エルロチニブ塩酸塩（タルセバⓇ）の作用機序について教えてください。

エルロチニブ塩酸塩（タルセバⓇ）は、「上皮増殖因子受容体（EGFR）チロシンキナーゼ阻害剤」と呼ばれるタイプの薬です。

EGFRの役割

がん細胞の表面には「上皮増殖因子受容体（EGFR）」というタンパク質があります。このEGFRは、がん細胞を増殖させるための信号を受け取る「アンテナ」のような役割をしています。アンテナが信号を受け取ると、がん細胞の中で増殖のスイッチが入り、細胞が増えたり大きくなったりします。

薬の働き

この薬は、がん細胞が増えるために必要なEGFRの活動を阻害します。具体的には、EGFRの細胞内にある「チロシンキナーゼ」という部分に結合し、増殖の信号が細胞の中に伝わるのを妨げます。この結合は、細胞が増えるために必要なエネルギー源（ATP）と競い合うようにして行われます。

結果

これにより、がん細胞の増殖が抑えられ、さらに、がん細胞が自ら死滅する「アポトーシス」という現象も促すことで、腫瘍の成長を抑える効果を発揮すると考えられています。なお、このお薬は、他の似たようなタンパク質（インスリン受容体チロシンキナーゼなど）にはほとんど影響を与えず、EGFRに対して選択的に作用すると考えられています。