

監修者平塚市民病院 皮膚科
虫よけの主な成分にはディートとイカリジンがあり、効果の持続時間や子どもへの使用制限が異なるため、年齢や使用場面に応じて選ぶことが大切です。
食事や市販のケアで届かないと感じたときは、医師に相談して処方を受けるという選択肢もあります。
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虫よけスプレーの主な有効成分|ディートとイカリジンの特徴
虫よけスプレーには主に「ディート(DEET)」と「イカリジン(ピカリジン)」という2つの有効成分が使われています。どちらも蚊やブユなどの吸血虫を寄せつけない効果がありますが、それぞれに異なる特徴があります。
ディートは1950年代に開発された歴史の長い成分で、世界中で最も広く使われています。濃度が高いほど効果の持続時間が長くなり、23.8%のディート製品では約5時間の防護効果が確認されています。一方、植物由来の忌避成分の持続時間は20分未満と短く、成分によって持続時間に大きな差があることが示されています[N Engl J Med. 2002;347(1):13-18.]。
イカリジンはディートに代わる新しい選択肢として注目されている成分です。同じ濃度で比較した場合、ディートとイカリジンの防護効果にはほとんど差がなく、一部の報告ではイカリジンの持続性がやや優れる可能性も示されています[J Travel Med. 2018;25(suppl_1):S10-S15.]。この知見は、どちらの成分でも適切な濃度を選べば十分な虫よけ効果が期待できることを裏付けています。
ディートの安全性|子ども・妊婦への影響
ディートについては「体に害があるのでは」と心配する声を耳にすることがあります。しかし、安全性を検証した複数の研究報告を総合すると、推奨される用法で使用した場合に重篤な有害事象が起こるというエビデンスは見つかっていません。1980年代に小児の脳症との関連が報告されたことがありましたが、ディートとの因果関係は推測の域を出ないとされています[Parasit Vectors. 2014;7:173.]。
子どもや妊婦・授乳中の方への使用についても検証されており、推奨用法を守っていれば、子どもにおけるリスク増加を支持するエビデンスはないと報告されています。また、妊婦・授乳婦への使用が胎児や乳児の健康上のリスクにつながるエビデンスも確認されていません[CMAJ. 2003;169(3):209-12.]。こうした知見から、用法・用量を守ればディートは幅広い年齢層で使用できる成分であると考えられています。
ディートとイカリジンの効果比較|持続時間と濃度の関係
ディートとイカリジンを選ぶうえで知っておきたいのが、濃度と持続時間の関係です。
ある比較研究では、23.8%のディート製品で約5時間の防護効果が得られた一方、大豆油ベースの忌避成分では約1時間35分にとどまりました[N Engl J Med. 2002;347(1):13-18.]。このように、ディートは他の忌避成分と比べて長時間の防護効果が期待できます。
同じ濃度であれば効果はほぼ同等か、イカリジンのほうがやや持続性に優れる可能性があるとされています[J Travel Med. 2018;25(suppl_1):S10-S15.]。つまり、日常的な外出であればどちらの成分でも十分な効果が見込めますが、ディートのほうが、イカリジンよりも高濃度の製品が流通しているため、長時間のアウトドア活動では高濃度のディート製品がより長時間の防護につながる場合があるといえます。
子どもの虫よけの選び方|年齢ごとの使用制限の違い
子ども用の虫よけを選ぶ際に押さえておきたいのが、ディートとイカリジンでは使用制限が大きく異なる点です。
厚生労働省の通知によると、ディート12%以下の製品は6ヶ月未満の乳児には使用できません。6ヶ月以上2歳未満は1日1回、2歳以上12歳未満は1日1〜3回という使用回数の制限があります。さらに、ディート30%製品は12歳未満には使用できません。一方、イカリジンにはこうした年齢制限や使用回数の制限がありません[厚生労働省. ディートを含有する医薬品及び医薬部外品に関する安全対策について. 2005年8月.]。
この規制上の違いを踏まえると、小さな子どもに塗り直しが必要な場面(長時間の屋外活動やプール後など)では、使用回数に制限のないイカリジン製品のほうが使い勝手がよいと考えられます。
虫よけスプレーを選ぶうえで日常生活の工夫として検討が推奨される点

特に重要とされるのは、年齢制限と塗り直しの頻度を考慮して成分を選ぶことだと考えられています。
ここだけは伝えたいメッセージ
ディートもイカリジンも、推奨される用法で使えばどちらも効果的な虫よけ成分です。「化学成分が怖いから使わない」と敬遠するよりも、適切に使うことで蚊を介した虫刺されのリスクを減らすことにつながります。
お子さんに使用する場合は、年齢に応じた使用制限を確認したうえで製品を選んでください。虫刺されの腫れやかゆみがひどい場合や、発熱など体調の変化がみられた場合は、医療機関への相談をご検討ください。
まとめ:虫よけスプレーの成分選びのポイント
- ディートとイカリジンの効果: 同じ濃度であれば防護効果はほぼ同等であり、どちらも蚊などの吸血虫に対して有効な成分とされている
- 持続時間と濃度の関係: 濃度が高いほど持続時間が長くなり、23.8%のディート製品では約5時間の防護効果が確認されている
- ディートの安全性: 推奨される用法で使用すれば、重篤な有害事象のエビデンスは見つかっておらず、子どもや妊婦にも使用できるとされている
- 子どもへの使用制限: ディートは年齢別の使用回数制限があるが、イカリジンには年齢制限・使用回数制限がない
- 成分の選び方: 子どもの塗り直しが必要な場面ではイカリジン、長時間の屋外活動では高濃度ディートが選択肢になる
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(参考文献)
Chen-Hussey V, Behrens R, Logan JG. Assessment of methods used to determine the safety of the topical insect repellent N,N-diethyl-m-toluamide (DEET). Parasit Vectors. 2014;7:173.
Koren G, Matsui D, Bailey B. DEET-based insect repellents: safety implications for children and pregnant and lactating women. CMAJ. 2003;169(3):209-12.
Goodyer L, Schofield S. Mosquito repellents for the traveller: does picaridin provide longer protection than DEET? J Travel Med. 2018;25(suppl_1):S10-S15.
Fradin MS, Day JF. Comparative efficacy of insect repellents against mosquito bites. N Engl J Med. 2002;347(1):13-18.
厚生労働省. ディートを含有する医薬品及び医薬部外品に関する安全対策について. 2005年8月.
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