たれやすくなる」からです。3つ目は「睡眠不足の翌日は『注意の日』」で、内容は「暑さを避ける行動を意識的に取り、水分補給をこまめに」することです。理由は「体温調節と判断力の両方が低下しているため、意識的な行動が必要」だからです。4つ目は「起床時にコップ1杯の水分を」で、内容は「水や麦茶を起きてすぐ飲む習慣をつける」ことです。理由は「睡眠中の水分不足を補い、翌日の脱水リスクを下げることが期待できる」からです。5つ目は「アルコールやカフェインの摂りすぎに注意」で、内容は「就寝前のアルコールや夕方以降のカフェインを控える」ことです。理由は「アルコールは睡眠の質を下げ、カフェインは入眠を妨げる可能性がある」からです。

ここだけは伝えたいメッセージ

睡眠不足が熱中症のリスクを高める可能性があるのは、「疲れているから」だけではなく、体温を下げる仕組みそのものが弱まるからです。「昨夜あまり眠れなかった」と感じた日は、その日を「熱中症に特に注意の日」と認識して、いつもより意識的に暑さを避け、こまめに水分を摂ってください。

寝室の環境を整えることは、「睡眠の質を上げる」と同時に「夜間の熱中症を防ぐ」ことにもつながります。エアコンを一晩中つけることに抵抗がある方もいるかもしれませんが、室温26〜28℃の弱冷房であれば体への負担は小さいと考えられています。症状がひどく熱中症が疑われる場合は、速やかに医療機関への受診をご検討ください。

まとめ:睡眠不足と熱中症リスクの関係

  • 発汗への影響 汗のかき始めが遅れ、発汗量が減少する
  • 皮膚血流への影響 血管を広げる反応が弱まり、体の表面から熱を逃がしにくくなる
  • 自律神経の乱れ 交感神経優位になり、体温調節の指令が適切に出にくくなる
  • 判断力の低下 暑さの危険サインに気づきにくく、休憩が遅れやすい
  • 睡眠環境の対策 室温26〜28℃・湿度60%以下。エアコンの弱冷房を活用
  • 翌日の行動 「特に注意の日」として暑さを避け、こまめな水分補給を意識する

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(参考文献)

Keramidas ME, Botonis PG. Short-term sleep deprivation and human thermoregulatory function during thermal challenges. Exp Physiol. 2021 May;106(5):1139-1148. doi: 10.1113/EP089467. Epub 2021 Apr 1. PMID: 33745159.

Epstein Y, Yanovich R. Heatstroke. N Engl J Med. 2019 Jun 20;380(25):2449-2459. doi: 10.1056/NEJMra1810762. PMID: 31216400.

環境省. 熱中症環境保健マニュアル2022.

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