

監修者おだかクリニック 循環器内科 副院長
暑さ対策グッズは、使う場面(屋内・屋外・持ち歩き)と冷却のしくみに合わせて選ぶことで、暑さによる体調不良の予防に役立つ可能性があります。
暑さ対策グッズの冷却のしくみと選び方のポイント
暑さ対策グッズは、体を冷やすしくみによって効果に差があります。多数の研究を体系的にまとめた報告によると、保冷剤や氷など冷たいものを体に直接当てるタイプ(伝導型)は冷却効果が高いことがわかっています。具体的には、深部体温(体の内部の温度)が約0.3℃下がり、心拍数が1分あたり約12拍低下しました。一方、水の蒸発で冷やすタイプ(蒸発型)は冷却効果がほとんど見られなかったと報告されています[Am J Ind Med. 2025;68(1):3-25.]。
この報告は主に屋外で体を動かす作業環境を対象としたものですが、冷却のしくみ自体は日常生活でも共通です。暑さ対策グッズを選ぶ際は「どのように体を冷やすか」に注目することが、効果的な対策につながると考えられます。
屋内で使える暑さ対策グッズの種類と効果
屋内での暑さ対策として、扇風機は手軽で取り入れやすいグッズのひとつです。固定型の電動扇風機を対象とした科学的な分析では、健康な若い方で気温39℃未満、高齢の方で38℃未満の環境であれば冷却効果が期待できるとされています。世界108都市の暑い日のうち96.6%で扇風機は有効と推定されました[Lancet Planet Health. 2021;5(6):e368-e377.]。この知見は、日本の一般的な夏の気温帯でも扇風機が暑さ対策として役立つ可能性を裏付けています。ただし、気温が非常に高い環境では効果が薄れるおそれがあるため、注意が必要です。
エアコンが使えない環境では、特殊な保冷素材を使った冷却グッズも選択肢になります。この素材は一定の温度で溶けるときに周囲の熱を吸収するしくみです。34℃のオフィス環境でこの保冷素材を使った冷却ベストを着用したところ、胴体の皮膚温度が約2〜3℃下がり、暑さの体感が改善したと報告されています[Indoor Air. 2012;22(6):523-30.]。エアコンのない室内でも身に着けるグッズで暑さを和らげられる可能性があることは、対策の幅を広げるうえで重要です。
屋内向けのグッズとしては、卓上扇風機、サーキュレーター、冷却ベスト(保冷素材タイプ)、ネッククーラー(保冷素材タイプ)、冷感素材の敷きパッドなどがあります。
屋外で使える暑さ対策グッズの種類と効果
屋外では帽子や通気性のよい衣服が暑さ対策の基本です。環境省の「熱中症環境保健マニュアル」でも、帽子の着用や衣服の工夫が日常的な予防策として推奨されています[環境省. 熱中症環境保健マニュアル~総論~(2025年7月版).]。
屋外で長時間過ごす場合は、首を冷やすグッズも有効な選択肢です。暑い環境下で首にクーリングカラーを着用した研究では、運動を続けられる時間が約13.5%延びました。この効果は主に暑さの体感が和らぐことによるものと考えられています[J Athl Train. 2011;46(1):61-68.]。このように首を冷やすことで暑さのつらさが軽減される可能性があり、ネッククーラーは屋外活動時の暑さ対策として期待されています。
冷却タオル(水で濡らして振ると冷たくなるタイプ)は広く市販されていますが、水の蒸発で冷やす「蒸発型」に分類されます。蒸発型の冷却効果は限定的とされているため[Am J Ind Med. 2025;68(1):3-25.]、冷却タオルだけに頼らず、帽子や日傘、こまめな水分補給と組み合わせて使うことが大切です。
屋外向けには、つばの広い帽子、日傘、ネッククーラー(保冷素材タイプ・保冷剤タイプ)、冷却タオルなどが選択肢として挙げられます。
持ち歩きに便利な暑さ対策グッズの選び方
外出先で手軽に使える携帯タイプのグッズも多くあります。携帯扇風機(ハンディファン)は風を送れる手軽さから広く使われています。なお、扇風機の冷却効果に関する研究は固定型を対象としたものであり、携帯型の効果を直接検証したものではありません[Lancet Planet Health. 2021;5(6):e368-e377.]。携帯扇風機は風を感じることで暑さの体感を和らげる効果が期待されますが、気温が非常に高い日は過信せず、ほかの対策と併用することが大切です。
複数の暑さ対策グッズを組み合わせて使うことの重要性も示されています。屋外で働く人を対象とした複数の研究をまとめた報告では、冷却ベスト・冷却バンダナなど複数のグッズと適切な休憩の組み合わせが、暑さによる体調不良の予防に効果的であることがわかっています[Am J Ind Med. 2020;63(11):988-1007.]。この知見は日常生活でも、ひとつのグッズだけに頼らず複数の対策を併用することの大切さを示唆しています。
持ち歩き用には、携帯扇風機、首掛けタイプのネッククーラー、冷却スプレー、冷感シート、水筒(こまめな水分補給用)などが便利です。
暑さ対策グッズを活用するうえで日常生活の工夫として検討が推奨される点
特に重要とされるのは、冷却のしくみに注目してグッズを選ぶことと考えられています。

ここだけは伝えたいメッセージ
暑さ対策グッズは、暑い季節を快適に過ごすための心強い味方です。ご自身の生活スタイルや使う場面に合わせて、無理なく取り入れてみてください。
ただし、暑さ対策グッズはあくまで暑さへの備えのひとつです。体調不良を感じた場合は涼しい場所で休息をとり、症状が改善しない場合は医療機関への相談をご検討ください。
まとめ:暑さ対策グッズの選び方と使い方のポイント
- 冷却のしくみに注目: 体に直接冷たさを伝えるタイプ(伝導型・保冷素材タイプ)は冷却効果が高く、蒸発型は効果が限定的とされている
- 屋内向け: 扇風機は一般的な夏の気温帯で有効と推定されている。保冷素材タイプの冷却ベストやネッククーラーも選択肢になる
- 屋外向け: 帽子・通気性のよい衣服が基本。ネッククーラーは暑さの体感を和らげる効果が報告されている
- 持ち歩き用: 携帯扇風機は手軽だが高温時は過信せず、ほかの対策と併用する。水筒でこまめな水分補給を心がける
- 組み合わせが大切: ひとつのグッズだけに頼らず、複数の対策を併用することが効果的と考えられている
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(参考文献)
Tetzlaff EJ, Ioannou LG, O'Connor FK, et al. Practical Considerations for Using Personal Cooling Garments for Heat Stress Management in Physically Demanding Occupations: A Systematic Review and Meta-Analysis Using Realist Evaluation. Am J Ind Med. 2025;68(1):3-25.
Gao C, Kuklane K, Wang F, Holmér I. Personal cooling with phase change materials to improve thermal comfort from a heat wave perspective. Indoor Air. 2012;22(6):523-30.
Tyler CJ, Sunderland C. Cooling the neck region during exercise in the heat. J Athl Train. 2011;46(1):61-68.
Chicas R, Xiuhtecutli N, Dickman NE, et al. Cooling intervention studies among outdoor occupational groups: A review of the literature. Am J Ind Med. 2020;63(11):988-1007.
Morris NB, Chaseling GK, English T, et al. Electric fan use for cooling during hot weather: a biophysical modelling study. Lancet Planet Health. 2021;5(6):e368-e377.
環境省. 熱中症環境保健マニュアル~総論~(2025年7月版). https://www.wbgt.env.go.jp/heatillness_manual_ov.php








